二日の余裕はできたけれどマヤノブッカの治安は良くないし観光地でもない。
観光する気もないし下手に動き回るわけにもいかない。
はやる気持ちを押さえつけて、ルフォンたちは二日間を宿にこもって過ごした。
「……会場に向かおう」
ルフォンたちはフードを深くかぶって顔を隠す。
誰に見られたところで構わないのだけど目立たぬようにはしておく。
他にもバレたくない人がいるのか似たような出立ちの人がいるので仮に何か行動を起こすとしてもルフォンたちだとはバレないだろう。
コロシアムは異様な雰囲気であった。
指定された席に着いたが、耳が痛くなるほどのざわつきと戦いと血を求める興奮した目をした大人たちの集まりは熱気よりも狂気に近い異常さがある。
「始まるのかな」
今か今かと待っているとコロシアムの真ん中にある闘技場ステージの上に一人の女性が出てきた。
黒いウサギのお面を付けたその人は黒い筒のような物を持っていた。
「さーて、それでは第二ステージの方に参りたいと思いますが準備はよろしいですかー?」
黒うさぎの司会が筒に向けて話すとコロシアムのあちこちに取り付けられた大きな筒から声が出てくる。
いわゆるマイクとスピーカーだが、この世界ではそれを魔道具として作り出したものだった。
早く始めろ!と罵声が飛ぶ。
ステージの声がスピーカーから聞こえてくることやこんな魔道具をどうやって用意したかなんて周りの人は気にしていない。
とっとと大会を始めることの方がみんなにとっては大切なことだった。
この雰囲気を三人はとても好きになれそうになかった。
「第一ステージを生き残ったのは百五十八名の挑戦者の皆様でーす。この第二ステージで挑戦していただくのはダンジョンバトルです!」
黒うさぎの司会はステージを大きく使って各方向を向きながら罵声もなんのその視界を続ける。
「ダンジョンといっても本当にダンジョンを攻略するのではありません!この町の地下には巨大な地下空間があるのはご存じでしょうか? 知らなくても大丈夫ですが、ダンジョンとも呼べるほどに広いこの地下空間を使って参加者をさらに絞ります!」
黒うさぎの司会の声は高めで今の状況で聞いていると少しイラっとするとラストは思った。
「ルールは簡単です。参加者の手首には腕輪が付けられていまして、それには一つの石がついています。それを十個集めるだけ! いくつ集めても構いませんが十個集められなかったら失格となります。どうやって集めるかって? それはお願いでもしてみればいいんじゃないでしょうか?」
ルフォンたちは苦い顔をする。
要するに自分たち以外の奴隷を殺して石を奪えと言っているのだ。
黒うさぎの司会の白々しい言い方に石でも投げたくなる。
「ただしもう一つ、石がなくてもクリアと見なされる条件もございます。やっさしー私たちは地下空間のどこかに魔物をご用意しました! もし魔物を倒すことができましたら、石が十個なくても次のステージに進むことができちゃいます! 二つも条件があるなんて太っ腹!」
黒うさぎの司会が可愛らしくポーズを取る。
「えっ? どうやってみんなが勝ち上がってくるかみたいですって? そりゃあもちろん見ることもできます。こちらをご覧くださーい!」
黒うさぎの司会がパッと手を上げる。
すると闘技場を囲むように白い布が上から降りてくる。
闘技場を囲むように天井から吊るされている真っ白な巨大な布がなんなのか会場がざわつく。
「つい先日およそ500年前の遺物が大量に発掘されました。それは魔道具でありまして、なんと離れたところの光景を映し出すことができるものでした! 元々は偵察や監視を行うための魔道具だったみたいですが、私たちはそんな魔道具を手に入れることにせいこーしたのでーす!」
黒うさぎの司会が何を言いたいのか理解している人は少ない。
その魔道具がどうしたのだとざわつきが大きくなる。
「んー、実際に見ていただいた方が早いでしょうね。じゃん!」
白い布に囲まれてしまって見えないステージの上で黒うさぎの司会はポーズをとる。
コロシアムの中を照らしていた明かりが次々と消えて行く。
そして真っ暗になったコロシアムの中でパッと白い布に映像が映し出された。
「リューちゃん!」
ボヤけたり、ブレたりしている映像が布に映し出された。
安定しないで次々と移り変わって行くような映像が段々と鮮明に見え始めた。
別々の人が映し出されるその映像の中の1人に一瞬だけどリュードの姿があった。
ルフォンはそれを見逃さなかった。
「全てを同時にお見せすることはできませんがこちらの魔道具を使いまして、良いシーンをみなさまにお見せしたいと思います。いかがでしょう!」
ワッと会場が湧く。
すごい技術だと先ほどまで殺気立っていた人たちもほめそやす。
これまでなかったやり方と競技内容に興奮を隠しきれない観客たちだがルフォンは本当に一瞬だけ映った光景に釘付けになっていた。
リュードはどこか狭い洞窟のようなところにいるようにルフォンの目には見えた。
「どこにいるの……リューちゃん」
姿は見えた。
なのに目の前にはいない。
手が届きそうで届かない。
胸に広がるもどかしさが苦しくて、もう一度リュードが移らないかとルフォンは映像に目を凝らした。
観光する気もないし下手に動き回るわけにもいかない。
はやる気持ちを押さえつけて、ルフォンたちは二日間を宿にこもって過ごした。
「……会場に向かおう」
ルフォンたちはフードを深くかぶって顔を隠す。
誰に見られたところで構わないのだけど目立たぬようにはしておく。
他にもバレたくない人がいるのか似たような出立ちの人がいるので仮に何か行動を起こすとしてもルフォンたちだとはバレないだろう。
コロシアムは異様な雰囲気であった。
指定された席に着いたが、耳が痛くなるほどのざわつきと戦いと血を求める興奮した目をした大人たちの集まりは熱気よりも狂気に近い異常さがある。
「始まるのかな」
今か今かと待っているとコロシアムの真ん中にある闘技場ステージの上に一人の女性が出てきた。
黒いウサギのお面を付けたその人は黒い筒のような物を持っていた。
「さーて、それでは第二ステージの方に参りたいと思いますが準備はよろしいですかー?」
黒うさぎの司会が筒に向けて話すとコロシアムのあちこちに取り付けられた大きな筒から声が出てくる。
いわゆるマイクとスピーカーだが、この世界ではそれを魔道具として作り出したものだった。
早く始めろ!と罵声が飛ぶ。
ステージの声がスピーカーから聞こえてくることやこんな魔道具をどうやって用意したかなんて周りの人は気にしていない。
とっとと大会を始めることの方がみんなにとっては大切なことだった。
この雰囲気を三人はとても好きになれそうになかった。
「第一ステージを生き残ったのは百五十八名の挑戦者の皆様でーす。この第二ステージで挑戦していただくのはダンジョンバトルです!」
黒うさぎの司会はステージを大きく使って各方向を向きながら罵声もなんのその視界を続ける。
「ダンジョンといっても本当にダンジョンを攻略するのではありません!この町の地下には巨大な地下空間があるのはご存じでしょうか? 知らなくても大丈夫ですが、ダンジョンとも呼べるほどに広いこの地下空間を使って参加者をさらに絞ります!」
黒うさぎの司会の声は高めで今の状況で聞いていると少しイラっとするとラストは思った。
「ルールは簡単です。参加者の手首には腕輪が付けられていまして、それには一つの石がついています。それを十個集めるだけ! いくつ集めても構いませんが十個集められなかったら失格となります。どうやって集めるかって? それはお願いでもしてみればいいんじゃないでしょうか?」
ルフォンたちは苦い顔をする。
要するに自分たち以外の奴隷を殺して石を奪えと言っているのだ。
黒うさぎの司会の白々しい言い方に石でも投げたくなる。
「ただしもう一つ、石がなくてもクリアと見なされる条件もございます。やっさしー私たちは地下空間のどこかに魔物をご用意しました! もし魔物を倒すことができましたら、石が十個なくても次のステージに進むことができちゃいます! 二つも条件があるなんて太っ腹!」
黒うさぎの司会が可愛らしくポーズを取る。
「えっ? どうやってみんなが勝ち上がってくるかみたいですって? そりゃあもちろん見ることもできます。こちらをご覧くださーい!」
黒うさぎの司会がパッと手を上げる。
すると闘技場を囲むように白い布が上から降りてくる。
闘技場を囲むように天井から吊るされている真っ白な巨大な布がなんなのか会場がざわつく。
「つい先日およそ500年前の遺物が大量に発掘されました。それは魔道具でありまして、なんと離れたところの光景を映し出すことができるものでした! 元々は偵察や監視を行うための魔道具だったみたいですが、私たちはそんな魔道具を手に入れることにせいこーしたのでーす!」
黒うさぎの司会が何を言いたいのか理解している人は少ない。
その魔道具がどうしたのだとざわつきが大きくなる。
「んー、実際に見ていただいた方が早いでしょうね。じゃん!」
白い布に囲まれてしまって見えないステージの上で黒うさぎの司会はポーズをとる。
コロシアムの中を照らしていた明かりが次々と消えて行く。
そして真っ暗になったコロシアムの中でパッと白い布に映像が映し出された。
「リューちゃん!」
ボヤけたり、ブレたりしている映像が布に映し出された。
安定しないで次々と移り変わって行くような映像が段々と鮮明に見え始めた。
別々の人が映し出されるその映像の中の1人に一瞬だけどリュードの姿があった。
ルフォンはそれを見逃さなかった。
「全てを同時にお見せすることはできませんがこちらの魔道具を使いまして、良いシーンをみなさまにお見せしたいと思います。いかがでしょう!」
ワッと会場が湧く。
すごい技術だと先ほどまで殺気立っていた人たちもほめそやす。
これまでなかったやり方と競技内容に興奮を隠しきれない観客たちだがルフォンは本当に一瞬だけ映った光景に釘付けになっていた。
リュードはどこか狭い洞窟のようなところにいるようにルフォンの目には見えた。
「どこにいるの……リューちゃん」
姿は見えた。
なのに目の前にはいない。
手が届きそうで届かない。
胸に広がるもどかしさが苦しくて、もう一度リュードが移らないかとルフォンは映像に目を凝らした。