「いっくぞー!」
意気揚々と先頭を歩くラスト。
行く道を間違えているのでもないのでリュードとルフォンも大人しくついていく。
リュードたちはティアローザの国境付近までやってきていた。
グルリと大きく国の中を一周し、誘拐事件のために行ったり来たりしたティアローザも終わりだと思うと多少の感慨深さもある。
「ええと、出国ですね。…………ん?」
国境の関所を守る衛兵がラストの顔を見て首を傾げた。
末端の兵士なので王族のことなんてほとんど知らないのであるが、ラストをどこかで見たことがある気がしていた。
もしかしたら何かの行事の時にでも見たことがあるのかもしれない。
けれどこの国で血人族は別に珍しくもない。
どこで見たかも思い出すことができず衛兵はそのままラストたちを国の外に送り出した。
「じゃじゃーん、国外に脱出ー!」
ラストは見送りに来たのではない。
当然勝手についてきたのでもない。
自らの意思と目的を持ってリュードたちについてきていたのである。
ーーーーー
仕事もひと段落ついてのんびりとしていたところ、ラストは王城に呼び出された。
ついでにリュードとルフォンも呼び出された。
「わざわざ足労いただいてすまないな。今日君たちに来てもらったのは全てのことが終わり、お礼をしようと思っていたからだ」
実際まだやらねばならないことはあるが、リュードたちを拘束せねばならないようなことは終わった。
冒険者であり世界を自由に旅するリュードたちをいつまでも取り調べで縛り付けておくことは申し訳ない。
なので何か今回のことに関するお詫びとお礼をしてまた二人には自由に旅を続けてもらおうとヴァンは思っていた。
「黒重鉄なる金属を扱える職人を探していると聞いた」
お礼といえばお金であるけれどリュードたちがお金に興味が薄いことは事前に調べてある。
何か欲しいものでもないかと調べたかったけど周りに調べられそうな人もいないので本人に聞くほかはなかった。
そんな時にヴィッツからリュードたちが黒重鉄を扱える職人を探していることを聞いたのである。
「レストを助けてくれたお礼に職人を見つけたいと思ったのだがこの国も狭くはない。黒重鉄を扱えることをうたっている職人がいるのかもしれないが見つけるのは容易くはない」
全職人を一軒一軒回って黒重鉄を扱えるか聞いて調べていくことは非効率的である。
国内は未だ混乱の影響があって仕事は忙しく、人海戦術で探そうにも人手が割けない。
「時間もかかるし、もしかしたらいない可能性だってある。そこでどうだ、確実にいるところに行ってみる気はないか?」
「黒重鉄を扱える職人が確実にいるところですか?」
「そうだ。ドワーフの国に行ってみるつもりはないか?」
「ドワーフ……」
「ドワーフの国ならば黒重鉄を扱えるドワーフの職人も1人ぐらいはいるだろう」
「ですが、ドワーフといえばあのドワーフですよね?」
魔人族がいるこの世界ではドワーフが存在している。
真人族の分類上はドワーフも魔人族になるのだけどドワーフは自分たちはドワーフでありドワーフという種族なのだと主張する。
「そう、あのドワーフだ。閉鎖的で偏屈、他の種族を受け入れないドワーフだ」
そしてドワーフとは優れた鍛冶技術を持った種族なのである。
「俺の聞いたことがある話だと何のツテもなく行ったとしても国内に入れすらできないと聞きましたが」
「そうだな。だからドワーフの国ドワガルの前にはドワガルに入ることを諦められない人や商人を相手にする小さい集落まで存在する」
「それじゃあ……」
職人を探す探さない以前の問題である。
ドワーフは非常に閉鎖的で自分の気に入った者か昔から交流のある者しか受け入れない。
はるか昔はそんなことがなく、全ての鍛冶はドワーフから始まると言われるほどにドワーフが世界中の武器を作っていた。
みんながドワーフの武器を求め、ドワーフもそれに応えていたのでドワーフが持つ交流はとても多かった。
しかしドワーフを変えてしまったのは真魔大戦であった。
ドワーフは真魔大戦の時に微妙な立場に置かれた。
真人族からするとドワーフは魔人族だった。
けれどドワーフには魔人族とは違うのだというドワーフのプライドがあった。
魔人族側はドワーフの武器を作る技術が欲しくてドワーフを引き入れようとしたがドワーフは魔人族側につくことに抵抗があった。
ドワーフはあくまでも中立を保とうとした。
真魔大戦においてはどちらにもつかず武器が欲しいというなら作り、必要なら直すと職人としての立場を貫いたのだ。
その判断は結果的に間違いであった。
真人族はドワーフが味方にならないのなら敵だとした。
魔人族側につかれてしまうぐらいならドワーフを捕らえて利用してしまおうと考えた。
そのために真人族はドワーフを攻めた。
世界に散らばったドワーフたちは捕らえられ、真人族はドワーフをはるかに上回る数でドワーフの国を攻め落とそうとした。
ドワーフの国は単一の都市がすなわち国であり、その唯一の都市は天然の要塞でもあった。
己のプライドのためにドワーフは必死に抵抗して戦った。
意気揚々と先頭を歩くラスト。
行く道を間違えているのでもないのでリュードとルフォンも大人しくついていく。
リュードたちはティアローザの国境付近までやってきていた。
グルリと大きく国の中を一周し、誘拐事件のために行ったり来たりしたティアローザも終わりだと思うと多少の感慨深さもある。
「ええと、出国ですね。…………ん?」
国境の関所を守る衛兵がラストの顔を見て首を傾げた。
末端の兵士なので王族のことなんてほとんど知らないのであるが、ラストをどこかで見たことがある気がしていた。
もしかしたら何かの行事の時にでも見たことがあるのかもしれない。
けれどこの国で血人族は別に珍しくもない。
どこで見たかも思い出すことができず衛兵はそのままラストたちを国の外に送り出した。
「じゃじゃーん、国外に脱出ー!」
ラストは見送りに来たのではない。
当然勝手についてきたのでもない。
自らの意思と目的を持ってリュードたちについてきていたのである。
ーーーーー
仕事もひと段落ついてのんびりとしていたところ、ラストは王城に呼び出された。
ついでにリュードとルフォンも呼び出された。
「わざわざ足労いただいてすまないな。今日君たちに来てもらったのは全てのことが終わり、お礼をしようと思っていたからだ」
実際まだやらねばならないことはあるが、リュードたちを拘束せねばならないようなことは終わった。
冒険者であり世界を自由に旅するリュードたちをいつまでも取り調べで縛り付けておくことは申し訳ない。
なので何か今回のことに関するお詫びとお礼をしてまた二人には自由に旅を続けてもらおうとヴァンは思っていた。
「黒重鉄なる金属を扱える職人を探していると聞いた」
お礼といえばお金であるけれどリュードたちがお金に興味が薄いことは事前に調べてある。
何か欲しいものでもないかと調べたかったけど周りに調べられそうな人もいないので本人に聞くほかはなかった。
そんな時にヴィッツからリュードたちが黒重鉄を扱える職人を探していることを聞いたのである。
「レストを助けてくれたお礼に職人を見つけたいと思ったのだがこの国も狭くはない。黒重鉄を扱えることをうたっている職人がいるのかもしれないが見つけるのは容易くはない」
全職人を一軒一軒回って黒重鉄を扱えるか聞いて調べていくことは非効率的である。
国内は未だ混乱の影響があって仕事は忙しく、人海戦術で探そうにも人手が割けない。
「時間もかかるし、もしかしたらいない可能性だってある。そこでどうだ、確実にいるところに行ってみる気はないか?」
「黒重鉄を扱える職人が確実にいるところですか?」
「そうだ。ドワーフの国に行ってみるつもりはないか?」
「ドワーフ……」
「ドワーフの国ならば黒重鉄を扱えるドワーフの職人も1人ぐらいはいるだろう」
「ですが、ドワーフといえばあのドワーフですよね?」
魔人族がいるこの世界ではドワーフが存在している。
真人族の分類上はドワーフも魔人族になるのだけどドワーフは自分たちはドワーフでありドワーフという種族なのだと主張する。
「そう、あのドワーフだ。閉鎖的で偏屈、他の種族を受け入れないドワーフだ」
そしてドワーフとは優れた鍛冶技術を持った種族なのである。
「俺の聞いたことがある話だと何のツテもなく行ったとしても国内に入れすらできないと聞きましたが」
「そうだな。だからドワーフの国ドワガルの前にはドワガルに入ることを諦められない人や商人を相手にする小さい集落まで存在する」
「それじゃあ……」
職人を探す探さない以前の問題である。
ドワーフは非常に閉鎖的で自分の気に入った者か昔から交流のある者しか受け入れない。
はるか昔はそんなことがなく、全ての鍛冶はドワーフから始まると言われるほどにドワーフが世界中の武器を作っていた。
みんながドワーフの武器を求め、ドワーフもそれに応えていたのでドワーフが持つ交流はとても多かった。
しかしドワーフを変えてしまったのは真魔大戦であった。
ドワーフは真魔大戦の時に微妙な立場に置かれた。
真人族からするとドワーフは魔人族だった。
けれどドワーフには魔人族とは違うのだというドワーフのプライドがあった。
魔人族側はドワーフの武器を作る技術が欲しくてドワーフを引き入れようとしたがドワーフは魔人族側につくことに抵抗があった。
ドワーフはあくまでも中立を保とうとした。
真魔大戦においてはどちらにもつかず武器が欲しいというなら作り、必要なら直すと職人としての立場を貫いたのだ。
その判断は結果的に間違いであった。
真人族はドワーフが味方にならないのなら敵だとした。
魔人族側につかれてしまうぐらいならドワーフを捕らえて利用してしまおうと考えた。
そのために真人族はドワーフを攻めた。
世界に散らばったドワーフたちは捕らえられ、真人族はドワーフをはるかに上回る数でドワーフの国を攻め落とそうとした。
ドワーフの国は単一の都市がすなわち国であり、その唯一の都市は天然の要塞でもあった。
己のプライドのためにドワーフは必死に抵抗して戦った。