「うげぇ〜、苦いぃぃぃ……」
リュード特製の万能解毒薬は色々な毒に効くようにと作ったものだった。
ポーションは苦味が出ないように苦心して作り上げていたが、解毒薬はとにかく色々な毒に効くように様々なものを混ぜているのでとても苦かった。
流石に苦味を抑えながら毒に効くところまでは持っていけなかった。
リュードがいなくなるという異常事態が発生した。
ラストが寝てしまったのはきっと毒か薬のせいだと勘づいたルフォンは苦味が強いので半ば気付け薬にもなる解毒薬をラストの口に遠慮なく流し込んだ。
苦味と青臭い草の臭いにラストは涙目で飛び上がった。
「ラストちゃん、大変だから目を覚ましてー!」
「ひふぁいよ、めふぉふぁまひたよー!」
ラストの頬を引っ張ってダメ押しで意識を覚醒させる。
「……いたいよぅ」
「大変なの!」
「何が大変なの?」
「リューちゃんがいなくなったの!」
「……へっ?」
ラストがキョロキョロと周りを見るとリュードの剣はテント手前で落ちている。
よほどのことがない限りリュードが自分の武器を手放してどこかにいくなんてあり得ない。
どこかにいくにしても剣を地面に捨ててはいかずちゃんと荷物と一緒にでもする。
ラストもそれは分かっているので明らかにおかしいと思った。
「そういえば……」
抗えない異常な眠気に襲われたことを思い出した。
まだ頭の奥がぼんやりとしてモヤがかったような気だるさがある。
ラストはふと、少し前に聞いた話を思い出した。
人攫いというと大体女性か子供が攫われるものだけどこの国の特殊性のために男性が誘拐される。
「まさかちょっと前に聞いた人攫いって……」
「うん、そうかもしれない」
ラストがその話に触れるとルフォンも同じ事を考えていた。
リュードは人攫いに誘拐された。
認めたくないが他にルフォンとラストを置いて跡形もなくいなくなる理由の説明がつかない。
どこかで倒れているぐらいのわずかな可能性を信じてルフォンとラストは周りも捜索した。
けれどリュードは見つからなかった。
「やっぱりいないね……」
人攫いもプロである程度のところまでは他の人がいたらしい痕跡らしきものが見つけられたが、途中でその痕跡も追えなくなってしまった。
ルフォンが起きてしまったので近くの痕跡までは消せなかったのだ。
「ど、どうしよ……リュード、どこ行っちゃんだろう……」
ラストはルフォンと違って自力で起きられなかった。
ルフォンも起きられたのはリュードのネックレスのおかげなのだけれど、もしルフォンまでそのまま起きなかったらと考えるとゾッとする。
ラストは突然の事件に思考が上手く働かない。
こんな大きなことが起きると困惑しながらもリュードがとりあえず引っ張ってくれていた。
今はリュードはいない。
こんなにリュードに頼り切りだったのかと少し悔しい思いがする。
ルフォンも起きたばかりの時は焦っていたがラストよりも早くに起きて時間が経っているし、少しだけ冷静になれていた。
どうしたらいいか分からないなりに考える。
リュードならどうする。
ラストよりも年上の自分がしっかりしなきゃいけないとルフォンは自分を奮い立たせる。
リュードの置かれている状況を考えるとここで延々と悩み続ける時間も惜しい。
きっとリュードは諦めない。
攫われた側なら諦めないで逃げ出そうとする。
攫われていない側なら諦めないで探そうとする。
ただ待っているだけじゃダメだ。
こちらからもリュードを探さなきゃいけない。
冷静になるにつれてリュードのことが頭を駆け巡る。
ルフォンが困ることはあっても、リュードが困ることは少ない。
「もし困ったリューちゃんを助けられたら……」
考えすぎたルフォンの思考はぶっ飛んだ。
もし困ったリュードを助けられたならきっとすごく褒めてくれるはずだ。
最近少し頭を撫でてくれる回数も減った。
ピンチはチャンスだと誰かが言っていた。
攫われたということはリュードは少なくとも生きているだろうと推測できる。
探し出して助けられるチャンスはまだ残されているのだ。
「大丈夫」
「ルフォン……」
「大丈夫だよ、リューちゃんだもん」
自分に言い聞かせるようにラストに声をかける。
「とりあえずリューちゃんを探そう」
リュードは死なない。
何があっても諦めない。
ならこちらも諦めないで探すのだ。
そしてこれはチャンスなのだと思うことにする。
『あの子がピンチになるなんて……まずないと思うけど、もし絶体絶命の危機に陥ってもあの子は死なないから。もしそうなったらチャンスだと思いなさい。助けてもらった経験少ないから助けてあげたらもうあなたの虜よ、虜』
なんだったら裏で糸を引いてピンチにしてやってもいいわよ、なんて言っていたことも思い出してしまった。
そんなことを言っていたのはリュードの母親のメーリエッヒである。
戦いや血痕なんかも見当たらないのでケガもしていないはずだ。
「この感じならリューちゃんも怪我なんかしてないはずだから」
ケガもなくきっと無事だと考えられる。
ラストもひとまずはリュードの無事を信じて冷静さを取り戻す。
心配と信頼とちょっとした邪な考えもありながら二人はリュードを探すことにして二人で夜を明かした。
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リュード特製の万能解毒薬は色々な毒に効くようにと作ったものだった。
ポーションは苦味が出ないように苦心して作り上げていたが、解毒薬はとにかく色々な毒に効くように様々なものを混ぜているのでとても苦かった。
流石に苦味を抑えながら毒に効くところまでは持っていけなかった。
リュードがいなくなるという異常事態が発生した。
ラストが寝てしまったのはきっと毒か薬のせいだと勘づいたルフォンは苦味が強いので半ば気付け薬にもなる解毒薬をラストの口に遠慮なく流し込んだ。
苦味と青臭い草の臭いにラストは涙目で飛び上がった。
「ラストちゃん、大変だから目を覚ましてー!」
「ひふぁいよ、めふぉふぁまひたよー!」
ラストの頬を引っ張ってダメ押しで意識を覚醒させる。
「……いたいよぅ」
「大変なの!」
「何が大変なの?」
「リューちゃんがいなくなったの!」
「……へっ?」
ラストがキョロキョロと周りを見るとリュードの剣はテント手前で落ちている。
よほどのことがない限りリュードが自分の武器を手放してどこかにいくなんてあり得ない。
どこかにいくにしても剣を地面に捨ててはいかずちゃんと荷物と一緒にでもする。
ラストもそれは分かっているので明らかにおかしいと思った。
「そういえば……」
抗えない異常な眠気に襲われたことを思い出した。
まだ頭の奥がぼんやりとしてモヤがかったような気だるさがある。
ラストはふと、少し前に聞いた話を思い出した。
人攫いというと大体女性か子供が攫われるものだけどこの国の特殊性のために男性が誘拐される。
「まさかちょっと前に聞いた人攫いって……」
「うん、そうかもしれない」
ラストがその話に触れるとルフォンも同じ事を考えていた。
リュードは人攫いに誘拐された。
認めたくないが他にルフォンとラストを置いて跡形もなくいなくなる理由の説明がつかない。
どこかで倒れているぐらいのわずかな可能性を信じてルフォンとラストは周りも捜索した。
けれどリュードは見つからなかった。
「やっぱりいないね……」
人攫いもプロである程度のところまでは他の人がいたらしい痕跡らしきものが見つけられたが、途中でその痕跡も追えなくなってしまった。
ルフォンが起きてしまったので近くの痕跡までは消せなかったのだ。
「ど、どうしよ……リュード、どこ行っちゃんだろう……」
ラストはルフォンと違って自力で起きられなかった。
ルフォンも起きられたのはリュードのネックレスのおかげなのだけれど、もしルフォンまでそのまま起きなかったらと考えるとゾッとする。
ラストは突然の事件に思考が上手く働かない。
こんな大きなことが起きると困惑しながらもリュードがとりあえず引っ張ってくれていた。
今はリュードはいない。
こんなにリュードに頼り切りだったのかと少し悔しい思いがする。
ルフォンも起きたばかりの時は焦っていたがラストよりも早くに起きて時間が経っているし、少しだけ冷静になれていた。
どうしたらいいか分からないなりに考える。
リュードならどうする。
ラストよりも年上の自分がしっかりしなきゃいけないとルフォンは自分を奮い立たせる。
リュードの置かれている状況を考えるとここで延々と悩み続ける時間も惜しい。
きっとリュードは諦めない。
攫われた側なら諦めないで逃げ出そうとする。
攫われていない側なら諦めないで探そうとする。
ただ待っているだけじゃダメだ。
こちらからもリュードを探さなきゃいけない。
冷静になるにつれてリュードのことが頭を駆け巡る。
ルフォンが困ることはあっても、リュードが困ることは少ない。
「もし困ったリューちゃんを助けられたら……」
考えすぎたルフォンの思考はぶっ飛んだ。
もし困ったリュードを助けられたならきっとすごく褒めてくれるはずだ。
最近少し頭を撫でてくれる回数も減った。
ピンチはチャンスだと誰かが言っていた。
攫われたということはリュードは少なくとも生きているだろうと推測できる。
探し出して助けられるチャンスはまだ残されているのだ。
「大丈夫」
「ルフォン……」
「大丈夫だよ、リューちゃんだもん」
自分に言い聞かせるようにラストに声をかける。
「とりあえずリューちゃんを探そう」
リュードは死なない。
何があっても諦めない。
ならこちらも諦めないで探すのだ。
そしてこれはチャンスなのだと思うことにする。
『あの子がピンチになるなんて……まずないと思うけど、もし絶体絶命の危機に陥ってもあの子は死なないから。もしそうなったらチャンスだと思いなさい。助けてもらった経験少ないから助けてあげたらもうあなたの虜よ、虜』
なんだったら裏で糸を引いてピンチにしてやってもいいわよ、なんて言っていたことも思い出してしまった。
そんなことを言っていたのはリュードの母親のメーリエッヒである。
戦いや血痕なんかも見当たらないのでケガもしていないはずだ。
「この感じならリューちゃんも怪我なんかしてないはずだから」
ケガもなくきっと無事だと考えられる。
ラストもひとまずはリュードの無事を信じて冷静さを取り戻す。
心配と信頼とちょっとした邪な考えもありながら二人はリュードを探すことにして二人で夜を明かした。
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