「まずは人攫いの方から。他にそのような集団や組織がないか探しましたが人攫いをやっている者は見つかりませんでした。やはり以前にお伝えした者たちが人攫いで間違いなかったようです。その後、ですが劇場の火事により生き残ったものはいないようです」
ミュリウォの表情が暗くなる。
直接ルフォンたちがトドメを刺した人はおらず殺してはいないのだが、戦闘不能にしたために逃げられず劇場の火事でなくなった。
間接的には殺したも同然であり、その重たさにミュリウォは胸が苦しくなった。
ルフォンやラストも何も感じないわけではないが戦いになる以上殺してしまうこともあるし、手加減をしていても後に死んでしまうこともある。
命を奪うことに抵抗がないのではないが、人攫いという重罪を犯してその金を笑って数える連中は殺してはいけない人でなかったので心のどこかでは割り切っていた。
ルフォンも旅をしてきて命を奪うことの必要性を知っているし、ラストも自分を守るためなら時に非情になる必要があると分かっている。
何より、どんな命もリュードには替えられない。
「過程でなぜか我々の諜報員が殺害されましたので劇場を燃やした犯人も追っております」
直接人攫いにトドメを刺し、劇場を燃やした犯人はルフォンたちでなく別にいる。
人攫いたちは軽い気持ちで人攫いをやっていたのかもしれないけれど、貴族は簡単な相手ではなく人攫いを依頼するような貴族はおそらく口封じすらためらいがない。
相手はどうやってか情報ギルドが周りにいたことを察知して諜報員まで消して逃げた。
そのことによってサドゥパガンは非常に怒っていた。
サドゥパガンの諜報員に手を出した者には報いを受けてもらう。
依頼とは関係なく劇場を燃やした犯人をサドゥパガンの方で追いかけていた。
「そして大会に出場させられている奴隷の調査も進みました」
ピクリとルフォンが反応する。
もしここにリュードがいなければまた一から探し直さなきゃいけない。
奴隷の大会になんていてと言えないが、そこにリュードがいてくれたらと思う。
「事前にお伝えいただきました特徴に一致する奴隷の男性が一名、いらっしゃいます」
ルフォンとラストは顔を見合わせる。
「本当ですか!?」
「リュ、リュード、いたの!?」
「お名前は公表されてませんので確認できませんが黒いツノのある男性がお一方だけ奴隷の中にいらっしゃいます。予選回であるバトルロイヤルを生き抜きまして、次のステージに進まれております。トーイさんの方はそれらしきものが数名いらっしゃいました。次に進まれた方はお二方のみです。もう少し調査を進めねば確実なことは何も言えません」
「そ、そうですか……」
ミュリウォは希望があるだけマシだけど喜びきれない。
特にトーイは地味な方の見た目をしている。
ほとんどが真人族の奴隷の中ではトーイは個性的ではなく見つけづらい。
簡単な特徴だけあげると似ている人がいるのも当然の話となる。
ただバトルロイヤルと聞いてミュリウォは軽く絶望した。
トーイは全く戦うことと無縁の人物であるからだ。
希望を持ちたいけれどトーイかも分からない人が二人だけ生き残ったと聞いても希望を持ちきれなかった。
ルフォンたちも下手に希望を持たせる発言ができない。
「ご自分の目で確かめたいでしょうからこちらも入手いたしました」
諜報員の女性はテーブルに三枚の紙を置いた。
「こちらが貴族の大会を観覧するために必要なチケットになります。チケットがあれば中に入って大会の様子を確認できます。リュード様やトーイ様と思われる方をご自分でお確かめください」
「これで……」
「次のステージは二日後から始まると聞いています。会場は町の真ん中に見えるコロシアムです」
チケットを見ると座席番号が書いてある。
三つ並んだ席をわざわざ探して用意してくれたみたいだ。
「こちらが今回の報告書でございます。もう少し調査は続けますがほとんどこれで確定となると思われます」
「分かりました。色々とありがとうございます」
「それでは失礼します。何かありましたら宿の主人に言ってくださればそちらもサドゥパガンに繋がっておりますので」
最後まで一度も笑うこともなく諜報員の女性は報告をして部屋を出て行った。
諜報員の女性が出て行くとルフォンはニッコリ笑ってルフォンに抱きついた。
「やったじゃん、ルフォン! リュード、みっかったよ!」
「ま、まだ分からないよ……それに見付けても助けなきゃいけないし」
「んもう、嬉しいくせにー!」
口ではそう言うがルフォンの尻尾は期待に揺れている。
リュードともうすぐ会えるという喜びに勝手に尻尾が振られてしまうのだ。
「いいなぁ……」
「はっ……そ、そんな顔しないでよ!」
「そうだよ、まだ分からないよ!」
テンションの上がったラストに押されてすっかり一瞬トーイのことを忘れていた。
トーイについては可能性がリュードよりもはるかに低くて素直に喜べる二人が羨ましいとミュリウォは思った。
慌ててミュリウォを励ますがどの言葉を選んでも嫌味のようになってしまう可能性があって結局は黙っているしかなかった。
ーーーーー
ミュリウォの表情が暗くなる。
直接ルフォンたちがトドメを刺した人はおらず殺してはいないのだが、戦闘不能にしたために逃げられず劇場の火事でなくなった。
間接的には殺したも同然であり、その重たさにミュリウォは胸が苦しくなった。
ルフォンやラストも何も感じないわけではないが戦いになる以上殺してしまうこともあるし、手加減をしていても後に死んでしまうこともある。
命を奪うことに抵抗がないのではないが、人攫いという重罪を犯してその金を笑って数える連中は殺してはいけない人でなかったので心のどこかでは割り切っていた。
ルフォンも旅をしてきて命を奪うことの必要性を知っているし、ラストも自分を守るためなら時に非情になる必要があると分かっている。
何より、どんな命もリュードには替えられない。
「過程でなぜか我々の諜報員が殺害されましたので劇場を燃やした犯人も追っております」
直接人攫いにトドメを刺し、劇場を燃やした犯人はルフォンたちでなく別にいる。
人攫いたちは軽い気持ちで人攫いをやっていたのかもしれないけれど、貴族は簡単な相手ではなく人攫いを依頼するような貴族はおそらく口封じすらためらいがない。
相手はどうやってか情報ギルドが周りにいたことを察知して諜報員まで消して逃げた。
そのことによってサドゥパガンは非常に怒っていた。
サドゥパガンの諜報員に手を出した者には報いを受けてもらう。
依頼とは関係なく劇場を燃やした犯人をサドゥパガンの方で追いかけていた。
「そして大会に出場させられている奴隷の調査も進みました」
ピクリとルフォンが反応する。
もしここにリュードがいなければまた一から探し直さなきゃいけない。
奴隷の大会になんていてと言えないが、そこにリュードがいてくれたらと思う。
「事前にお伝えいただきました特徴に一致する奴隷の男性が一名、いらっしゃいます」
ルフォンとラストは顔を見合わせる。
「本当ですか!?」
「リュ、リュード、いたの!?」
「お名前は公表されてませんので確認できませんが黒いツノのある男性がお一方だけ奴隷の中にいらっしゃいます。予選回であるバトルロイヤルを生き抜きまして、次のステージに進まれております。トーイさんの方はそれらしきものが数名いらっしゃいました。次に進まれた方はお二方のみです。もう少し調査を進めねば確実なことは何も言えません」
「そ、そうですか……」
ミュリウォは希望があるだけマシだけど喜びきれない。
特にトーイは地味な方の見た目をしている。
ほとんどが真人族の奴隷の中ではトーイは個性的ではなく見つけづらい。
簡単な特徴だけあげると似ている人がいるのも当然の話となる。
ただバトルロイヤルと聞いてミュリウォは軽く絶望した。
トーイは全く戦うことと無縁の人物であるからだ。
希望を持ちたいけれどトーイかも分からない人が二人だけ生き残ったと聞いても希望を持ちきれなかった。
ルフォンたちも下手に希望を持たせる発言ができない。
「ご自分の目で確かめたいでしょうからこちらも入手いたしました」
諜報員の女性はテーブルに三枚の紙を置いた。
「こちらが貴族の大会を観覧するために必要なチケットになります。チケットがあれば中に入って大会の様子を確認できます。リュード様やトーイ様と思われる方をご自分でお確かめください」
「これで……」
「次のステージは二日後から始まると聞いています。会場は町の真ん中に見えるコロシアムです」
チケットを見ると座席番号が書いてある。
三つ並んだ席をわざわざ探して用意してくれたみたいだ。
「こちらが今回の報告書でございます。もう少し調査は続けますがほとんどこれで確定となると思われます」
「分かりました。色々とありがとうございます」
「それでは失礼します。何かありましたら宿の主人に言ってくださればそちらもサドゥパガンに繋がっておりますので」
最後まで一度も笑うこともなく諜報員の女性は報告をして部屋を出て行った。
諜報員の女性が出て行くとルフォンはニッコリ笑ってルフォンに抱きついた。
「やったじゃん、ルフォン! リュード、みっかったよ!」
「ま、まだ分からないよ……それに見付けても助けなきゃいけないし」
「んもう、嬉しいくせにー!」
口ではそう言うがルフォンの尻尾は期待に揺れている。
リュードともうすぐ会えるという喜びに勝手に尻尾が振られてしまうのだ。
「いいなぁ……」
「はっ……そ、そんな顔しないでよ!」
「そうだよ、まだ分からないよ!」
テンションの上がったラストに押されてすっかり一瞬トーイのことを忘れていた。
トーイについては可能性がリュードよりもはるかに低くて素直に喜べる二人が羨ましいとミュリウォは思った。
慌ててミュリウォを励ますがどの言葉を選んでも嫌味のようになってしまう可能性があって結局は黙っているしかなかった。
ーーーーー