リュードの思惑を見抜いたのか、あるいは単に長く続くのを嫌がったのかウォーケックは今までの切り合いから無理矢理変化をさせてリュードと距離を取った。
リュードも追撃するようなことはしない。
激しい切り合いに乱れた息を整えながら互いに睨み合う。
リュードはウォーケックの弟子であり、ウォーケックはリュードの師匠である。
今では実践に近い形で剣の鍛錬を繰り返しているのでお互いをよく知っている。
当然といえば当然の話であるがそのために同じ技を行使したり、なまじお互いの手の内が分かっているために下手な手も打てず均衡が続いているのである。
正直なところ、ウォーケックもリュードがここまでやれるとは想像してはいなかった。
弟子の成長を感じて喜びもあるが同時に油断できない相手であると改めてリュードのことを見直した。
複数のおっさん達にしごかれ続けたあの訓練も無駄ではなかった。
ウォーケックの手数も素早さも高いレベルにはあるけれどやはり複数人同時とはわけが違う。
どこでこんな経験役に立つのかと思っていたけれどそれこそウォーケックと対等に渡り合えるほどの力をリュードに付けてくれた。
連携などない好き勝手に切りかかってくるオヤジたちはほんとに辛かった。
それに比べれば1人の人がある程度規則を持って攻撃してくるのは楽と言えてしまう側面すらある。
「まだ甘いぞ!」
こちらからと思った瞬間、逆にウォーケックの方が早く、速く動き出した。
置いた距離なんて無かったかのように一瞬で詰めてきたウォーケックの初撃を防ぐと目の前にすでにウォーケックの姿はない。
「くっ!」
リュードはほぼ勘で体を傾ける。
耳元で風を切る音が聴こえてリュードが直前までいたところを剣が通り過ぎていった。
さっきまでは真正面で切り合っていたけれど今度はウォーケックは横へ後ろへと高速で移動しながら様々に切りつけてくる。
明らかに速度は上がっていて目で追えても反応はギリギリ。
身体が付いていかなくて完全に回避が出来ずに頬や腕に剣が擦れる。
刃潰ししていない本番の武器を使っていたなら何ヶ所かスパっと浅く切れていただろう。
刃潰ししていても皮膚が切れそうになっている。
「焦らない……冷静に」
どんな状況であれ焦れば視界は狭くなり冷静さを失ったものから死んでいく。
ウォーケックの速さに危険を感じながらもリュードは頭の芯は冷静に状況を見ている。
最初の切り合いからウォーケックの方がやや体力的な消耗は大きい。
リュードが追いきれないほどの速さはおそらく最高速度に近いはずだと考えた。
魔力や魔法、魔人化の補助もなく速く大きく動いているなら長くは持たないはず。
そう頭の中で考えたリュードはひたすら耐える。
かすった部分が痛み、攻撃の激しさに持たない、終わらないのではないかという思いも出始める。
「冷静に、冷静に」
目では分かっていても体が追いつかないことがもどかしい。
けれどここで焦って攻撃に出ればウォーケックの思う壺になるので小さくつぶやき自分に言い聞かせる。
もっと技量があれば、もっと力があれば対応して行動出来たと胸の奥で下手な欲がむくむくと湧き上がる。
今はそんなこと考える時ではない。
雑念を消し去り一部の隙も与えないように集中を高めるもまた脇腹を剣が掠める。
魔法の補助も無しにこれほどの速度を保ち続けるのはさすがというべきだろうが体への負担も大きいはずなのにさすがというべきか。
「ふっ……はぁっ」
今だ! そう思った。
何度目かわからない攻撃を防いだ瞬間ウォーケックが大きく息を吸い込んだ。
息が続かず呼吸が乱れた数瞬間の硬直。
リュードは思いっきり地面を蹴ってウォーケックに接近する。
ウォーケックよりは遅いかもしれないけど密着するように攻撃してきていたので距離は近い。
少しの接近でリュードはウォーケックとグッと距離を詰めた。
ウォーケックとしても予想外の距離。
とてもじゃないが剣を振る距離ではなく、ウォーケックよりも大振りの剣を持つリュードが取る距離とは誰も思わない距離。
判断に迷いが生じた。
無理矢理剣をリュードとの間に差し込んで攻撃するか距離を取るか回避をするか防御をするか、ウォーケックはどうするべきか迷ってしまった。
そもそもリュードが次にどうするのか瞬間的に判断できなかった。
もう遅い。
リュードは接近した時には左手を剣から離してウォーケックの顔面めがけて殴りかかっていた。
綺麗な戦い方じゃないなんて文句を付けてくる奴もいる可能性もあるけど徒手空拳でやっているやつもいる。
そもそも武器を使って勝たなくていけない勝負でもないからいいだろう。
肩口から真っ直ぐ突き出した拳は見事にウォーケックの顔の真ん中に当たる。
ウォーケックの上体が後ろに逸れる。
自ら後ろに体を逸らしてかわそうとしたがかわしきれなかった。
「うりゃああああっ!」
拳を突き出した体勢でやや捻れた体をさらに捻って勢いをつけて片手で剣を横薙ぎに振るう。
2本の剣をクロスして防ごうとするも不安定な体勢の防御と完璧に力を乗せた一撃では結果は歴然。
ウォーケックと左手に持った剣がぶっ飛ぶ。
防がれた以上は致命的な一撃とはならず札は上がらない。
そのままトドメを刺そうと追撃しにかかる。
リュードも追撃するようなことはしない。
激しい切り合いに乱れた息を整えながら互いに睨み合う。
リュードはウォーケックの弟子であり、ウォーケックはリュードの師匠である。
今では実践に近い形で剣の鍛錬を繰り返しているのでお互いをよく知っている。
当然といえば当然の話であるがそのために同じ技を行使したり、なまじお互いの手の内が分かっているために下手な手も打てず均衡が続いているのである。
正直なところ、ウォーケックもリュードがここまでやれるとは想像してはいなかった。
弟子の成長を感じて喜びもあるが同時に油断できない相手であると改めてリュードのことを見直した。
複数のおっさん達にしごかれ続けたあの訓練も無駄ではなかった。
ウォーケックの手数も素早さも高いレベルにはあるけれどやはり複数人同時とはわけが違う。
どこでこんな経験役に立つのかと思っていたけれどそれこそウォーケックと対等に渡り合えるほどの力をリュードに付けてくれた。
連携などない好き勝手に切りかかってくるオヤジたちはほんとに辛かった。
それに比べれば1人の人がある程度規則を持って攻撃してくるのは楽と言えてしまう側面すらある。
「まだ甘いぞ!」
こちらからと思った瞬間、逆にウォーケックの方が早く、速く動き出した。
置いた距離なんて無かったかのように一瞬で詰めてきたウォーケックの初撃を防ぐと目の前にすでにウォーケックの姿はない。
「くっ!」
リュードはほぼ勘で体を傾ける。
耳元で風を切る音が聴こえてリュードが直前までいたところを剣が通り過ぎていった。
さっきまでは真正面で切り合っていたけれど今度はウォーケックは横へ後ろへと高速で移動しながら様々に切りつけてくる。
明らかに速度は上がっていて目で追えても反応はギリギリ。
身体が付いていかなくて完全に回避が出来ずに頬や腕に剣が擦れる。
刃潰ししていない本番の武器を使っていたなら何ヶ所かスパっと浅く切れていただろう。
刃潰ししていても皮膚が切れそうになっている。
「焦らない……冷静に」
どんな状況であれ焦れば視界は狭くなり冷静さを失ったものから死んでいく。
ウォーケックの速さに危険を感じながらもリュードは頭の芯は冷静に状況を見ている。
最初の切り合いからウォーケックの方がやや体力的な消耗は大きい。
リュードが追いきれないほどの速さはおそらく最高速度に近いはずだと考えた。
魔力や魔法、魔人化の補助もなく速く大きく動いているなら長くは持たないはず。
そう頭の中で考えたリュードはひたすら耐える。
かすった部分が痛み、攻撃の激しさに持たない、終わらないのではないかという思いも出始める。
「冷静に、冷静に」
目では分かっていても体が追いつかないことがもどかしい。
けれどここで焦って攻撃に出ればウォーケックの思う壺になるので小さくつぶやき自分に言い聞かせる。
もっと技量があれば、もっと力があれば対応して行動出来たと胸の奥で下手な欲がむくむくと湧き上がる。
今はそんなこと考える時ではない。
雑念を消し去り一部の隙も与えないように集中を高めるもまた脇腹を剣が掠める。
魔法の補助も無しにこれほどの速度を保ち続けるのはさすがというべきだろうが体への負担も大きいはずなのにさすがというべきか。
「ふっ……はぁっ」
今だ! そう思った。
何度目かわからない攻撃を防いだ瞬間ウォーケックが大きく息を吸い込んだ。
息が続かず呼吸が乱れた数瞬間の硬直。
リュードは思いっきり地面を蹴ってウォーケックに接近する。
ウォーケックよりは遅いかもしれないけど密着するように攻撃してきていたので距離は近い。
少しの接近でリュードはウォーケックとグッと距離を詰めた。
ウォーケックとしても予想外の距離。
とてもじゃないが剣を振る距離ではなく、ウォーケックよりも大振りの剣を持つリュードが取る距離とは誰も思わない距離。
判断に迷いが生じた。
無理矢理剣をリュードとの間に差し込んで攻撃するか距離を取るか回避をするか防御をするか、ウォーケックはどうするべきか迷ってしまった。
そもそもリュードが次にどうするのか瞬間的に判断できなかった。
もう遅い。
リュードは接近した時には左手を剣から離してウォーケックの顔面めがけて殴りかかっていた。
綺麗な戦い方じゃないなんて文句を付けてくる奴もいる可能性もあるけど徒手空拳でやっているやつもいる。
そもそも武器を使って勝たなくていけない勝負でもないからいいだろう。
肩口から真っ直ぐ突き出した拳は見事にウォーケックの顔の真ん中に当たる。
ウォーケックの上体が後ろに逸れる。
自ら後ろに体を逸らしてかわそうとしたがかわしきれなかった。
「うりゃああああっ!」
拳を突き出した体勢でやや捻れた体をさらに捻って勢いをつけて片手で剣を横薙ぎに振るう。
2本の剣をクロスして防ごうとするも不安定な体勢の防御と完璧に力を乗せた一撃では結果は歴然。
ウォーケックと左手に持った剣がぶっ飛ぶ。
防がれた以上は致命的な一撃とはならず札は上がらない。
そのままトドメを刺そうと追撃しにかかる。