再び観客の悲鳴にも似た声が聞こえた。
ひょうひょうとした表情だったメーリエッヒの顔から感情が消える。
ルフォンが目の前にいたはずの相手を見失った。
後ろに回り込まれたととっさに判断できたのは良かったのだが振り向いた時にはメーリエッヒは剣を斜めに振り上げ始めていた。
何も速さはルフォンだけのものではない。
メーリエッヒだって速度を重視した戦いもできる。
ここまであえて動き少なく戦ってきたメーリエッヒが急に速度を上げたためにルフォンは完全についていけなかったのである。
メーリエッヒが剣を振り下ろした。
躊躇いもない剣はモロにクリーンヒットする。
ルフォンは宙を舞い、地面に叩きつけられても起き上がろうと体を動かすもダメージは深刻で起き上がれない。
真剣だったならルフォンは文字通り真っ二つになっていたことだろう。
たとえ起き上がったとしてもメーリエッヒの勝利を示す赤札も4つ上がっていたのでもうメーリエッヒの勝利は確定している。
そのままパタリとルフォンは気絶して力比べの優勝はまたメーリエッヒとなった。
振り返ってみればルフォンは全く敵うことがなかった一方的な戦いだった。
けれども決勝まで勝ち抜いて臆せずメーリエッヒに挑んでいったルフォンは大健闘したと言っていいとリュードは思う。
リュードもルフォンに負けてはいられないと決意を新たにした。
ーーーーー
次の日、ルフォンは医療班によって無事全快と聞いて安心したところで第1回戦が始まった。
初戦の相手はくじ運が良かった。
注目されるような強くもない相手でサクッと倒させてもらった。
リュードにとって危なげない相手でも子供部門から勝ち上がったチャンピオンが大人部門で1勝を挙げること自体凄くてみんなの歓声も盛大だった。
正直15歳の地獄の鍛錬を乗り越えた時点であまり差はないのではないかと思ったりしているが、リュードは特別に目をつけられてかなりきつい地獄を見せられていたことを知らないのである。
変に頑張るから大人たちも余計に力が入っていたのだ。
ともかくリュードは初戦をものにした。
けれどくじ引きシステムな以上これから先に誰といつ当たるかはわからない。
いきなり村長と当たることも、師匠であるウォーケックとだって可能性はある。
もちろん村長もウォーケックも1回戦を突破している。
欲張りなことだとは思うのだけれども村長とウォーケック、そのどちらも打ち倒してこそリュードは村から旅立つ事ができる、そんな風に勝手に思っている。
神様に与えてもらった環境に依存して生きるだけではダメ。
力比べという場において己の実力でちゃんと強くなったと証明しなきゃいけない。
「シューナリュード・イデアム!」
2回戦目の試合で早速リュードの名前がクジが引かれて大きく名前が呼ばれた。
先んじて力比べの会場に入ると大きな声援を浴びる。
「ウォーケック・ディガン!」
おおっ!っと観客から歓声が上がった。
思わずニヤッとしてしまうほどの幸運で次の対戦相手はウォーケックに決まった。
リュードとウォーケックが師弟関係なのは周知の事実なため周りも師弟対決の行く末に大きな期待を寄せているのか一層視線が熱く感じられる。
先に呼ばれたリュードは白、後に呼ばれたウォーケックは赤。
決められた位置について互いに視線を交わすとリュードと同様にウォーケックもニヤリと口の端を歪める。
ルフォンとメーリエッヒの戦いを思い出している人も多い。
「ここで当たるとは奇遇だな」
「俺はどこかで当たると思ってましたよ」
なんとなく予感はしていた。
ウォーケックとは戦うことになると思っていた。
「さて……弟子がどこまで成長したのか見させてもらおうか」
「今日は俺が勝たせてもらいますよ」
「そうか」
ウォーケックは双剣を構える。
ナイフにも近い短めの剣を二振り。利き腕に持つ剣の方がやや長い。
最後にまたリュードとウォーケックは視線を合わせて口の端を上げて笑う。
言葉を発しなくても伝わる思いがあるのだ。
「始め!」
ほとんど同時に飛び出してど真ん中でリュードとウォーケックは剣を交える。
双剣を生かしたスピード感あふれる斬撃は一瞬の油断も出来ず受け流しや回避も楽ではない。
人狼族の剣は柔剣、竜人族の剣は剛剣なんて誰かが言っていた。
人狼族はしなやかで柔軟、パワーよりもスピード重視、戦い方も受け流しや回避を主体としていることが多い。
竜人族は魔人化の状態の堅牢さは言わずもがな人の姿でも頑丈でパワーを重視、剣を合わせるようなしっかりと受け、パワーで押していく戦い方が多い。
ウォーケックはその点でいけば人狼族らしい戦い方と言える。
リュードはウォーケックが師匠なだけにやや人狼族よりな戦い方ではあるものの持っている剣は竜人族の大振りな剣であって完全な速さ寄りかといえばそうでもない。
そもそも技量も経験値も速さもウォーケックが上なのだから全く同じじゃ勝てるはずもない。
一方リュードのアドバンテージは竜人族のパワーである。
これもまた種族の違いがある。
人狼族も力はある方ではあるが同じように過ごしてきたならば竜人族の方がしなやかで強靭な肉体を持つ。
片手ずつで操る双剣ということもあってリュードが力負けすることはない。
「やるじゃないか」
「まだまだ!」
短いが激しい剣のやり取り。
お互いに剣をかすらせることなく均衡が保たれている。
体力の消耗は心配だけどこのままでいい。
徐々に速くなっていく打ち合いの中でウォーケックの攻撃をリュードはまださばき切っている。
ウォーケックもリュードのやや重い攻撃を衝撃をしっかりと逃して受けている。
リュードはまだまだ若く、連戦も想定して体力も作りこんできた。
長くなればなるほど体力の消耗が大きいのはウォーケックになる。
実際ウォーケックは村長との戦いではそのパワーを最終的に捌ききれず押し切られてしまうような負け方をしていることもあった。
決してウォーケックも非力とは言わないしリュードも村長ほどのパワーはないから同じようにはいかないけどリュードの狙いとしてはあながち的外れな方策でもない。
ひょうひょうとした表情だったメーリエッヒの顔から感情が消える。
ルフォンが目の前にいたはずの相手を見失った。
後ろに回り込まれたととっさに判断できたのは良かったのだが振り向いた時にはメーリエッヒは剣を斜めに振り上げ始めていた。
何も速さはルフォンだけのものではない。
メーリエッヒだって速度を重視した戦いもできる。
ここまであえて動き少なく戦ってきたメーリエッヒが急に速度を上げたためにルフォンは完全についていけなかったのである。
メーリエッヒが剣を振り下ろした。
躊躇いもない剣はモロにクリーンヒットする。
ルフォンは宙を舞い、地面に叩きつけられても起き上がろうと体を動かすもダメージは深刻で起き上がれない。
真剣だったならルフォンは文字通り真っ二つになっていたことだろう。
たとえ起き上がったとしてもメーリエッヒの勝利を示す赤札も4つ上がっていたのでもうメーリエッヒの勝利は確定している。
そのままパタリとルフォンは気絶して力比べの優勝はまたメーリエッヒとなった。
振り返ってみればルフォンは全く敵うことがなかった一方的な戦いだった。
けれども決勝まで勝ち抜いて臆せずメーリエッヒに挑んでいったルフォンは大健闘したと言っていいとリュードは思う。
リュードもルフォンに負けてはいられないと決意を新たにした。
ーーーーー
次の日、ルフォンは医療班によって無事全快と聞いて安心したところで第1回戦が始まった。
初戦の相手はくじ運が良かった。
注目されるような強くもない相手でサクッと倒させてもらった。
リュードにとって危なげない相手でも子供部門から勝ち上がったチャンピオンが大人部門で1勝を挙げること自体凄くてみんなの歓声も盛大だった。
正直15歳の地獄の鍛錬を乗り越えた時点であまり差はないのではないかと思ったりしているが、リュードは特別に目をつけられてかなりきつい地獄を見せられていたことを知らないのである。
変に頑張るから大人たちも余計に力が入っていたのだ。
ともかくリュードは初戦をものにした。
けれどくじ引きシステムな以上これから先に誰といつ当たるかはわからない。
いきなり村長と当たることも、師匠であるウォーケックとだって可能性はある。
もちろん村長もウォーケックも1回戦を突破している。
欲張りなことだとは思うのだけれども村長とウォーケック、そのどちらも打ち倒してこそリュードは村から旅立つ事ができる、そんな風に勝手に思っている。
神様に与えてもらった環境に依存して生きるだけではダメ。
力比べという場において己の実力でちゃんと強くなったと証明しなきゃいけない。
「シューナリュード・イデアム!」
2回戦目の試合で早速リュードの名前がクジが引かれて大きく名前が呼ばれた。
先んじて力比べの会場に入ると大きな声援を浴びる。
「ウォーケック・ディガン!」
おおっ!っと観客から歓声が上がった。
思わずニヤッとしてしまうほどの幸運で次の対戦相手はウォーケックに決まった。
リュードとウォーケックが師弟関係なのは周知の事実なため周りも師弟対決の行く末に大きな期待を寄せているのか一層視線が熱く感じられる。
先に呼ばれたリュードは白、後に呼ばれたウォーケックは赤。
決められた位置について互いに視線を交わすとリュードと同様にウォーケックもニヤリと口の端を歪める。
ルフォンとメーリエッヒの戦いを思い出している人も多い。
「ここで当たるとは奇遇だな」
「俺はどこかで当たると思ってましたよ」
なんとなく予感はしていた。
ウォーケックとは戦うことになると思っていた。
「さて……弟子がどこまで成長したのか見させてもらおうか」
「今日は俺が勝たせてもらいますよ」
「そうか」
ウォーケックは双剣を構える。
ナイフにも近い短めの剣を二振り。利き腕に持つ剣の方がやや長い。
最後にまたリュードとウォーケックは視線を合わせて口の端を上げて笑う。
言葉を発しなくても伝わる思いがあるのだ。
「始め!」
ほとんど同時に飛び出してど真ん中でリュードとウォーケックは剣を交える。
双剣を生かしたスピード感あふれる斬撃は一瞬の油断も出来ず受け流しや回避も楽ではない。
人狼族の剣は柔剣、竜人族の剣は剛剣なんて誰かが言っていた。
人狼族はしなやかで柔軟、パワーよりもスピード重視、戦い方も受け流しや回避を主体としていることが多い。
竜人族は魔人化の状態の堅牢さは言わずもがな人の姿でも頑丈でパワーを重視、剣を合わせるようなしっかりと受け、パワーで押していく戦い方が多い。
ウォーケックはその点でいけば人狼族らしい戦い方と言える。
リュードはウォーケックが師匠なだけにやや人狼族よりな戦い方ではあるものの持っている剣は竜人族の大振りな剣であって完全な速さ寄りかといえばそうでもない。
そもそも技量も経験値も速さもウォーケックが上なのだから全く同じじゃ勝てるはずもない。
一方リュードのアドバンテージは竜人族のパワーである。
これもまた種族の違いがある。
人狼族も力はある方ではあるが同じように過ごしてきたならば竜人族の方がしなやかで強靭な肉体を持つ。
片手ずつで操る双剣ということもあってリュードが力負けすることはない。
「やるじゃないか」
「まだまだ!」
短いが激しい剣のやり取り。
お互いに剣をかすらせることなく均衡が保たれている。
体力の消耗は心配だけどこのままでいい。
徐々に速くなっていく打ち合いの中でウォーケックの攻撃をリュードはまださばき切っている。
ウォーケックもリュードのやや重い攻撃を衝撃をしっかりと逃して受けている。
リュードはまだまだ若く、連戦も想定して体力も作りこんできた。
長くなればなるほど体力の消耗が大きいのはウォーケックになる。
実際ウォーケックは村長との戦いではそのパワーを最終的に捌ききれず押し切られてしまうような負け方をしていることもあった。
決してウォーケックも非力とは言わないしリュードも村長ほどのパワーはないから同じようにはいかないけどリュードの狙いとしてはあながち的外れな方策でもない。