まだ暑さを残してはいるけど大分過ごしやすくなり季節の変わり目であることを感じさせる。
気温的な暑さは落ち着きを見せてくるが村は色めき立ってみんなの中の熱は高まってきている。
村一番のイベント、力比べが近づいているからだ。
出場者はさらに自分を追い込み、大工は会場設営をしたり狩りをする者たちでその付近の魔物狩りも行われている。
こうして討伐した魔物は行商に売りに出される。
そして代わりに大量の食料を持ってきて、それを元にして女性たちなど料理を担当する人たちが何をどれぐらい作るとか力比べ後の宴会の料理とかを考えている。
リュードも力比べ前とあってウォーケックとの訓練はやめてそれぞれ個人で力比べに向けて最終調整を行なっていた。
ウォーケックといえばルフォンを思い出すのだけど告白の日以来リュードとルフォンは疎遠になっている。
朝の鍛錬を見学に来ることもなくなった。
お隣さんが故に顔を合わすことはあっても今までのように寄ってくることはなくなって、すれ違うだけになっている。
ウォーケックに殺されるんじゃないかと思った時もあったけどウォーケックには多少思うところはあった。
何かを察したようにルフォンのことには何も触れず態度もほとんど変わらなかった。
もしかしたらルーミオラが何か言ったのかもしれない。
むしろ関係のない周りの方がざわついていた。
リュードとルフォンが激しく喧嘩してルフォンに愛想つかされただの、リュードがルフォンに引っ付かれるのが嫌になっただのと村の噂となった。
リュードはあまり知らなかったことだけどこれを好機とばかりにルフォンにモーションをかけた男どもがいた。
だけどルフォンは相当ピリついていて一切歯牙にも掛けなかった。
急に間ができてしまった子供リュード自身も寂しくはあるがリュード離れをする機会だったのだと思えば娘が離れていく父親の気分がこうなのかもと考えたりしていた。
いつもならニヤニヤと何か言ってきそうなメーリエッヒも何も言ってこない。
不気味さすら感じずにはいられないけど何を言ったらいいものかわからない。
まだ村を出ていくつもりなことも伝えていないからリュードにとっては困ったものでもあるがありがたくもあった。
メーリエッヒは昼間はどこか行っているようで気になっているのだが下手に聞くと藪蛇になりかねないので聞くに聞けなかった。
そうした思春期が抱える複雑な感情と状況の中で日々は瞬く間に過ぎていって力比べ当日となった。
村から人が消えて力比べ会場は出る人と観る人でごった返す。
すでに炊き出しは始まっていて子供たちも普段は食べられないような料理に食らいついている。
リュードもその光景を見て自分もああした一員だったことを思えば感慨深いものである。
今年も村長が大人部門の男で優勝、リュードの母メーリエッヒとルフォンの母ルーミオラが競り合うとみられている中で子供部門のリュードやルフォン、テユノも注目株とされていた。
まず始まったのは女の子の子供部門だった。
そもそもテユノとルフォンは13歳や14歳の時でもう15歳の子が勝てなかったのだから15歳になった今敵う相手もいるはずもない。
そしてくじ運が良いのか悪いのか2人は決勝で相見えるトーナメントになった。
順当にルフォンとテユノは勝ち進み、決勝を迎えた。
テユノは変わらず短槍を、ルフォンはそれまでの小さめのナイフよりも一回りほど大きい二振りのナイフを武器として向かい合いう。
2人の間には火花が散っているのが見えるようでとても殺気立っている。
開始の合図とともに飛び出したのはルフォン。
魔法も使わず魔人化もしていないというのに弾丸のような速さでテユノの懐まで入り込んだ。
最終的にはこの初動が勝負の分かれ目だった思う。
怒涛の攻めだった。
リュードも初めて見るような表情でルフォンはテユノに切りかかった。
「クッ……！」
「私は……負けない！」
テユノも何とか防ぎつつ体勢を立て直そうとはしていたけれどルフォンはそれを許さず、速さでもってテユノを翻弄し手数でガンガンと押していった。
ルフォンの攻勢は最後まで止むことがなく最初から最後までテユノに反撃の隙を与えることない。
先に隙が出来たのはテユノ。
攻めに苦しんで呼吸のタイミングがズレてしまった。
ほんの一瞬の隙をついてテユノの腹にナイフを入れ、全身を切り裂くようにナイフを振るった。
ルフォンの勝利を示す赤札が４つ上げられ、審判が停めてようやくルフォンは戦うことをやめた。
みんなは凄い凄いと囃し立てるけどリュードは勝ってもニコリともしなかったことが気になった。
「ルフォン……強くなったな」
ルフォンらしからぬ過激な戦いであったがテユノにつけ入る隙を与えない素晴らしい戦いだった。
テユノは悔しさに泣きながら退場していた。
「俺も負けていられないな」
女の子の子供部門が終わったということは次はリュードが出る男の子の子供部門である。
正直リュードも子供部門は予選会ぐらいにしか考えていない。
実際に他の子供たちもリュードの敵ではなかった。
唯一１５歳同い年の竜人族のコウルという青年はリュード相手に多少善戦した。
それでもまだまだリュードの方が圧倒的で難なく子供部門は優勝することができた。
大きな怪我もなく体力の消耗も少ない。
盛り上がりにこそ欠けたかもしれないけど大人部門を見据えているリュードとしてはホッと胸をなでおろした。
気温的な暑さは落ち着きを見せてくるが村は色めき立ってみんなの中の熱は高まってきている。
村一番のイベント、力比べが近づいているからだ。
出場者はさらに自分を追い込み、大工は会場設営をしたり狩りをする者たちでその付近の魔物狩りも行われている。
こうして討伐した魔物は行商に売りに出される。
そして代わりに大量の食料を持ってきて、それを元にして女性たちなど料理を担当する人たちが何をどれぐらい作るとか力比べ後の宴会の料理とかを考えている。
リュードも力比べ前とあってウォーケックとの訓練はやめてそれぞれ個人で力比べに向けて最終調整を行なっていた。
ウォーケックといえばルフォンを思い出すのだけど告白の日以来リュードとルフォンは疎遠になっている。
朝の鍛錬を見学に来ることもなくなった。
お隣さんが故に顔を合わすことはあっても今までのように寄ってくることはなくなって、すれ違うだけになっている。
ウォーケックに殺されるんじゃないかと思った時もあったけどウォーケックには多少思うところはあった。
何かを察したようにルフォンのことには何も触れず態度もほとんど変わらなかった。
もしかしたらルーミオラが何か言ったのかもしれない。
むしろ関係のない周りの方がざわついていた。
リュードとルフォンが激しく喧嘩してルフォンに愛想つかされただの、リュードがルフォンに引っ付かれるのが嫌になっただのと村の噂となった。
リュードはあまり知らなかったことだけどこれを好機とばかりにルフォンにモーションをかけた男どもがいた。
だけどルフォンは相当ピリついていて一切歯牙にも掛けなかった。
急に間ができてしまった子供リュード自身も寂しくはあるがリュード離れをする機会だったのだと思えば娘が離れていく父親の気分がこうなのかもと考えたりしていた。
いつもならニヤニヤと何か言ってきそうなメーリエッヒも何も言ってこない。
不気味さすら感じずにはいられないけど何を言ったらいいものかわからない。
まだ村を出ていくつもりなことも伝えていないからリュードにとっては困ったものでもあるがありがたくもあった。
メーリエッヒは昼間はどこか行っているようで気になっているのだが下手に聞くと藪蛇になりかねないので聞くに聞けなかった。
そうした思春期が抱える複雑な感情と状況の中で日々は瞬く間に過ぎていって力比べ当日となった。
村から人が消えて力比べ会場は出る人と観る人でごった返す。
すでに炊き出しは始まっていて子供たちも普段は食べられないような料理に食らいついている。
リュードもその光景を見て自分もああした一員だったことを思えば感慨深いものである。
今年も村長が大人部門の男で優勝、リュードの母メーリエッヒとルフォンの母ルーミオラが競り合うとみられている中で子供部門のリュードやルフォン、テユノも注目株とされていた。
まず始まったのは女の子の子供部門だった。
そもそもテユノとルフォンは13歳や14歳の時でもう15歳の子が勝てなかったのだから15歳になった今敵う相手もいるはずもない。
そしてくじ運が良いのか悪いのか2人は決勝で相見えるトーナメントになった。
順当にルフォンとテユノは勝ち進み、決勝を迎えた。
テユノは変わらず短槍を、ルフォンはそれまでの小さめのナイフよりも一回りほど大きい二振りのナイフを武器として向かい合いう。
2人の間には火花が散っているのが見えるようでとても殺気立っている。
開始の合図とともに飛び出したのはルフォン。
魔法も使わず魔人化もしていないというのに弾丸のような速さでテユノの懐まで入り込んだ。
最終的にはこの初動が勝負の分かれ目だった思う。
怒涛の攻めだった。
リュードも初めて見るような表情でルフォンはテユノに切りかかった。
「クッ……！」
「私は……負けない！」
テユノも何とか防ぎつつ体勢を立て直そうとはしていたけれどルフォンはそれを許さず、速さでもってテユノを翻弄し手数でガンガンと押していった。
ルフォンの攻勢は最後まで止むことがなく最初から最後までテユノに反撃の隙を与えることない。
先に隙が出来たのはテユノ。
攻めに苦しんで呼吸のタイミングがズレてしまった。
ほんの一瞬の隙をついてテユノの腹にナイフを入れ、全身を切り裂くようにナイフを振るった。
ルフォンの勝利を示す赤札が４つ上げられ、審判が停めてようやくルフォンは戦うことをやめた。
みんなは凄い凄いと囃し立てるけどリュードは勝ってもニコリともしなかったことが気になった。
「ルフォン……強くなったな」
ルフォンらしからぬ過激な戦いであったがテユノにつけ入る隙を与えない素晴らしい戦いだった。
テユノは悔しさに泣きながら退場していた。
「俺も負けていられないな」
女の子の子供部門が終わったということは次はリュードが出る男の子の子供部門である。
正直リュードも子供部門は予選会ぐらいにしか考えていない。
実際に他の子供たちもリュードの敵ではなかった。
唯一１５歳同い年の竜人族のコウルという青年はリュード相手に多少善戦した。
それでもまだまだリュードの方が圧倒的で難なく子供部門は優勝することができた。
大きな怪我もなく体力の消耗も少ない。
盛り上がりにこそ欠けたかもしれないけど大人部門を見据えているリュードとしてはホッと胸をなでおろした。
