「連れて行きなさい」
「はっ!」
外に待機していた兵士たちが男を引きずって連れて行く。
己の立場を忘れるとどうなるのか、説明する前に見せつけられてしまう形になった。
見事なかませ犬にされた筋肉奴隷だった。
「さて、愚か者はいなくなりました。単刀直入に用件を申しましょう」
パンと手を叩いて場の空気を一度仕切り直してウバが話し始める。
もう口を出せる者はいない。
「私が誰なのかあなたたちにとってはどうでもよく、私もお伝えするつもりがありません。興味があるのは……自由! それだけでしょう?」
御大層なご高説の滑り出しとしては上々だとリュードは思う。
「私は奴隷を抱えるような趣味がありません。ならばなぜあなたたちを高い金も出して買ったのかと言いますと私には欲しいものがあるからです」
ならばそれを金でも出して買うといいとリュードは思わざるを得ない。
「自由と私の欲しいもののトレード。実にわかりやすいお話でしょう。私の望むものを持ってきたら奴隷全員を自由にして差し上げます。ついでに今後のために持ってきた人にはいくらかお金でも差し上げましょう」
「……あんたの欲しいものってのはなんなんだ。ここにいる全員パンツしか持ってないぜ」
奴隷の1人が当然の疑問を口にする。
自由と引き換えにできるようなものを持っている人はここにはいない。
「何も今引き渡せと言うのではありません。近く、奴隷たちを競わせる秘密の大会が開かれます。その優勝賞品、それが私の欲しいものです」
「……つまりその大会とやらで優勝すればいいのか?」
「その通りです。分かりやすくて宜しいでしょう?」
「その大会は何をする大会なんだ?」
「それは始まってみないことにはなんとも言えません」
なんだ、秘密の大会ってと根掘り葉掘り聞きたいところだけど目立ちたくないので疑問は思うだけに留めておく。
「どうですか? 優勝するだけでよいのですよ?」
どうですかと聞かれてもこの質問に選択肢なんて有って無いようなもの。
奴隷の身分で拒否権なんてあるはずもない。
奴隷に興味がないのに奴隷を買った理由はその大会のため。
それなのにやりませんと言って、はいそうですかとなるなんて思えるお気楽者はこの場にいなかった。
「反対の人もいないようなのでみなさんご参加ということで。早速大会の方に向かいましょうか」
沈黙を肯定と捉えてすぐさま移動を開始する。
まだここについて座ってすらいないと文句も言えず、リュードたちはまた馬車に逆戻りになった。
「お前たちはどうして奴隷になったんだ?」
先ほど率先してウバに質問をしていた真人族の男が早速口を開いた。
左目の上に小さな傷があり青色の髪を後ろで縛っている。
体つきも鍛えられていて、この国の男性っぽさがない。
質問する勇気もあるしリュードを見下すようにも見ていない。
奴隷の中ではまともな人に見えた。
「なに?」
「言いたかなけりゃいいんだけどよ。俺はちょっと背伸びをしたら依頼に失敗しちまってさ。魔物にやられて仲間もみんな失っちまった。しかもよ、依頼主がきったねえ奴で、契約書の内容が失敗した時は一人一人に賠償金を請求するって小さーく書いてあって、生き残った俺1人に全員分請求しやがった。それで借金を返せず奴隷行きさ」
この世界では奴隷という身分があるのだけど合法的な奴隷というものもある。
リュードやトーイのようないきなり人権を剥奪された奴隷だけでなく、借金や犯罪行為などによって奴隷身分にされる人が一定数いるのである。
主に借金で首が回らなくなった人が合法奴隷となるのだけど合法奴隷でも人権がないわけでない。
合法奴隷を非道な扱いをすると奴隷を管理している冒険者ギルドや商業ギルドから制裁を受けることになる。
「……俺たちは攫われて奴隷にさせられたんだ」
「はぁ? 今時そんなことする奴……いるんだろうな。あんたらがそうだってんなら」
人を攫って奴隷にすることは違法としている国も多い。
それほど世界が綺麗でないことは冒険者であった者なら誰でも分かっているけれど、そんなことをしている人がまだいることに驚きが隠せない。
「そりゃ……なんて言ったらいいか分からないな。自己紹介もまだだったな。俺はウロダ。大会が始まったら敵になるか味方になるかも分からないが今は同じ奴隷仲間だ、よろしく頼むよ」
「俺はシューナリュードだ、よろしく」
「ト、トーイと申します。よろしくお願いします」
「しっかし人攫いで奴隷ねぇ……例の大会とやらがあるからそんなことやってんのかね?」
「……なるほど、確かにそうかもしれないな」
ウロダのような合法奴隷がいるのに人攫いから違法な奴隷まで買う理由が腑に落ちる。
その大会のために奴隷が欲しかったのだと考えると理由が分からなくもない。
合法奴隷は大体の場合何かを失敗した人がなるものだから不安材料がある。
違法な奴隷はどんな人が保証はされないが優秀な人な可能性がある。
とりあえず色んな人を揃える意味で人攫いから奴隷を買ったのだろう。
そうまでして欲しい優勝賞品とはなんなのだろうかの疑問は解消されない。
「はっ!」
外に待機していた兵士たちが男を引きずって連れて行く。
己の立場を忘れるとどうなるのか、説明する前に見せつけられてしまう形になった。
見事なかませ犬にされた筋肉奴隷だった。
「さて、愚か者はいなくなりました。単刀直入に用件を申しましょう」
パンと手を叩いて場の空気を一度仕切り直してウバが話し始める。
もう口を出せる者はいない。
「私が誰なのかあなたたちにとってはどうでもよく、私もお伝えするつもりがありません。興味があるのは……自由! それだけでしょう?」
御大層なご高説の滑り出しとしては上々だとリュードは思う。
「私は奴隷を抱えるような趣味がありません。ならばなぜあなたたちを高い金も出して買ったのかと言いますと私には欲しいものがあるからです」
ならばそれを金でも出して買うといいとリュードは思わざるを得ない。
「自由と私の欲しいもののトレード。実にわかりやすいお話でしょう。私の望むものを持ってきたら奴隷全員を自由にして差し上げます。ついでに今後のために持ってきた人にはいくらかお金でも差し上げましょう」
「……あんたの欲しいものってのはなんなんだ。ここにいる全員パンツしか持ってないぜ」
奴隷の1人が当然の疑問を口にする。
自由と引き換えにできるようなものを持っている人はここにはいない。
「何も今引き渡せと言うのではありません。近く、奴隷たちを競わせる秘密の大会が開かれます。その優勝賞品、それが私の欲しいものです」
「……つまりその大会とやらで優勝すればいいのか?」
「その通りです。分かりやすくて宜しいでしょう?」
「その大会は何をする大会なんだ?」
「それは始まってみないことにはなんとも言えません」
なんだ、秘密の大会ってと根掘り葉掘り聞きたいところだけど目立ちたくないので疑問は思うだけに留めておく。
「どうですか? 優勝するだけでよいのですよ?」
どうですかと聞かれてもこの質問に選択肢なんて有って無いようなもの。
奴隷の身分で拒否権なんてあるはずもない。
奴隷に興味がないのに奴隷を買った理由はその大会のため。
それなのにやりませんと言って、はいそうですかとなるなんて思えるお気楽者はこの場にいなかった。
「反対の人もいないようなのでみなさんご参加ということで。早速大会の方に向かいましょうか」
沈黙を肯定と捉えてすぐさま移動を開始する。
まだここについて座ってすらいないと文句も言えず、リュードたちはまた馬車に逆戻りになった。
「お前たちはどうして奴隷になったんだ?」
先ほど率先してウバに質問をしていた真人族の男が早速口を開いた。
左目の上に小さな傷があり青色の髪を後ろで縛っている。
体つきも鍛えられていて、この国の男性っぽさがない。
質問する勇気もあるしリュードを見下すようにも見ていない。
奴隷の中ではまともな人に見えた。
「なに?」
「言いたかなけりゃいいんだけどよ。俺はちょっと背伸びをしたら依頼に失敗しちまってさ。魔物にやられて仲間もみんな失っちまった。しかもよ、依頼主がきったねえ奴で、契約書の内容が失敗した時は一人一人に賠償金を請求するって小さーく書いてあって、生き残った俺1人に全員分請求しやがった。それで借金を返せず奴隷行きさ」
この世界では奴隷という身分があるのだけど合法的な奴隷というものもある。
リュードやトーイのようないきなり人権を剥奪された奴隷だけでなく、借金や犯罪行為などによって奴隷身分にされる人が一定数いるのである。
主に借金で首が回らなくなった人が合法奴隷となるのだけど合法奴隷でも人権がないわけでない。
合法奴隷を非道な扱いをすると奴隷を管理している冒険者ギルドや商業ギルドから制裁を受けることになる。
「……俺たちは攫われて奴隷にさせられたんだ」
「はぁ? 今時そんなことする奴……いるんだろうな。あんたらがそうだってんなら」
人を攫って奴隷にすることは違法としている国も多い。
それほど世界が綺麗でないことは冒険者であった者なら誰でも分かっているけれど、そんなことをしている人がまだいることに驚きが隠せない。
「そりゃ……なんて言ったらいいか分からないな。自己紹介もまだだったな。俺はウロダ。大会が始まったら敵になるか味方になるかも分からないが今は同じ奴隷仲間だ、よろしく頼むよ」
「俺はシューナリュードだ、よろしく」
「ト、トーイと申します。よろしくお願いします」
「しっかし人攫いで奴隷ねぇ……例の大会とやらがあるからそんなことやってんのかね?」
「……なるほど、確かにそうかもしれないな」
ウロダのような合法奴隷がいるのに人攫いから違法な奴隷まで買う理由が腑に落ちる。
その大会のために奴隷が欲しかったのだと考えると理由が分からなくもない。
合法奴隷は大体の場合何かを失敗した人がなるものだから不安材料がある。
違法な奴隷はどんな人が保証はされないが優秀な人な可能性がある。
とりあえず色んな人を揃える意味で人攫いから奴隷を買ったのだろう。
そうまでして欲しい優勝賞品とはなんなのだろうかの疑問は解消されない。