「おりゃああああっ!」
リュードは壁に足をかけて1歩壁を登ると後ろに回転しながら飛び上がる。
魔力が使えて身体強化が十分なら数歩壁を駆け登ったが、今はそんなことできる余裕がなかった。
トップスピードのネズミにもリュードが飛び上がったのが見えたがもう止まることはできない。
ネズミは勢いよく壁に激突する。
衝撃で多少グラリと体が揺れて意識が飛びかけたネズミの頭にリュードは槍を突き立てた。
力が足りないなら何かで補えばいい。
上から全力で振り下ろす力に加えて落下の勢いを足した。
「どうだ!」
体重と落下の勢いが加わった槍はネズミの頭につき刺さる。
「や、やった!」
すぐさまリュードは槍を手放して地面に転がる。
あのままでは背中の炎に焼かれてしまうためだ。
ネズミの体がゆっくりと地面に倒れる。
「いや……やってない」
しかしネズミはすぐに起き上がった。
倒したかと思えたのは本当に一瞬だけだった。
「……チッ、浅かったか」
壁に激突させてもなんともなかったのだ、頭もかなり頑丈なようである。
出来るなら目を狙うべきだった。
背中の炎を恐れすぎて狙いが曖昧なままに攻撃をとりあえず頭に繰り出してしまった。
「リュ、リュードさん!」
「マズイな……」
ネズミが咆哮する。
背中の炎がさらに大きくなって燃える範囲が広がる。
背中一面だけだった炎は顔や手足にまで広がって、全身が赤いネズミになる。
さらにマズイことはリュードの槍はネズミの頭に刺さったままなことである。
ネズミは怒って全身燃え盛り、リュードは武器を失った。
笑えるほどに不利な状況。
次を考えて多少の火傷覚悟でも槍を引き抜いてネズミから降りるべきだった。
一つ一つの判断ミスが響いている。
魔力が使えたなら槍はもっと深々と刺さってネズミを倒せていたし、引き抜いて逃げることだってできたかもしれない。
魔力があった頃の感覚で動いてしまっていて全てが届いていない。
怒りのこもった目でネズミに睨みつけられてリュードはどうすべきか必死に頭の中で考える。
「そ、そんなのアリかよ!?」
ネズミはグッと頭を引っ込めて口を開きながら頭を突き出した。
大きな火の玉が口から飛び出してリュードに襲いかかった。
これまで単純な攻撃だったのにいきなり謎の魔法攻撃が放たれてリュードは慌てて横に転がって火の玉をかわす。
壁に当たって爆発した火の玉が壁を黒く焦がした。
火を吐いてくるなんて思ってもなかった。
裸の上半身にあたったら火傷じゃ済まない。
「リュードさん逃げてください!」
ネズミは地面に転がったリュードに突進してくる。
「あっちい!」
これまでと同じようにかわしてしまった。
しかしネズミの燃えている範囲は広がっている。
頭や手も燃えているので同じようにかわすと火が体を掠めてしまった。
一瞬掠めただけじゃ火傷はしないが、それでも強い熱を感じてリュードは顔をしかめた。
どうにか槍だけでも回収したい。
リュードは覚悟を決めてネズミの突進を回避すると岩に足をかけて飛び上がる。
「あっづ!」
燃える顔の熱さに耐えながら槍に手を伸ばしたリュード。
槍に手は届いたリュードだったが苦痛に顔を歪めて槍から手を離してしまった。
顔も燃えているネズミは槍が刺さった頭の辺りも当然に燃え盛っている。
そのために槍は炎で熱されてアッツアツになっていた。
柄を金属で補強してあるので熱が柄にまで上がってきていたのである。
槍を抜くまでの短い間すら掴んでいられずにリュードは槍を手放してしまったのだ。
「リュードさん、危ない!」
槍の予想外の熱さに空中で怯んでしまった。
ネズミが立ち上がりながら前脚を振り上げる。
鈍い衝撃を受けてリュードはさらに高く打ち上げられる。
燃えるところで攻撃されなくてよかったなんて思うこともできずにリュードは背中から地面に落下した。
肺の空気が飛び出していき、痛みに目の前がチカチカする。
「来ますよ!」
痛みにのたうち回っている暇はない。
非常に体が痛くてトーイの言葉がなかったら危なかった。
何も分かっていないがリュードはとりあえず転がるようにその場から移動した。
直後リュードのいた位置を突進したネズミが通り過ぎていった。
リュードは素早く立ち上がってネズミの位置を確認する。
大きなケガはないが背中が痛い。
こんなダメージ負うのはいつ以来だろうか。
「リュ、リュードさん……ど、どうしよう……」
もやは酷いやけどを覚悟するしかない。
殴りつけるにも槍を取るにもダメージ覚悟の上でやるしかない。
リュードにはネズミに対して打てる手がなくなってしまった。
「なにか……何かないか……ん? そ、そうだ! リュードさん、これを使ってください!」
リュードが必死にネズミの攻撃をかわし続けている。
万策尽きたような状況にトーイの顔が青くなる。
何か手立てを講じないとリュードはこのままやられてしまう。
その時トーイの手に固いものが触れた。
それはトーイに与えられた武器である大型のハンマーであった。
重たくて自分でもあんまり使えないものなのですっかり存在を忘れていた。
「私の武器です! よいっ、しょ!」
トーイはハンマーを掴むとリュードの方に向けて投げた。
重たいハンマーはトーイの力に余る代物だった。
ハンマーを扱うにはトーイは非力すぎてリュードのところまで飛んで行かずにかなり手前で失速して落ちた。
こんなところでハンマーを遠くにすら飛ばせない細腕をトーイは恨んだ。
「ナイスだ、トーイ!」
武器があるだけいい。
自分のところまで届かなければ拾いに行けばいい。
ネズミの突進をかわしたリュードはハンマーのところに走った。
急ブレーキをかけたネズミはすぐさま走るリュードを追いかける。
リュードは壁に足をかけて1歩壁を登ると後ろに回転しながら飛び上がる。
魔力が使えて身体強化が十分なら数歩壁を駆け登ったが、今はそんなことできる余裕がなかった。
トップスピードのネズミにもリュードが飛び上がったのが見えたがもう止まることはできない。
ネズミは勢いよく壁に激突する。
衝撃で多少グラリと体が揺れて意識が飛びかけたネズミの頭にリュードは槍を突き立てた。
力が足りないなら何かで補えばいい。
上から全力で振り下ろす力に加えて落下の勢いを足した。
「どうだ!」
体重と落下の勢いが加わった槍はネズミの頭につき刺さる。
「や、やった!」
すぐさまリュードは槍を手放して地面に転がる。
あのままでは背中の炎に焼かれてしまうためだ。
ネズミの体がゆっくりと地面に倒れる。
「いや……やってない」
しかしネズミはすぐに起き上がった。
倒したかと思えたのは本当に一瞬だけだった。
「……チッ、浅かったか」
壁に激突させてもなんともなかったのだ、頭もかなり頑丈なようである。
出来るなら目を狙うべきだった。
背中の炎を恐れすぎて狙いが曖昧なままに攻撃をとりあえず頭に繰り出してしまった。
「リュ、リュードさん!」
「マズイな……」
ネズミが咆哮する。
背中の炎がさらに大きくなって燃える範囲が広がる。
背中一面だけだった炎は顔や手足にまで広がって、全身が赤いネズミになる。
さらにマズイことはリュードの槍はネズミの頭に刺さったままなことである。
ネズミは怒って全身燃え盛り、リュードは武器を失った。
笑えるほどに不利な状況。
次を考えて多少の火傷覚悟でも槍を引き抜いてネズミから降りるべきだった。
一つ一つの判断ミスが響いている。
魔力が使えたなら槍はもっと深々と刺さってネズミを倒せていたし、引き抜いて逃げることだってできたかもしれない。
魔力があった頃の感覚で動いてしまっていて全てが届いていない。
怒りのこもった目でネズミに睨みつけられてリュードはどうすべきか必死に頭の中で考える。
「そ、そんなのアリかよ!?」
ネズミはグッと頭を引っ込めて口を開きながら頭を突き出した。
大きな火の玉が口から飛び出してリュードに襲いかかった。
これまで単純な攻撃だったのにいきなり謎の魔法攻撃が放たれてリュードは慌てて横に転がって火の玉をかわす。
壁に当たって爆発した火の玉が壁を黒く焦がした。
火を吐いてくるなんて思ってもなかった。
裸の上半身にあたったら火傷じゃ済まない。
「リュードさん逃げてください!」
ネズミは地面に転がったリュードに突進してくる。
「あっちい!」
これまでと同じようにかわしてしまった。
しかしネズミの燃えている範囲は広がっている。
頭や手も燃えているので同じようにかわすと火が体を掠めてしまった。
一瞬掠めただけじゃ火傷はしないが、それでも強い熱を感じてリュードは顔をしかめた。
どうにか槍だけでも回収したい。
リュードは覚悟を決めてネズミの突進を回避すると岩に足をかけて飛び上がる。
「あっづ!」
燃える顔の熱さに耐えながら槍に手を伸ばしたリュード。
槍に手は届いたリュードだったが苦痛に顔を歪めて槍から手を離してしまった。
顔も燃えているネズミは槍が刺さった頭の辺りも当然に燃え盛っている。
そのために槍は炎で熱されてアッツアツになっていた。
柄を金属で補強してあるので熱が柄にまで上がってきていたのである。
槍を抜くまでの短い間すら掴んでいられずにリュードは槍を手放してしまったのだ。
「リュードさん、危ない!」
槍の予想外の熱さに空中で怯んでしまった。
ネズミが立ち上がりながら前脚を振り上げる。
鈍い衝撃を受けてリュードはさらに高く打ち上げられる。
燃えるところで攻撃されなくてよかったなんて思うこともできずにリュードは背中から地面に落下した。
肺の空気が飛び出していき、痛みに目の前がチカチカする。
「来ますよ!」
痛みにのたうち回っている暇はない。
非常に体が痛くてトーイの言葉がなかったら危なかった。
何も分かっていないがリュードはとりあえず転がるようにその場から移動した。
直後リュードのいた位置を突進したネズミが通り過ぎていった。
リュードは素早く立ち上がってネズミの位置を確認する。
大きなケガはないが背中が痛い。
こんなダメージ負うのはいつ以来だろうか。
「リュ、リュードさん……ど、どうしよう……」
もやは酷いやけどを覚悟するしかない。
殴りつけるにも槍を取るにもダメージ覚悟の上でやるしかない。
リュードにはネズミに対して打てる手がなくなってしまった。
「なにか……何かないか……ん? そ、そうだ! リュードさん、これを使ってください!」
リュードが必死にネズミの攻撃をかわし続けている。
万策尽きたような状況にトーイの顔が青くなる。
何か手立てを講じないとリュードはこのままやられてしまう。
その時トーイの手に固いものが触れた。
それはトーイに与えられた武器である大型のハンマーであった。
重たくて自分でもあんまり使えないものなのですっかり存在を忘れていた。
「私の武器です! よいっ、しょ!」
トーイはハンマーを掴むとリュードの方に向けて投げた。
重たいハンマーはトーイの力に余る代物だった。
ハンマーを扱うにはトーイは非力すぎてリュードのところまで飛んで行かずにかなり手前で失速して落ちた。
こんなところでハンマーを遠くにすら飛ばせない細腕をトーイは恨んだ。
「ナイスだ、トーイ!」
武器があるだけいい。
自分のところまで届かなければ拾いに行けばいい。
ネズミの突進をかわしたリュードはハンマーのところに走った。
急ブレーキをかけたネズミはすぐさま走るリュードを追いかける。