「さてと……」
部屋の様子を確認する暇もなかったので隅にこんな水溜りがあるとは気づかなかった。
よく見ると壁から水が染み出していて、溜まった水がリュードの来た方にも流れ出している。
「槍は無事そうだな」
リュードは槍を回収しようとネズミに近づく。
ネズミはちょうど水溜りにつかっているかのように水溜りの中に入っていた。
水に入らないようにしながら手を伸ばして頭に深く刺さった槍を掴んで引っ張る。
深く突き刺さった槍は簡単には抜けず、ネズミの体が引っ張られて水溜りの中からズルズルとネズミが出てきてしまった。
グリグリと回してみたりしても槍は抜けない。
「くっ……この! うわっ!」
しょうがないとネズミに足をかけて体ごと使って槍を引っ張る。
ズズッと槍が動き出して、いきなりスポンと抜けた。
リュードが後ろに転がり、水溜りに突っ込んだ。
槍を引き抜こうと色々しているうちに位置が変わって水溜りが背後にくる場所に移動してしまっていたのである。
「いつつ……あれ? あったかい……」
水溜りにつかって気がついた。
それなりの深さがある水溜りはネズミの背中の炎で温められてお湯になっていた。
それも熱すぎず、入っていて悪くないと思える適温になっている。
お尻をさすりながらリュードが立ち上がる。
槍を地面に放り投げて服を絞っていると石を回収し終えたトーイが戻ってきた。
「リュードさんは石は入りませんか?」
トーイは両手いっぱいにジャラリと石を持っている。
思っていたよりも石の数が多くて、ネズミに挑んで散っていったものが多かったことを知った。
石は十個必要である。
石を十個集めろというという指示だったけれど自分の分を含めて十個なのか、他者のものだけで十個なのかイマイチハッキリした書き方をしていなかった。
「えーと全部で十二個ですね」
とりあえずトーイには自分の分を含めず十個分を残しておいて、リュードは二個受け取っておく。
魔物を倒したので先に進めるだろうがとりあえず必要になる可能性もあるので持っておくことにした。
相手が交渉に乗ってくるなら石と交換で戦闘を避けられる可能性もある。
「どっちにしろ死人には必要のないものだからな。余った分は俺が持っておくよ」
「分かりました。武器も集めてみましたが何か必要なものがありますか?」
石を取るついでにトーイは武器も集めていた。
一応見てみるけれど言葉がなかった。
十数人分の武器とはとても思えなかった。
ナイフが多く、ナックルガードとか棍棒とか斧なんてものもあった。
この中から選ぶなら斧かナイフかぐらいのものであまり使えそうなものは多くない。
トーイやリュードの武器運は良かったみたいである。
トーイにハンマーは合わなかったが武器としては悪くない方であった。
「……うーん、いや、武器はいいかな」
「まあ、そうですね……」
ナイフは既に持っているし他の武器と比べると槍の方が遥かにいい。
「どうしましたか、リュードさん?」
リュードならすぐにでも場所を移動しそうなのに、リュードは何かを考え込んでいる。
「……トーイ、ひとつお願いがあるんだ」
「なんでしょうか? 私にできることならなんでもしますよ!」
「少しの間でいいんだけど周りを見張っていてくれないか?」
「……は、はい、分かりました……」
こんな場所で何するつもりなのだろう。
疑問に思うがこれまで散々助けてくれたリュードのためなら黙ってなんでもする。
「背に腹はかえられない……」
リュードの頭の中では長い葛藤があった。
その視線の先には水溜りがある。
程よい温度になってホカホカと湯気が上がっている水溜りはもうほとんど温泉のようなものだ。
葛藤とはお湯となった水溜りに入るかどうか、ではない。
もうお湯につかることはリュードの中で確定事項であった。
悩んでいるのは下を脱ぐかどうかである。
リュード的常識の中で服を着たまま入るのははばかられることだ。
例えお湯となった水溜りでも着衣のままお湯につかるのはなんだか抵抗感がある。
ネズミがつかってたぞとかリュードの頭にはもはやなかった。
脱ぐか脱がないか、その一点だけである。
悩みに悩んだがリュードが出した結論は、そのままお湯につかった。
脱ぐ理由はリュードの抵抗感であるが脱がない理由はいくつかあるからだ。
まずここは戦場である。
いつ戦いが起こるか分からない場所であって、リュードであっても全裸で戦うことは避けたい。
戦場なのにお湯に入っていていいのかというところはいいのであるとリュードは思う。
戦場であっても、いや、戦場であるが故に身の清潔さと癒しは必要。
ネズミと戦って汗ばみ、汚れた体ではこの先実力が発揮できない可能性がある。
そして不思議なことなのだがリュードが脱ぐか脱がないか悩んでいるとカメの魔道具がグッと寄ってきた。
それだけではない、他の奴隷にも1人1個のカメの魔道具が付いているようでトーイ以外の死んだ奴隷たちのカメの魔道具までリュードの方に水晶を向けていた。
こうなるとなんだか見られているような感じがして、リュードは脱ぐことをためらってしまったのである。
部屋の様子を確認する暇もなかったので隅にこんな水溜りがあるとは気づかなかった。
よく見ると壁から水が染み出していて、溜まった水がリュードの来た方にも流れ出している。
「槍は無事そうだな」
リュードは槍を回収しようとネズミに近づく。
ネズミはちょうど水溜りにつかっているかのように水溜りの中に入っていた。
水に入らないようにしながら手を伸ばして頭に深く刺さった槍を掴んで引っ張る。
深く突き刺さった槍は簡単には抜けず、ネズミの体が引っ張られて水溜りの中からズルズルとネズミが出てきてしまった。
グリグリと回してみたりしても槍は抜けない。
「くっ……この! うわっ!」
しょうがないとネズミに足をかけて体ごと使って槍を引っ張る。
ズズッと槍が動き出して、いきなりスポンと抜けた。
リュードが後ろに転がり、水溜りに突っ込んだ。
槍を引き抜こうと色々しているうちに位置が変わって水溜りが背後にくる場所に移動してしまっていたのである。
「いつつ……あれ? あったかい……」
水溜りにつかって気がついた。
それなりの深さがある水溜りはネズミの背中の炎で温められてお湯になっていた。
それも熱すぎず、入っていて悪くないと思える適温になっている。
お尻をさすりながらリュードが立ち上がる。
槍を地面に放り投げて服を絞っていると石を回収し終えたトーイが戻ってきた。
「リュードさんは石は入りませんか?」
トーイは両手いっぱいにジャラリと石を持っている。
思っていたよりも石の数が多くて、ネズミに挑んで散っていったものが多かったことを知った。
石は十個必要である。
石を十個集めろというという指示だったけれど自分の分を含めて十個なのか、他者のものだけで十個なのかイマイチハッキリした書き方をしていなかった。
「えーと全部で十二個ですね」
とりあえずトーイには自分の分を含めず十個分を残しておいて、リュードは二個受け取っておく。
魔物を倒したので先に進めるだろうがとりあえず必要になる可能性もあるので持っておくことにした。
相手が交渉に乗ってくるなら石と交換で戦闘を避けられる可能性もある。
「どっちにしろ死人には必要のないものだからな。余った分は俺が持っておくよ」
「分かりました。武器も集めてみましたが何か必要なものがありますか?」
石を取るついでにトーイは武器も集めていた。
一応見てみるけれど言葉がなかった。
十数人分の武器とはとても思えなかった。
ナイフが多く、ナックルガードとか棍棒とか斧なんてものもあった。
この中から選ぶなら斧かナイフかぐらいのものであまり使えそうなものは多くない。
トーイやリュードの武器運は良かったみたいである。
トーイにハンマーは合わなかったが武器としては悪くない方であった。
「……うーん、いや、武器はいいかな」
「まあ、そうですね……」
ナイフは既に持っているし他の武器と比べると槍の方が遥かにいい。
「どうしましたか、リュードさん?」
リュードならすぐにでも場所を移動しそうなのに、リュードは何かを考え込んでいる。
「……トーイ、ひとつお願いがあるんだ」
「なんでしょうか? 私にできることならなんでもしますよ!」
「少しの間でいいんだけど周りを見張っていてくれないか?」
「……は、はい、分かりました……」
こんな場所で何するつもりなのだろう。
疑問に思うがこれまで散々助けてくれたリュードのためなら黙ってなんでもする。
「背に腹はかえられない……」
リュードの頭の中では長い葛藤があった。
その視線の先には水溜りがある。
程よい温度になってホカホカと湯気が上がっている水溜りはもうほとんど温泉のようなものだ。
葛藤とはお湯となった水溜りに入るかどうか、ではない。
もうお湯につかることはリュードの中で確定事項であった。
悩んでいるのは下を脱ぐかどうかである。
リュード的常識の中で服を着たまま入るのははばかられることだ。
例えお湯となった水溜りでも着衣のままお湯につかるのはなんだか抵抗感がある。
ネズミがつかってたぞとかリュードの頭にはもはやなかった。
脱ぐか脱がないか、その一点だけである。
悩みに悩んだがリュードが出した結論は、そのままお湯につかった。
脱ぐ理由はリュードの抵抗感であるが脱がない理由はいくつかあるからだ。
まずここは戦場である。
いつ戦いが起こるか分からない場所であって、リュードであっても全裸で戦うことは避けたい。
戦場なのにお湯に入っていていいのかというところはいいのであるとリュードは思う。
戦場であっても、いや、戦場であるが故に身の清潔さと癒しは必要。
ネズミと戦って汗ばみ、汚れた体ではこの先実力が発揮できない可能性がある。
そして不思議なことなのだがリュードが脱ぐか脱がないか悩んでいるとカメの魔道具がグッと寄ってきた。
それだけではない、他の奴隷にも1人1個のカメの魔道具が付いているようでトーイ以外の死んだ奴隷たちのカメの魔道具までリュードの方に水晶を向けていた。
こうなるとなんだか見られているような感じがして、リュードは脱ぐことをためらってしまったのである。