「最後の大人の試練はこちらになります。事情により私は最後まで同行することは出来ませんので次は別の者が同行いたします」

 5と書かれた黒い封筒。
 次が正真正銘最後の大人の試練である。

「それでは失礼します。大人の試練乗り越えられること祈っております」

 コルトンは深く頭を下げると立ち去った。
 最後まで分からない人だったけれど悪い人じゃなかったなとリュードは思った。

「リュード、ちょっといいか?」

 コルトンに入れ替わるようにモノランが窓から顔を覗かせた。
 リュードたちが泊まっている宿の2階の部屋にはモノランが立ち上がると顔が届くのだ。

「どうした、モノラン?」

「私もそろそろ帰ろうと思う。みんな色々食べ物くれて美味いけど、残してきたあの子たちも心配なんだ」

「そうか……それもそうだよな」

「またこれを渡しておくから何かあったら呼んでくれ。リュードのためならどこへでも飛んでくるから」

 モノランはまた自分の毛をリュードに渡した。
 こんなものでモノランを呼べるのか疑問だったけれど本当にモノランは来てくれた。

「ああ、ありがとう。今回は本当に助かったよ」

 リュードが笑いながら手を伸ばすとモノランは少し顔を前に出して撫でられる。

「リュードの言う通り神様への信仰が集まり高まった。だからリュードが気にすることなんて何もないぞ」

「それでも命は救われたからな、感謝はするさ。そのうちに何かお礼しなきゃいけないな」

「礼なら雷の信仰者を増やしてくれ。そして私を本当の神獣にしてくれ。あとは今一個頼みがある」

「おう、なんだ?」

「表にある食べ物を持って帰りたい。何かに包んでくれないか?」

 チッパの町にも人が戻りつつあった。
 モノランは共に戦った冒険者や聖職者などから話が広まり神獣であり町を救ったことが周知されていた。
 
 お礼のと色々なものがモノランには用意されたりしたのだけど、金銭や物、名声にはあまり興味を示さなかったのだが食べ物には反応した。
 美味い美味いと嬉しそうに食べるのでみんな感謝の意も込めてモノランに食べ物をお供えしていた。
 
 モノランはリュードたちが泊まる宿の前にいたので宿の前には食べ物が積まれていた。
 そんな食べ物をリュードは大きな布にいくつか包んで紐で縛って一つにする。
 
 かなり大きな荷物になるけどモノランなら問題はない。

「次はプジャンとか言う奴と会えると嬉しいな。じゃあな、リュード!」

 食べ物の袋を咥えてモノランは去っていった。
 リュードたちものんびりとはしていられない。

 クゼナのことも忘れたわけでなく、だいぶ時間が経ってしまったことに焦りも感じていた。
 大人の試練も期間が延長になったとはいえ遊んでいられるのでもない。

 片付けなどは町にも住む人に任せることにしてリュードたちも次の日にチッパの町を出発したのであった。