「ふっふっ、惜しかったですね」
「ルフォン、大丈夫!?」
「大丈夫!」
掠っただけなのでダメージはそんなにない。
擦れたような傷ができて痛むが、深いものではないのですぐに血も止まるだろう。
ただ掠っただけなのに血が滲むほどのパワーは侮ることができない。
「なんで……」
「悪魔はそれじゃ死なない! 頭を完全に潰すか、心臓を狙うんだ!」
「……ウロダさんは戦わないのですか?」
「魔力も無しにあんなバケモンと戦えるかよ!」
ミュリウォと同じく戦いが始まって身を隠していたウロダが叫んだ。
昔誰かが悪魔は刺したり切ったりしただけじゃ簡単には死なないと言っていたことを思い出した。
頭か心臓をしっかりと再起不能にしないと再生してくるのだと酒に酔って語っていた。
本当かどうか分からないものだと思っていたけどどうやら話は本当だったようだと今になって判明する。
「遅いよ、オッさん!」
「オッさんもやめろぉ! 今思い出したんだよ!」
先に知っていたらしっかりとトドメを刺したのにとラストは思う。
悪魔のことをよく知らなかったために絶好の機会を逃してしまった。
「オラオラオラオラァ!」
悪魔の係員はやたらめったらに腕を振り回してルフォンを追いかける。
幸い動きは速くなく単調なのでかわすのに苦労はしなかった。
しかし反撃で腕を切り付けても悪魔の係員は怯みもしないし、浅い傷は簡単に治ってしまう。
多少のダメージ如きは無視してそのまま攻撃をしてくる。
先ほどのように頭を狙って飛びついたら手痛い反撃を食らうことだろう。
隙をうかがって回避を続けるが、悪魔の係員の体力は無尽蔵で腕を振り回し続けている。
「なかなか隙がない……」
ツキリと痛む脇腹の痛みが深く踏み込むことをためらわせる。
それに休憩所はそれなりの広さはあるけれど、洞窟の狭い道に比べればぐらいのもので魔物がいた部屋の方が広かったぐらいである。
大きく距離を取れるほどのスペースもない。
ミュリウォやウロダ、遠距離攻撃をしてくれるラストの方に誘導してしまうわけにもいかない。
行動範囲にも制限があるといえる状況だ。
「な、何だよあの化け物!」
「ここは休憩所だって聞いてたのに!」
今でも生き残っているものは強いか、あるいは狡猾な知恵のあるものである。
別に魔物と戦うつもりはなくても手を組んだ方が生存に有利だと思えば手を組む連中はいる。
そうして互いに手を取り合い生き残った三人の奴隷が音を聞きつけてやってきた。
もしかしたら近くに魔物がいて誰かが戦っていて上手くいけば横取りでもと狙っていたのだ。
だがいざ駆けつけてみると魔物のようだが、見たこともない化け物のような見た目をした悪魔の係員がルフォンと戦っていたのである。
運の悪いことに奴隷たちは悪魔の係員が立っている横の通路から来てしまった。
「ぶっ!」
悪魔の係員の腕が一人の奴隷に直撃する。
入ってきた通路に戻されるようにぶっ飛んでいって、そのまま動かなくなる。
「に、逃げろ!」
「マテ!」
異様でヤバい光景に奴隷たちが逃げ出す。
目撃者を逃してはならないと悪魔の係員が二人を追いかけようとする。
「エッ?」
伸ばした手が奴隷の1人に届きそうになった瞬間だった。
悪魔の係員の視界が突然グルリと後ろを向いた。
悪魔の係員が振り向いたとか体を反転させたとかではない。
ゴキリと変な音がしたし、頭の横には掴まれているような感覚がある。
「……ナゼ?」
男の視界が後ろを向いた理由はルフォンであった。
ルフォンから注意が逸れた一瞬の隙をついて、魔人化したルフォンは飛び上がった。
ピタリと伸ばした足を天に向け、悪魔の係員の真上で逆さになったルフォンは優しく手を添えるように悪魔の係員の頭を両手で鷲掴みにした。
そのまま勢いよく体を反転させた。
鈍い音がしてルフォンごと悪魔の係員の頭も同じく回転したのだ。
急に視界が後ろを振り返ることになって悪魔の係員は何が起こったのか分からなかった。
魔人化したルフォンは悪魔の係員の体の正面に着地したので悪魔の係員にはルフォンがいなくなったように思えていた。
「トドメだよ!」
首をねじ折っても死なないのなら次は心臓を狙う。
腕を引き、魔力を込めて、思い切り突き出す。
「な……あっ」
悪魔の係員にはいきなり胸から毛むくじゃらの何かが飛び出してきたように見えた。
正確には背中からルフォンの手が飛び出してきたのだが、理解が追いつく前にルフォンは腕を引き抜いた。
「う、ウソだ……せっかく、力を…………手に入れられたのに……こんなところで」
ダメ押しとばかりにルフォンがナイフを抜いて悪魔の係員の首を刎ねる。
悪魔の係員の体が倒れて、黒い血が流れ出し、不自然に膨張した体が萎み始める。
化け物のような姿をしていた悪魔の係員は最後は真人族の姿に戻って死んでいった。
「ルフォン、おつかれ」
「ありがと」
ラストがルフォンに荷物の中からタオルを出して投げ渡す。
こんな状況下にあるのでいついかなる時でも魔人化出来る様に緩めの服を着ていた。
なので魔人化で破けることはなかったけれど悪魔の係員の攻撃によって服が破けてしまった。
ラストに投げ渡されたタオルで血にまみれた腕を拭いて陰になった通路で服を着替える。
「ルフォン、大丈夫!?」
「大丈夫!」
掠っただけなのでダメージはそんなにない。
擦れたような傷ができて痛むが、深いものではないのですぐに血も止まるだろう。
ただ掠っただけなのに血が滲むほどのパワーは侮ることができない。
「なんで……」
「悪魔はそれじゃ死なない! 頭を完全に潰すか、心臓を狙うんだ!」
「……ウロダさんは戦わないのですか?」
「魔力も無しにあんなバケモンと戦えるかよ!」
ミュリウォと同じく戦いが始まって身を隠していたウロダが叫んだ。
昔誰かが悪魔は刺したり切ったりしただけじゃ簡単には死なないと言っていたことを思い出した。
頭か心臓をしっかりと再起不能にしないと再生してくるのだと酒に酔って語っていた。
本当かどうか分からないものだと思っていたけどどうやら話は本当だったようだと今になって判明する。
「遅いよ、オッさん!」
「オッさんもやめろぉ! 今思い出したんだよ!」
先に知っていたらしっかりとトドメを刺したのにとラストは思う。
悪魔のことをよく知らなかったために絶好の機会を逃してしまった。
「オラオラオラオラァ!」
悪魔の係員はやたらめったらに腕を振り回してルフォンを追いかける。
幸い動きは速くなく単調なのでかわすのに苦労はしなかった。
しかし反撃で腕を切り付けても悪魔の係員は怯みもしないし、浅い傷は簡単に治ってしまう。
多少のダメージ如きは無視してそのまま攻撃をしてくる。
先ほどのように頭を狙って飛びついたら手痛い反撃を食らうことだろう。
隙をうかがって回避を続けるが、悪魔の係員の体力は無尽蔵で腕を振り回し続けている。
「なかなか隙がない……」
ツキリと痛む脇腹の痛みが深く踏み込むことをためらわせる。
それに休憩所はそれなりの広さはあるけれど、洞窟の狭い道に比べればぐらいのもので魔物がいた部屋の方が広かったぐらいである。
大きく距離を取れるほどのスペースもない。
ミュリウォやウロダ、遠距離攻撃をしてくれるラストの方に誘導してしまうわけにもいかない。
行動範囲にも制限があるといえる状況だ。
「な、何だよあの化け物!」
「ここは休憩所だって聞いてたのに!」
今でも生き残っているものは強いか、あるいは狡猾な知恵のあるものである。
別に魔物と戦うつもりはなくても手を組んだ方が生存に有利だと思えば手を組む連中はいる。
そうして互いに手を取り合い生き残った三人の奴隷が音を聞きつけてやってきた。
もしかしたら近くに魔物がいて誰かが戦っていて上手くいけば横取りでもと狙っていたのだ。
だがいざ駆けつけてみると魔物のようだが、見たこともない化け物のような見た目をした悪魔の係員がルフォンと戦っていたのである。
運の悪いことに奴隷たちは悪魔の係員が立っている横の通路から来てしまった。
「ぶっ!」
悪魔の係員の腕が一人の奴隷に直撃する。
入ってきた通路に戻されるようにぶっ飛んでいって、そのまま動かなくなる。
「に、逃げろ!」
「マテ!」
異様でヤバい光景に奴隷たちが逃げ出す。
目撃者を逃してはならないと悪魔の係員が二人を追いかけようとする。
「エッ?」
伸ばした手が奴隷の1人に届きそうになった瞬間だった。
悪魔の係員の視界が突然グルリと後ろを向いた。
悪魔の係員が振り向いたとか体を反転させたとかではない。
ゴキリと変な音がしたし、頭の横には掴まれているような感覚がある。
「……ナゼ?」
男の視界が後ろを向いた理由はルフォンであった。
ルフォンから注意が逸れた一瞬の隙をついて、魔人化したルフォンは飛び上がった。
ピタリと伸ばした足を天に向け、悪魔の係員の真上で逆さになったルフォンは優しく手を添えるように悪魔の係員の頭を両手で鷲掴みにした。
そのまま勢いよく体を反転させた。
鈍い音がしてルフォンごと悪魔の係員の頭も同じく回転したのだ。
急に視界が後ろを振り返ることになって悪魔の係員は何が起こったのか分からなかった。
魔人化したルフォンは悪魔の係員の体の正面に着地したので悪魔の係員にはルフォンがいなくなったように思えていた。
「トドメだよ!」
首をねじ折っても死なないのなら次は心臓を狙う。
腕を引き、魔力を込めて、思い切り突き出す。
「な……あっ」
悪魔の係員にはいきなり胸から毛むくじゃらの何かが飛び出してきたように見えた。
正確には背中からルフォンの手が飛び出してきたのだが、理解が追いつく前にルフォンは腕を引き抜いた。
「う、ウソだ……せっかく、力を…………手に入れられたのに……こんなところで」
ダメ押しとばかりにルフォンがナイフを抜いて悪魔の係員の首を刎ねる。
悪魔の係員の体が倒れて、黒い血が流れ出し、不自然に膨張した体が萎み始める。
化け物のような姿をしていた悪魔の係員は最後は真人族の姿に戻って死んでいった。
「ルフォン、おつかれ」
「ありがと」
ラストがルフォンに荷物の中からタオルを出して投げ渡す。
こんな状況下にあるのでいついかなる時でも魔人化出来る様に緩めの服を着ていた。
なので魔人化で破けることはなかったけれど悪魔の係員の攻撃によって服が破けてしまった。
ラストに投げ渡されたタオルで血にまみれた腕を拭いて陰になった通路で服を着替える。


