「ハァッ……ハァッ……だけどそんな時に私の美しさを取り戻してくれる、永遠の美しさを私に与えてくださる存在が現れたのよ!」
美しさに囚われた化け物。
話を聞いてリュードがガマガエルに抱いた印象であった。
なぜガマガエルに褒められても嬉しくないのか分かった気がした。
ガマガエルの目には自分の美しさ、それも過去に美しかったという栄光しか映っていない。
過去の自分に囚われていて、リュードのことも真に美しいとか思っていなく美しい装飾品のようにしか見ていない。
自分の身の回りに置いてもいいレベルにはある物でしかなく、そのつもりでしか褒めていない。
そんな物としてしか見られていない感じがして、物としてしか褒められていないので嬉しさがなく嫌悪感を感じるのであった。
「あのお方は私に美しさを取り戻してくれることを約束してくれた! だからそのために多くの血と肉となる生贄が必要なのよ」
「……そのあのお方とはどなたですか?」
「あのお方とは、大悪魔デルゼウズ様よ!」
「デル、ゼウズ……」
「デルゼウズ様は私の美しさを理解して私の考えに共感してくださったわ!そして自分を呼び出してくれれば私に永遠の美しさを与えてくださるとおっしゃってくださったのよ。そのための大会。そのための奴隷よ!」
「なんだと……」
イカれているという感想しか出てこない。
トーイだけでなくリュードですら言葉失った。
永遠の美しさという妄執のために悪魔に魂を売り渡して多くの人を巻き込んで、多くの命を奪った。
大悪魔が何なのかリュードはよく分かっていないが呼び出してしまえばどんなことになるのかは想像に難くない。
「どうかしら? 永遠の美しさを手に入れる私の側に……」
「トーイはどうなる?」
「トーイ? 後ろのゴミのことかしら?」
「ゴミではない」
「……ふん、あなた以外に今のところ興味はないわ。後ろのゴミには生贄になってもらうわ」
「それで私のものに……」
「断る」
「なっ……」
「断る。俺はあんたの物にならない」
「リュードさん……」
「……そう。残念だけれどそれもまた美しいわ」
もはや装飾品1つにこだわることはないとガマガエルは笑う。
美しいものがなくなってしまうことは惜しいけれど今は自分の方が大事であり、断る姿もまた美しいと思ったので大人しく受け入れた。
「連れて行きなさい」
全く想像していなかった展開だとリュードは思った。
この大会、この問題の根幹にあるのは単なる娯楽や刺激を求めるなんて浅いものではなかった。
よりもっと根深いものが底にあった。
刺さりそうなほど近くに槍を突きつけられてリュードとトーイは移動させられる。
階段のある方とは逆側の道を歩かされていき、とても広いところに出た。
「うっ……」
ひどい匂いにトーイが顔を歪めて鼻を押さえた。
リュードも思い切り嫌な顔をする。
澱んだような空気は血の臭いを孕んでいて気持ちが悪くなった。
円柱状に切り取られた広い空間はコロシアムが丸ごと入ってしまいそうな広さがあった。
これだけ天井が高かったら天井付近は地上が近いかもしれない。
「なんだこれは……」
けれどそんな広さよりもまず目についたのはこの広い部屋のど真ん中にある醜悪な光景であった。
部屋の真ん中は大きくすり鉢状に窪んでいて、そこにはなんと死体の山が積み重なっていた。
多くが上半身裸の死体で、リュードはこの大会で死んだ奴隷の死体が積み重ねられているのだと気づいた。
中には奴隷ではなさそうな死体もあって、どこからこんなに集めてきたのか想像もつかない。
後ろから兵士にせっつかれて窪みの縁まで歩かされる。
死体の山の下、窪みの中は死体から流れ出た血で池になっていた。
断言できる。
人生で1番最悪な光景だった。
「うっ……おえぇ!」
たまらずトーイが吐き出してしまった。
ここに来る前に飲み食いしたことが仇となってしまった。
リュードも吐きたくなる気持ちは分かるがなんとか耐える。
生贄というからリュードたちもあの時代の山の仲間入りをさせられるのかと思ったがリュードたちは死体の山に向かって跪かされた。
多くいた兵士たちがどこかへいって数人がリュードたちに槍を突きつけて、ただ何も言われず、されずに待つ。
しかしその間にもどこからか死体が運ばれてきて窪みに投げ入れられていた。
この世の地獄。
トーイは酷すぎる光景に顔を青くして震えている。
少し前まではルフォンたちが助けに来てくれたらと思っていたけれどこんなヘドが出るような光景を見せるくらいなら来ない方がいい。
「りゅ……リュードさん」
兵士にバレないように声をひそめてトーイがリュードに話しかける。
「……どうした?」
「も、もしですよ。もし逃げられるなら私を置いて逃げてください……」
「トーイ……それは」
「ここまで来てしまっては私のことなんて気遣わないでください……」
トーイは泣きそうな顔をして笑う。
諦めてはいませんよと言おうとしてトーイは喉から言葉が出てこなくなる。
代わりに涙が出てくる。
泣くのを抑えようと、我慢しようとすればするほど嗚咽してしまう。
美しさに囚われた化け物。
話を聞いてリュードがガマガエルに抱いた印象であった。
なぜガマガエルに褒められても嬉しくないのか分かった気がした。
ガマガエルの目には自分の美しさ、それも過去に美しかったという栄光しか映っていない。
過去の自分に囚われていて、リュードのことも真に美しいとか思っていなく美しい装飾品のようにしか見ていない。
自分の身の回りに置いてもいいレベルにはある物でしかなく、そのつもりでしか褒めていない。
そんな物としてしか見られていない感じがして、物としてしか褒められていないので嬉しさがなく嫌悪感を感じるのであった。
「あのお方は私に美しさを取り戻してくれることを約束してくれた! だからそのために多くの血と肉となる生贄が必要なのよ」
「……そのあのお方とはどなたですか?」
「あのお方とは、大悪魔デルゼウズ様よ!」
「デル、ゼウズ……」
「デルゼウズ様は私の美しさを理解して私の考えに共感してくださったわ!そして自分を呼び出してくれれば私に永遠の美しさを与えてくださるとおっしゃってくださったのよ。そのための大会。そのための奴隷よ!」
「なんだと……」
イカれているという感想しか出てこない。
トーイだけでなくリュードですら言葉失った。
永遠の美しさという妄執のために悪魔に魂を売り渡して多くの人を巻き込んで、多くの命を奪った。
大悪魔が何なのかリュードはよく分かっていないが呼び出してしまえばどんなことになるのかは想像に難くない。
「どうかしら? 永遠の美しさを手に入れる私の側に……」
「トーイはどうなる?」
「トーイ? 後ろのゴミのことかしら?」
「ゴミではない」
「……ふん、あなた以外に今のところ興味はないわ。後ろのゴミには生贄になってもらうわ」
「それで私のものに……」
「断る」
「なっ……」
「断る。俺はあんたの物にならない」
「リュードさん……」
「……そう。残念だけれどそれもまた美しいわ」
もはや装飾品1つにこだわることはないとガマガエルは笑う。
美しいものがなくなってしまうことは惜しいけれど今は自分の方が大事であり、断る姿もまた美しいと思ったので大人しく受け入れた。
「連れて行きなさい」
全く想像していなかった展開だとリュードは思った。
この大会、この問題の根幹にあるのは単なる娯楽や刺激を求めるなんて浅いものではなかった。
よりもっと根深いものが底にあった。
刺さりそうなほど近くに槍を突きつけられてリュードとトーイは移動させられる。
階段のある方とは逆側の道を歩かされていき、とても広いところに出た。
「うっ……」
ひどい匂いにトーイが顔を歪めて鼻を押さえた。
リュードも思い切り嫌な顔をする。
澱んだような空気は血の臭いを孕んでいて気持ちが悪くなった。
円柱状に切り取られた広い空間はコロシアムが丸ごと入ってしまいそうな広さがあった。
これだけ天井が高かったら天井付近は地上が近いかもしれない。
「なんだこれは……」
けれどそんな広さよりもまず目についたのはこの広い部屋のど真ん中にある醜悪な光景であった。
部屋の真ん中は大きくすり鉢状に窪んでいて、そこにはなんと死体の山が積み重なっていた。
多くが上半身裸の死体で、リュードはこの大会で死んだ奴隷の死体が積み重ねられているのだと気づいた。
中には奴隷ではなさそうな死体もあって、どこからこんなに集めてきたのか想像もつかない。
後ろから兵士にせっつかれて窪みの縁まで歩かされる。
死体の山の下、窪みの中は死体から流れ出た血で池になっていた。
断言できる。
人生で1番最悪な光景だった。
「うっ……おえぇ!」
たまらずトーイが吐き出してしまった。
ここに来る前に飲み食いしたことが仇となってしまった。
リュードも吐きたくなる気持ちは分かるがなんとか耐える。
生贄というからリュードたちもあの時代の山の仲間入りをさせられるのかと思ったがリュードたちは死体の山に向かって跪かされた。
多くいた兵士たちがどこかへいって数人がリュードたちに槍を突きつけて、ただ何も言われず、されずに待つ。
しかしその間にもどこからか死体が運ばれてきて窪みに投げ入れられていた。
この世の地獄。
トーイは酷すぎる光景に顔を青くして震えている。
少し前まではルフォンたちが助けに来てくれたらと思っていたけれどこんなヘドが出るような光景を見せるくらいなら来ない方がいい。
「りゅ……リュードさん」
兵士にバレないように声をひそめてトーイがリュードに話しかける。
「……どうした?」
「も、もしですよ。もし逃げられるなら私を置いて逃げてください……」
「トーイ……それは」
「ここまで来てしまっては私のことなんて気遣わないでください……」
トーイは泣きそうな顔をして笑う。
諦めてはいませんよと言おうとしてトーイは喉から言葉が出てこなくなる。
代わりに涙が出てくる。
泣くのを抑えようと、我慢しようとすればするほど嗚咽してしまう。


