「ちょっといいですか?」
「なんだい?」
「情報屋さんがどこにいるか知らない?」
「……知らないね」
ジッとギルドの中を見ていたルフォンは酒場の隅に座る年配の女性に声をかけた。
当たりだとルフォンは思った。
流石に一発ではなく三人目でようやくの当たりてあるが、前の二人は怪訝そうな目でルフォンを見たり鼻で笑ったりされた。
どちらの人にしても情報屋なんか知らないか、知っていてもろくな情報屋しか知らないだろう。
対して年配女性は何の反応もないように装っているが何の反応もないように見せていることが逆に怪しい。
昼間のギルドの隅で気配を消してジッと一杯のお酒を飲み続けているのも何かの事情がある。
この女性が情報屋だとルフォンはそう思った。
ルフォンたちはトゥジュームの首都を訪れていた。
冒険者ギルドでは情報を得られないし、聞いたところで噂程度では話にならない。
そこでここは一つ情報のプロを頼ってみようと考えた。
金さえ払えば情報屋はどんな情報でも教えてくれる。
表で言えないことでも情報屋ならば手にれられる可能性が大きい。
大都市であれば大体情報を商品として扱う情報屋が一つはあるものだ。
大っぴらに店舗を構えているものでないのが情報屋というものなのでまず探すことから始めなければならない。
情報屋がいる場所は知らなきゃ辿り着けないが店に行く以外にも大きな情報屋ならアクセスできるところもある。
多くの場合冒険者ギルド周辺に一つはそうした情報屋がらみの人がいて、情報収集も兼ねた窓口があるはずだとルフォンはリュードから聞いていたのだ。
これまでは情報屋を利用する必要性がなかった。
なのでルフォンも手探りで探していたが、冒険者とはまた違う雰囲気をまとう年配の女性が情報屋だと確信して目の前に座る。
「今すぐ情報が欲しいの」
テーブルの上に金貨を一枚を置く。
口をつけかけていたジョッキから口を離して驚きの視線をルフォンに向ける。
金貨といえば日常じゃほとんど使われない高額貨幣である。
今日一日これで全員にお酒を奢ると言っても足りる可能性があるぐらいの金額である。
「……何のことか分からないね。そんなもの人に見られると危ないからしまいな」
「トゥジュームの貴族がやっている大会について知りたいな」
もう一枚金貨を上乗せする。
前に冒険者ギルドでやったのと同じやり方だが金額が違う。
ルフォンは交渉事が得意ではない。
相手が情報をくれてやると言うなら言い値を払うつもりだし条件があるなら飲むつもりもある。
仮に騙したのなら今のルフォンはそれを許すことはないし、お金を奪って逃げるとしてもルフォンから逃げ切れる人はそう多くはない。
金貨を見せられて動揺もしない人は多くない。
何の関係もない人でも嘘を並べ立ててでも金貨を欲するだろうに年配の女性はわずかな動揺を見せただけで金貨に対して欲を見せてこない。
商売人の香りがするとルフォンは感じた。
大きな金額に手を出さないあたりに情報屋であるという確信が深まる。
「もうそこでやめな」
もう一枚をさらに重ねたところで年配の女性がルフォンを止める。
年配の女性は正直なところ内心では迷っていた。
金額にではなく、こんな金額を出せるルフォンという人物が分からなくて迷った。
今テーブルに乗せられているものだけでもポンと出せる金額ではない。
これほどの金額を出して、まだ出してくるような気配まであった。
雰囲気的にこの国の人間ではなさそうだとは思っていた。
素性の分からない相手に関わるのはリスクが多い。
ただ金の力はバカにならない。
大きな金額を出せるだけで汚い仕事をやる人を雇うこともできる。
これだけの金額を出せる相手を誤魔化してのちに問題にならないとも限らない。
関わるべきか、完全に否定してしまうべきか。
下手すると情報屋全体が危機に晒されてしまうかもしれない、そんなことを考えていた。
言葉少なに金を積んで圧力をかけてくるルフォンは只者ではない雰囲気をまとっている。
リュードを助けたいという覚悟がルフォンにいつもにはないような威圧感をまとわせているのだ。
「…………分かった。場所を変えるよ」
金貨が積まれていく異常な光景。
昼間、冒険者ギルドの隅で行われていることなので周りに気づかれておらず注目されていないが、一度見つかると視線が集まってしまう。
この若い女性を動かしているのは何なのかと年配の女性は気になった。
「……あんたの仲間かい?」
「はい」
「そうかい。付いてきな」
年配の女性について冒険者ギルドを出るとラストとミュリウォがいた。
三人で冒険者ギルドの中をうろついていると目立ってしまうのでルフォンだけで情報屋を探していたのだ。
見つけたのかという二人の視線にルフォンはうなずき返す。
ルフォンは情報屋についていき、ラストとミュリウォはルフォンについていく。
冒険者ギルドからそう遠くない酒場の奥にある執務室のような小部屋に年配の女性はルフォンたちを連れてきた。
正面には大きなデスクがあって、壁には地図が貼ってある。
けれど窓もない部屋には一つの出入り口からしかアクセスできないようになっている。
年配の女性はマントをかけてそのままデスクの椅子に座る。
「なんだい?」
「情報屋さんがどこにいるか知らない?」
「……知らないね」
ジッとギルドの中を見ていたルフォンは酒場の隅に座る年配の女性に声をかけた。
当たりだとルフォンは思った。
流石に一発ではなく三人目でようやくの当たりてあるが、前の二人は怪訝そうな目でルフォンを見たり鼻で笑ったりされた。
どちらの人にしても情報屋なんか知らないか、知っていてもろくな情報屋しか知らないだろう。
対して年配女性は何の反応もないように装っているが何の反応もないように見せていることが逆に怪しい。
昼間のギルドの隅で気配を消してジッと一杯のお酒を飲み続けているのも何かの事情がある。
この女性が情報屋だとルフォンはそう思った。
ルフォンたちはトゥジュームの首都を訪れていた。
冒険者ギルドでは情報を得られないし、聞いたところで噂程度では話にならない。
そこでここは一つ情報のプロを頼ってみようと考えた。
金さえ払えば情報屋はどんな情報でも教えてくれる。
表で言えないことでも情報屋ならば手にれられる可能性が大きい。
大都市であれば大体情報を商品として扱う情報屋が一つはあるものだ。
大っぴらに店舗を構えているものでないのが情報屋というものなのでまず探すことから始めなければならない。
情報屋がいる場所は知らなきゃ辿り着けないが店に行く以外にも大きな情報屋ならアクセスできるところもある。
多くの場合冒険者ギルド周辺に一つはそうした情報屋がらみの人がいて、情報収集も兼ねた窓口があるはずだとルフォンはリュードから聞いていたのだ。
これまでは情報屋を利用する必要性がなかった。
なのでルフォンも手探りで探していたが、冒険者とはまた違う雰囲気をまとう年配の女性が情報屋だと確信して目の前に座る。
「今すぐ情報が欲しいの」
テーブルの上に金貨を一枚を置く。
口をつけかけていたジョッキから口を離して驚きの視線をルフォンに向ける。
金貨といえば日常じゃほとんど使われない高額貨幣である。
今日一日これで全員にお酒を奢ると言っても足りる可能性があるぐらいの金額である。
「……何のことか分からないね。そんなもの人に見られると危ないからしまいな」
「トゥジュームの貴族がやっている大会について知りたいな」
もう一枚金貨を上乗せする。
前に冒険者ギルドでやったのと同じやり方だが金額が違う。
ルフォンは交渉事が得意ではない。
相手が情報をくれてやると言うなら言い値を払うつもりだし条件があるなら飲むつもりもある。
仮に騙したのなら今のルフォンはそれを許すことはないし、お金を奪って逃げるとしてもルフォンから逃げ切れる人はそう多くはない。
金貨を見せられて動揺もしない人は多くない。
何の関係もない人でも嘘を並べ立ててでも金貨を欲するだろうに年配の女性はわずかな動揺を見せただけで金貨に対して欲を見せてこない。
商売人の香りがするとルフォンは感じた。
大きな金額に手を出さないあたりに情報屋であるという確信が深まる。
「もうそこでやめな」
もう一枚をさらに重ねたところで年配の女性がルフォンを止める。
年配の女性は正直なところ内心では迷っていた。
金額にではなく、こんな金額を出せるルフォンという人物が分からなくて迷った。
今テーブルに乗せられているものだけでもポンと出せる金額ではない。
これほどの金額を出して、まだ出してくるような気配まであった。
雰囲気的にこの国の人間ではなさそうだとは思っていた。
素性の分からない相手に関わるのはリスクが多い。
ただ金の力はバカにならない。
大きな金額を出せるだけで汚い仕事をやる人を雇うこともできる。
これだけの金額を出せる相手を誤魔化してのちに問題にならないとも限らない。
関わるべきか、完全に否定してしまうべきか。
下手すると情報屋全体が危機に晒されてしまうかもしれない、そんなことを考えていた。
言葉少なに金を積んで圧力をかけてくるルフォンは只者ではない雰囲気をまとっている。
リュードを助けたいという覚悟がルフォンにいつもにはないような威圧感をまとわせているのだ。
「…………分かった。場所を変えるよ」
金貨が積まれていく異常な光景。
昼間、冒険者ギルドの隅で行われていることなので周りに気づかれておらず注目されていないが、一度見つかると視線が集まってしまう。
この若い女性を動かしているのは何なのかと年配の女性は気になった。
「……あんたの仲間かい?」
「はい」
「そうかい。付いてきな」
年配の女性について冒険者ギルドを出るとラストとミュリウォがいた。
三人で冒険者ギルドの中をうろついていると目立ってしまうのでルフォンだけで情報屋を探していたのだ。
見つけたのかという二人の視線にルフォンはうなずき返す。
ルフォンは情報屋についていき、ラストとミュリウォはルフォンについていく。
冒険者ギルドからそう遠くない酒場の奥にある執務室のような小部屋に年配の女性はルフォンたちを連れてきた。
正面には大きなデスクがあって、壁には地図が貼ってある。
けれど窓もない部屋には一つの出入り口からしかアクセスできないようになっている。
年配の女性はマントをかけてそのままデスクの椅子に座る。