「血と肉を捧げる。我が求めに応じ、姿を現せ」
デルゼウズが何かを唱えると呼び出された時のように地面に散らばった肢体や血が浮き上がる。
1つに集まり、凝縮し、細長い形に伸びていく。
そしてそれは一本の剣となった。
赤黒い剣身をしたやや大振りの剣。
「さて、これならどうかな?」
今度は剣を手にしたデルゼウズからリュードに襲いかかった。
「くそっ!」
悪魔が呼び出した剣なのだ、どう考えても、そしてどう見てもなまくらではありえない。
鱗は鱗である。
固くとも防具ではなく、魔力を込められた武器を相手取るにはやや防御力は足りない。
間一髪のところで剣をかわすがデルゼウズもそれで攻撃の手を止めるはずがない。
剣を返して素早く次々と切りかかる。
「くそっ!」
剣が胸をかすめて軽く切れる。
やはり鱗では剣を防げない。
素手に対して剣が相手では分が悪い。
「ハハッ、忘れるなよ!」
デルゼウズはあえてかわしやすく剣を振り下ろした。
リュードはそれに気づかずデルゼウズの予想通りの方向に避けてしまった。
リュードの避ける方向に手のひらを向けたデルゼウズは黒い魔力の球を打ち出した。
目の前に飛んできた黒い魔力の球は爆発して、リュードが大きく後ろに吹き飛ぶ。
幸い見た目の派手さに比べて大きなダメージはないけれどダメージは確実に蓄積される
不利な状況に加えてリュードはトーイの体を殺してはいけないという枷まで負っている。
素手で制圧するのにも限度があった。
これなら死んだ兵士の武器を奪えばよかったと思ったがもう吹き飛ばされて転がる剣からは離れてしまった。
武器を取りに行こうと思ったらデルゼウズを突破しなければならない。
武器を拾う一瞬でさえも隙として襲いかかってきそうなデルゼウズ。
武器を拾おうという意図がバレればまずそちらに行かせてもらえないだろうし、気付くのが遅すぎたと内心で舌打ちする。
「知恵を絞る音が聞こえてきそうだな!」
「……ライトニングアロー!」
黒い魔力の球がデルゼウズの周りに浮かび、細長く形を変える。
それを見てリュードも雷の矢を作り、対抗しようとする。
わずかにリュードが遅れて魔法を放つ。
魔法の矢がぶつかり、激しく雷の音を立てる。
「クッ!」
デルゼウズの矢の方が数も多く威力が高かった。
全てを相殺しきれなくて、黒い雷の矢がリュードを襲う。
リュードは地面を転がって矢をかわす。
地面に当たって矢が爆ぜる音が聞こえてくる。
「はっ!」
立て直す暇もない。
矢を避けて転がったリュードの視界に剣が迫っていた。
なんとかギリギリのところで剣をかわしたが、さらに続くデルゼウズの膝蹴りまでリュードはかわすことができなかった。
「カハッ……」
痛みに悶えている暇などなく、今度はまた剣が襲いかかってくる。
頬をかすめるが直撃は避ける。
「ほら!」
ただ避けただけで、続かない。
顔を殴られてリュードは後ろに2転3転と転がる。
剣を囮に使われている。
対抗できる武器がないから打撃よりも剣を警戒していることを見抜かれている。
かわさなきゃ普通に切られるのだろうがデルゼウズはかわすことを織り込んで攻撃を繰り出している。
本気で切るというよりもややずらした感じでかわす方向を思い通りにコントロールされていた。
どちらに回避するのか分かられているので先回りした魔法なり蹴りやパンチなりがリュードを襲う。
「先ほどまでの威勢の良さはどこに行った!」
上手いし速い。
やられながらもリュードは感心した。
狡猾ながら相手を巧みに操り、自分の思い通りに動かす戦い方。
危機的状況なのに戦いを面白いと思ってしまう魔人的な側面がチラリと顔を覗かせる。
「あまり調子に乗るなよ!」
それでも殴られながらも冷静にデルゼウズのやり方を観察していた。
攻撃のリズムやずらし方が分かってきて段々と攻撃を食らわなくなってきた。
そのことに気づいたデルゼウズは単調になっていた攻撃パターンを変えてさらにたたみかけた。
「うむ、かなり頑丈だな」
トーイの拳が砕けるほどの力で殴ったり蹴ったりしているのにリュードはまだピンピンしている。
頑丈で打たれ強い。
目の闘志はまだ消えていないし、冷静に戦い方をみている。
殺すのがもったいないとデルゼウズは思った。
見た目も悪くなく、性格も美しい。
あのガマガエルのような真人族とは大違いで惜しく感じてしまう。
「グゥッ!」
首をかすめる剣をよけ、脇腹をかすめる魔法をかわし、胸を蹴られて後ろに押し倒される。
変に抵抗せず逆に後ろに転がって、跳躍して距離を取る。
「……どうだ、貴様、私の部下になるつもりはないか?」
なかなかに楽しい戦いだがデルゼウズもあまり遊んでいられるほどの時間もない。
頑丈で致命的になりそうな攻撃を回避しているリュードを倒すのには時間がかかる。
このまま時間をかけてリュードの体力を削っていっても倒せるがリュードも時間も惜しい。
リュードの体を手に入れることは失敗したがリュードを手に入れるチャンスはまだあった。
ほんの気まぐれにだが戦いの手を止めてデルゼウズは提案をぶつけた。
「なんだと?」
「私のものになるつもりはないかと聞いているんだ。私の部下になればお前の望むものを与えよう。力でも、金でも、領地でも、女でもだ」
悪魔にも有能なものはいるが有能なものは部下にするには我が強すぎる。
自分が頂点になる野心を持ち、いつまでも下にいることを良しとしない。
その点他の種族なら望むものを与えておけば喜んで下に付く。
「普段は別に好きにしていてくれても構わない。必要な時には私の命に従ってもらうがそれだけだ。国の1つや2つも望むならくれてやってもいい」
まるで世界を半分くれてやるみたいな提案だった。
デルゼウズが何かを唱えると呼び出された時のように地面に散らばった肢体や血が浮き上がる。
1つに集まり、凝縮し、細長い形に伸びていく。
そしてそれは一本の剣となった。
赤黒い剣身をしたやや大振りの剣。
「さて、これならどうかな?」
今度は剣を手にしたデルゼウズからリュードに襲いかかった。
「くそっ!」
悪魔が呼び出した剣なのだ、どう考えても、そしてどう見てもなまくらではありえない。
鱗は鱗である。
固くとも防具ではなく、魔力を込められた武器を相手取るにはやや防御力は足りない。
間一髪のところで剣をかわすがデルゼウズもそれで攻撃の手を止めるはずがない。
剣を返して素早く次々と切りかかる。
「くそっ!」
剣が胸をかすめて軽く切れる。
やはり鱗では剣を防げない。
素手に対して剣が相手では分が悪い。
「ハハッ、忘れるなよ!」
デルゼウズはあえてかわしやすく剣を振り下ろした。
リュードはそれに気づかずデルゼウズの予想通りの方向に避けてしまった。
リュードの避ける方向に手のひらを向けたデルゼウズは黒い魔力の球を打ち出した。
目の前に飛んできた黒い魔力の球は爆発して、リュードが大きく後ろに吹き飛ぶ。
幸い見た目の派手さに比べて大きなダメージはないけれどダメージは確実に蓄積される
不利な状況に加えてリュードはトーイの体を殺してはいけないという枷まで負っている。
素手で制圧するのにも限度があった。
これなら死んだ兵士の武器を奪えばよかったと思ったがもう吹き飛ばされて転がる剣からは離れてしまった。
武器を取りに行こうと思ったらデルゼウズを突破しなければならない。
武器を拾う一瞬でさえも隙として襲いかかってきそうなデルゼウズ。
武器を拾おうという意図がバレればまずそちらに行かせてもらえないだろうし、気付くのが遅すぎたと内心で舌打ちする。
「知恵を絞る音が聞こえてきそうだな!」
「……ライトニングアロー!」
黒い魔力の球がデルゼウズの周りに浮かび、細長く形を変える。
それを見てリュードも雷の矢を作り、対抗しようとする。
わずかにリュードが遅れて魔法を放つ。
魔法の矢がぶつかり、激しく雷の音を立てる。
「クッ!」
デルゼウズの矢の方が数も多く威力が高かった。
全てを相殺しきれなくて、黒い雷の矢がリュードを襲う。
リュードは地面を転がって矢をかわす。
地面に当たって矢が爆ぜる音が聞こえてくる。
「はっ!」
立て直す暇もない。
矢を避けて転がったリュードの視界に剣が迫っていた。
なんとかギリギリのところで剣をかわしたが、さらに続くデルゼウズの膝蹴りまでリュードはかわすことができなかった。
「カハッ……」
痛みに悶えている暇などなく、今度はまた剣が襲いかかってくる。
頬をかすめるが直撃は避ける。
「ほら!」
ただ避けただけで、続かない。
顔を殴られてリュードは後ろに2転3転と転がる。
剣を囮に使われている。
対抗できる武器がないから打撃よりも剣を警戒していることを見抜かれている。
かわさなきゃ普通に切られるのだろうがデルゼウズはかわすことを織り込んで攻撃を繰り出している。
本気で切るというよりもややずらした感じでかわす方向を思い通りにコントロールされていた。
どちらに回避するのか分かられているので先回りした魔法なり蹴りやパンチなりがリュードを襲う。
「先ほどまでの威勢の良さはどこに行った!」
上手いし速い。
やられながらもリュードは感心した。
狡猾ながら相手を巧みに操り、自分の思い通りに動かす戦い方。
危機的状況なのに戦いを面白いと思ってしまう魔人的な側面がチラリと顔を覗かせる。
「あまり調子に乗るなよ!」
それでも殴られながらも冷静にデルゼウズのやり方を観察していた。
攻撃のリズムやずらし方が分かってきて段々と攻撃を食らわなくなってきた。
そのことに気づいたデルゼウズは単調になっていた攻撃パターンを変えてさらにたたみかけた。
「うむ、かなり頑丈だな」
トーイの拳が砕けるほどの力で殴ったり蹴ったりしているのにリュードはまだピンピンしている。
頑丈で打たれ強い。
目の闘志はまだ消えていないし、冷静に戦い方をみている。
殺すのがもったいないとデルゼウズは思った。
見た目も悪くなく、性格も美しい。
あのガマガエルのような真人族とは大違いで惜しく感じてしまう。
「グゥッ!」
首をかすめる剣をよけ、脇腹をかすめる魔法をかわし、胸を蹴られて後ろに押し倒される。
変に抵抗せず逆に後ろに転がって、跳躍して距離を取る。
「……どうだ、貴様、私の部下になるつもりはないか?」
なかなかに楽しい戦いだがデルゼウズもあまり遊んでいられるほどの時間もない。
頑丈で致命的になりそうな攻撃を回避しているリュードを倒すのには時間がかかる。
このまま時間をかけてリュードの体力を削っていっても倒せるがリュードも時間も惜しい。
リュードの体を手に入れることは失敗したがリュードを手に入れるチャンスはまだあった。
ほんの気まぐれにだが戦いの手を止めてデルゼウズは提案をぶつけた。
「なんだと?」
「私のものになるつもりはないかと聞いているんだ。私の部下になればお前の望むものを与えよう。力でも、金でも、領地でも、女でもだ」
悪魔にも有能なものはいるが有能なものは部下にするには我が強すぎる。
自分が頂点になる野心を持ち、いつまでも下にいることを良しとしない。
その点他の種族なら望むものを与えておけば喜んで下に付く。
「普段は別に好きにしていてくれても構わない。必要な時には私の命に従ってもらうがそれだけだ。国の1つや2つも望むならくれてやってもいい」
まるで世界を半分くれてやるみたいな提案だった。


