「俺は君が、サキュルレストが好き、なんだ……」
もうどうにでもなれとバロワは想いをぶちまけた。
体全体がカッと熱くなって、レストの顔が見られなくて視線を伏せる。
引かれていることだろうと思った。
これまで兄妹として育ってきた相手に恋慕しているなんて。
レストが泣きそうな顔をしているから、泣かせたくなくて正直に話すしかバロワにはなかった。
全てが終わったと思った。
嫌われてしまったのなら、嫌われてしまうぐらいならベギーオの剣で死ぬ方がマシだった。
「…………レスト?」
なんの反応もない。
どうせならキッパリと終わってくれればよかったのにとバロワは思う。
平手打ちでもして病室を出て行ってくれればバロワも諦められるのにレストは何も言わなかった。
伝えないつもりでいた思いを伝えた。
もうこれ以上失うものは何もないのだとバロワが顔を上げてレストの顔を見た。
レストは相変わらず泣きそうな顔をしていた。
けれどレストは耳まで真っ赤になっている。
「れ、レスト……?」
「わ、私のことを……?」
「……そう。ずっと昔、レストは俺の手を引いて連れ出してくれた。不安で、寂しくて塞ぎ込んでいた俺に優しく笑いかけて遊ぼうよと声をかけてくれた。その温かさに、俺は惚れてしまったんだ」
バロワは寂しそうに微笑んで自分の胸の内をさらけ出す。
いいさ、どうせ実らぬ思いならここで話してしまっても構わないだろう。
もう、止められない。
全ての胸の内を晒してしまおうと思った。
「君がベキーオにやられそうになって体が勝手に動いたんだ。俺はどうなってもいい。君が傷付くのだけは許せなかった」
レストにはそんな気がないだろうとバロワは思っている。
兄妹だから恋愛感情なんて持つのはおかしいし、こんなことを言われても困るだろうと思いながらも最初で最後の機会だと思いの丈をぶつける。
どんな言葉、どんな反応が返ってきても受け入れるつもりだった。
「…………?」
しかし待てど暮らせどレストから反応は返ってこない。
「好きって、その、どういう……」
「……俺の言う好きってのは、1人の女性としてレストを好き……もっと言えば愛してしまっているんだ」
恥ずかしさが込み上げる。
そんな風に踏み込んで聞かれるとバロワも思っていなかった。
最初は勢いで言ったけど段々ととんでもないことを言ってしまった後悔と恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
「……私のこと、嫌いだったんじゃないの?」
「そんなことない!」
ポソリとつぶやいたレストの言葉をバロワが強く否定する。
「嫌いになんてなるはずないじゃないか!」
「じゃあ、どうしていきなり冷たくなったの?」
「うっ、それは……」
昔はバロワとレストで毎日のように遊んでいた。
しかしある時からバロワはレストに対して線を引いたような態度を取り始めて、一緒に遊ぶことも減り始めた。
当時のレストは何か嫌なことをしてしまったのかとか、お姉さんぶったのが嫌われたのかとか色々と悩んだ。
思い返してみても原因は分からず、そのままバロワは今自分が治める大領地の前大領主の元に行くことになった。
関係の修復はならず理由は分からずとも嫌われたのだとレストはひどく落ち込んだのだった。
「毎日遊びに誘うのが嫌だった? それとも年下の私がお姉さんぶったのが嫌だった? どうしていきなり冷たくしたの……」
「……好き、だったからだ」
レストはずっと泣きそうな顔をしている。
泣かせたくないバロワは内心狼狽えつつも全てに答える。
「好きならどうして……」
「俺とお前は兄妹じゃないか!」
幼心にバロワは気づいてしまった。
レストとは血が繋がっていなくてもヴァンに引き取られた以上兄妹であると。
血縁的な遠さでは結婚に障害はないが、名目上兄妹であるレストと将来の関係を築くことはできない。
「好きになってはいけない……そう思ったんだ。でもレストが来てくれるのが嬉しくて、笑顔が見たくて……思いを断ち切れなくて。だからそっけない態度を取ったんだ。俺がこれ以上好きにならないように、好きになってしまわないように……」
距離をおけばこの気持ちは消えていくだろうとバロワは思った。
でも思いは消えなかったし、嫌われているのだと思ったレストは関係を修復したいとまた近づいてきた。
そこで物理的に距離を空けることにした。
頭も良くて優秀だったバロワは大領主の元で学びながら過ごすことになり、レストと離れることになった。
それで自分の感情に蓋をしたつもりだった。
けれど運命の悪戯だろうか、バロワはまたレストと会う機会があった。
王城などへの挨拶なんかでは時期をずらしたり領地経営が忙しいなどと理由をつけていたのだけど、ラストが大領主になることになった。
そして若いラストの補助としてレストが付くことになったのだ。
久方ぶりに見たレストは美しい女性となっていた。
蓋をした思いは心の奥底に隠れていただけで消えてはいなかった。
その笑顔を見た時にバロワはまだ自分に伝えてはいけない思いがあることに気づいてしまったのである。
もうどうにでもなれとバロワは想いをぶちまけた。
体全体がカッと熱くなって、レストの顔が見られなくて視線を伏せる。
引かれていることだろうと思った。
これまで兄妹として育ってきた相手に恋慕しているなんて。
レストが泣きそうな顔をしているから、泣かせたくなくて正直に話すしかバロワにはなかった。
全てが終わったと思った。
嫌われてしまったのなら、嫌われてしまうぐらいならベギーオの剣で死ぬ方がマシだった。
「…………レスト?」
なんの反応もない。
どうせならキッパリと終わってくれればよかったのにとバロワは思う。
平手打ちでもして病室を出て行ってくれればバロワも諦められるのにレストは何も言わなかった。
伝えないつもりでいた思いを伝えた。
もうこれ以上失うものは何もないのだとバロワが顔を上げてレストの顔を見た。
レストは相変わらず泣きそうな顔をしていた。
けれどレストは耳まで真っ赤になっている。
「れ、レスト……?」
「わ、私のことを……?」
「……そう。ずっと昔、レストは俺の手を引いて連れ出してくれた。不安で、寂しくて塞ぎ込んでいた俺に優しく笑いかけて遊ぼうよと声をかけてくれた。その温かさに、俺は惚れてしまったんだ」
バロワは寂しそうに微笑んで自分の胸の内をさらけ出す。
いいさ、どうせ実らぬ思いならここで話してしまっても構わないだろう。
もう、止められない。
全ての胸の内を晒してしまおうと思った。
「君がベキーオにやられそうになって体が勝手に動いたんだ。俺はどうなってもいい。君が傷付くのだけは許せなかった」
レストにはそんな気がないだろうとバロワは思っている。
兄妹だから恋愛感情なんて持つのはおかしいし、こんなことを言われても困るだろうと思いながらも最初で最後の機会だと思いの丈をぶつける。
どんな言葉、どんな反応が返ってきても受け入れるつもりだった。
「…………?」
しかし待てど暮らせどレストから反応は返ってこない。
「好きって、その、どういう……」
「……俺の言う好きってのは、1人の女性としてレストを好き……もっと言えば愛してしまっているんだ」
恥ずかしさが込み上げる。
そんな風に踏み込んで聞かれるとバロワも思っていなかった。
最初は勢いで言ったけど段々ととんでもないことを言ってしまった後悔と恥ずかしさで胸がいっぱいになる。
「……私のこと、嫌いだったんじゃないの?」
「そんなことない!」
ポソリとつぶやいたレストの言葉をバロワが強く否定する。
「嫌いになんてなるはずないじゃないか!」
「じゃあ、どうしていきなり冷たくなったの?」
「うっ、それは……」
昔はバロワとレストで毎日のように遊んでいた。
しかしある時からバロワはレストに対して線を引いたような態度を取り始めて、一緒に遊ぶことも減り始めた。
当時のレストは何か嫌なことをしてしまったのかとか、お姉さんぶったのが嫌われたのかとか色々と悩んだ。
思い返してみても原因は分からず、そのままバロワは今自分が治める大領地の前大領主の元に行くことになった。
関係の修復はならず理由は分からずとも嫌われたのだとレストはひどく落ち込んだのだった。
「毎日遊びに誘うのが嫌だった? それとも年下の私がお姉さんぶったのが嫌だった? どうしていきなり冷たくしたの……」
「……好き、だったからだ」
レストはずっと泣きそうな顔をしている。
泣かせたくないバロワは内心狼狽えつつも全てに答える。
「好きならどうして……」
「俺とお前は兄妹じゃないか!」
幼心にバロワは気づいてしまった。
レストとは血が繋がっていなくてもヴァンに引き取られた以上兄妹であると。
血縁的な遠さでは結婚に障害はないが、名目上兄妹であるレストと将来の関係を築くことはできない。
「好きになってはいけない……そう思ったんだ。でもレストが来てくれるのが嬉しくて、笑顔が見たくて……思いを断ち切れなくて。だからそっけない態度を取ったんだ。俺がこれ以上好きにならないように、好きになってしまわないように……」
距離をおけばこの気持ちは消えていくだろうとバロワは思った。
でも思いは消えなかったし、嫌われているのだと思ったレストは関係を修復したいとまた近づいてきた。
そこで物理的に距離を空けることにした。
頭も良くて優秀だったバロワは大領主の元で学びながら過ごすことになり、レストと離れることになった。
それで自分の感情に蓋をしたつもりだった。
けれど運命の悪戯だろうか、バロワはまたレストと会う機会があった。
王城などへの挨拶なんかでは時期をずらしたり領地経営が忙しいなどと理由をつけていたのだけど、ラストが大領主になることになった。
そして若いラストの補助としてレストが付くことになったのだ。
久方ぶりに見たレストは美しい女性となっていた。
蓋をした思いは心の奥底に隠れていただけで消えてはいなかった。
その笑顔を見た時にバロワはまだ自分に伝えてはいけない思いがあることに気づいてしまったのである。