リュードが開いている本のタイトルは『付与魔術のススメ』という本だった。
その名の通り付与魔法に関する基礎的なことが書いてあるものでヴェルデガーから借りてきた本である。
付与魔術とは物に一定の効果を発揮する魔法を付与する意外と難しい魔法。
ヴェルデガーはこの付与魔法が苦手でこの本を買ったはいいものの放置していた。
暇があるとヴェルデガーの本を読んでいるリュードは本整理の途中でたまたま崩れた本の山の中からこの本を見つけた。
興味本位で読んでみたのが始まりだったのだけど付与魔法をやってみたいと思ったのだ。
リュードはこうした細かい作業というか細かい魔力コントロールが好きで付与魔法は試してみて面白く思えた。
手先が器用とまでは言えないが黙々と作業しているのは意外と性に合っている。
牙にかけた付与魔法は守りの魔法で魔法の力で多少の攻撃なら牙に込めた魔法で防いでくれる優れた付与効果である。
まだまだ下手くその域から脱せてはいないけど効果は低くてもデタラメな魔力を持っているから無理矢理魔力を込め、使えるぐらいには持っていけるようになっていた。
リュードはこれをルフォンの誕生日プレゼントにしようと目論んでいる。
本を見つけた時から構想はあったけどなかなか着手出来ず込める魔法もまだ決まっていなかったがあと10日もないのでそろそろちゃんと作らねばならない。
「やっぱり……これと……これかな」
本をペラペラとめくりながらどんな魔法を付与するか考える。
あまり強力な付与魔法は無理。
でもちゃんと実用的な効果は付けてあげたい。
考えながら魔物の素材で色々作る加工をしている職人と組んで魔道具として売り出せば儲かるんじゃないかという考えもリュードの中で浮かんだりもする。
今のところ他の誰かのために付与魔法で魔道具を作るつもりは一切ないけどお金に困ったらアリな方法かもしれない。
リュードも失敗や成功を繰り返しながらルフォンの誕生日まで鍛錬の時間以外は付与魔法の練習に費やした。
大きな失敗では魔法が不完全だったのか物そのものが壊れてしまったり、小さい失敗では壊れこそしなかったけど効果が十分に発揮されないとかなぜか意図していない付与魔法が付与されたこともあった。
部屋にこもりきりのリュードをメーリエッヒが心配したこともあった。
ルフォンの誕生日プレゼントを用意しているというと共に生暖かい目をして、じゃあ頑張りなさいとだけ言われた。
それでも気になるのかメーリエッヒは何を作っているのか知りたそうに部屋を覗いたりしてくることもあったけど邪魔はしなかった。
ルフォンにこそ秘密にはしてあるようだったけど隣のルフォンにはプレゼントがあることは筒抜けであった。
下手な物渡すなよ、でも良すぎる物も渡すなよとウォーケックも複雑そうな思いでリュードをせっついてきた。
そうして日々は過ぎていき、ルフォンの誕生日を迎えた。
「リューちゃん、はい、タオル」
「ありがとう」
今日のルフォンはやや大人しい。
元気がないのではなく落ち着きがなくそわそわとしていつもの溌剌さがない。
ルフォンの誕生日なことをルフォン自身が1番意識しているからである。
「ねえ、リューちゃん」
「どうかしたか?」
「あのね、お願いがあってね」
「お願い? ……俺に出来ることなら」
お願いとは珍しいなとリュードは思う。
ルフォンがお願いだとかワガママだとか言うことは少ない。
誕生日だし出来る限りのことは叶えてやるつもりでリュードはルフォンを見る。
「ディグラ草……あそこの丘に行きたいな……って」
「ディグラ草の丘って」
「うん、そう。今の私ならちゃんと逃げられるし、何かあってもリューちゃんが守ってくれるでしょ?」
ルフォンのお願いはかなり意外なものであった。
どちらかと言うと良い思い出の場所とは言い難く、リュードの横にいる一瞬ウォーケックが顔をしかめるほどの場所で普通の丘ではない。
だけどウルウルと上目遣いに見られては断れない。
ウォーケックもリュードの実力は知っているし長時間の滞在は避けて危険があったらすぐに逃げることを条件に許してくれた。
行くのは今すぐではなくて朝食を取ってから行くことになってリュードは一度家に戻る。
どっちにしろ鍛錬中心配だからと家に置いてある誕生日プレゼントを取りに行くつもりだったから好都合なぐらいである。
家に帰って朝ごはんを簡単に食べると部屋に戻って出かける準備をする。
リュードはいつもだいたい戦闘衣を着まわしている。
場所が場所だけに魔人化の必要性も考えて服装もそのままでいい。
箱型の腰袋の中にルフォンへのプレゼントが入った小さい木箱とポーションを何本かを入れる。
狩り用のちゃんと刃がついた剣とナイフを腰に差して簡単な胸当てと手甲を着ける。
よほどの確率ではあるが万が一もありえるからメーリエッヒにはちゃんと行き先とルフォンと共に行くことを伝えて家を出た。
ルフォンの家はすぐお隣さん。
出るとカゴを持ったルフォンが玄関横に寄りかかっているのが見えた。
その名の通り付与魔法に関する基礎的なことが書いてあるものでヴェルデガーから借りてきた本である。
付与魔術とは物に一定の効果を発揮する魔法を付与する意外と難しい魔法。
ヴェルデガーはこの付与魔法が苦手でこの本を買ったはいいものの放置していた。
暇があるとヴェルデガーの本を読んでいるリュードは本整理の途中でたまたま崩れた本の山の中からこの本を見つけた。
興味本位で読んでみたのが始まりだったのだけど付与魔法をやってみたいと思ったのだ。
リュードはこうした細かい作業というか細かい魔力コントロールが好きで付与魔法は試してみて面白く思えた。
手先が器用とまでは言えないが黙々と作業しているのは意外と性に合っている。
牙にかけた付与魔法は守りの魔法で魔法の力で多少の攻撃なら牙に込めた魔法で防いでくれる優れた付与効果である。
まだまだ下手くその域から脱せてはいないけど効果は低くてもデタラメな魔力を持っているから無理矢理魔力を込め、使えるぐらいには持っていけるようになっていた。
リュードはこれをルフォンの誕生日プレゼントにしようと目論んでいる。
本を見つけた時から構想はあったけどなかなか着手出来ず込める魔法もまだ決まっていなかったがあと10日もないのでそろそろちゃんと作らねばならない。
「やっぱり……これと……これかな」
本をペラペラとめくりながらどんな魔法を付与するか考える。
あまり強力な付与魔法は無理。
でもちゃんと実用的な効果は付けてあげたい。
考えながら魔物の素材で色々作る加工をしている職人と組んで魔道具として売り出せば儲かるんじゃないかという考えもリュードの中で浮かんだりもする。
今のところ他の誰かのために付与魔法で魔道具を作るつもりは一切ないけどお金に困ったらアリな方法かもしれない。
リュードも失敗や成功を繰り返しながらルフォンの誕生日まで鍛錬の時間以外は付与魔法の練習に費やした。
大きな失敗では魔法が不完全だったのか物そのものが壊れてしまったり、小さい失敗では壊れこそしなかったけど効果が十分に発揮されないとかなぜか意図していない付与魔法が付与されたこともあった。
部屋にこもりきりのリュードをメーリエッヒが心配したこともあった。
ルフォンの誕生日プレゼントを用意しているというと共に生暖かい目をして、じゃあ頑張りなさいとだけ言われた。
それでも気になるのかメーリエッヒは何を作っているのか知りたそうに部屋を覗いたりしてくることもあったけど邪魔はしなかった。
ルフォンにこそ秘密にはしてあるようだったけど隣のルフォンにはプレゼントがあることは筒抜けであった。
下手な物渡すなよ、でも良すぎる物も渡すなよとウォーケックも複雑そうな思いでリュードをせっついてきた。
そうして日々は過ぎていき、ルフォンの誕生日を迎えた。
「リューちゃん、はい、タオル」
「ありがとう」
今日のルフォンはやや大人しい。
元気がないのではなく落ち着きがなくそわそわとしていつもの溌剌さがない。
ルフォンの誕生日なことをルフォン自身が1番意識しているからである。
「ねえ、リューちゃん」
「どうかしたか?」
「あのね、お願いがあってね」
「お願い? ……俺に出来ることなら」
お願いとは珍しいなとリュードは思う。
ルフォンがお願いだとかワガママだとか言うことは少ない。
誕生日だし出来る限りのことは叶えてやるつもりでリュードはルフォンを見る。
「ディグラ草……あそこの丘に行きたいな……って」
「ディグラ草の丘って」
「うん、そう。今の私ならちゃんと逃げられるし、何かあってもリューちゃんが守ってくれるでしょ?」
ルフォンのお願いはかなり意外なものであった。
どちらかと言うと良い思い出の場所とは言い難く、リュードの横にいる一瞬ウォーケックが顔をしかめるほどの場所で普通の丘ではない。
だけどウルウルと上目遣いに見られては断れない。
ウォーケックもリュードの実力は知っているし長時間の滞在は避けて危険があったらすぐに逃げることを条件に許してくれた。
行くのは今すぐではなくて朝食を取ってから行くことになってリュードは一度家に戻る。
どっちにしろ鍛錬中心配だからと家に置いてある誕生日プレゼントを取りに行くつもりだったから好都合なぐらいである。
家に帰って朝ごはんを簡単に食べると部屋に戻って出かける準備をする。
リュードはいつもだいたい戦闘衣を着まわしている。
場所が場所だけに魔人化の必要性も考えて服装もそのままでいい。
箱型の腰袋の中にルフォンへのプレゼントが入った小さい木箱とポーションを何本かを入れる。
狩り用のちゃんと刃がついた剣とナイフを腰に差して簡単な胸当てと手甲を着ける。
よほどの確率ではあるが万が一もありえるからメーリエッヒにはちゃんと行き先とルフォンと共に行くことを伝えて家を出た。
ルフォンの家はすぐお隣さん。
出るとカゴを持ったルフォンが玄関横に寄りかかっているのが見えた。