「チッ……ずるいな」
むやみに手を出すとやられてしまうので反撃は諦めて完全に防御に徹することにした。
受け流しを主体に回避しながら視界が晴れるまで必死に耐える。
デュラハンの姿がぼんやりとしか見えないために直前に来た剣に対応するしかない。
むしろリュードの集中力は最大限に高まって攻撃を防ぎ続けていた。
「うぐっ……!」
上手く防御できていたもののリュードの方も全くの無傷ではなかった。
デュラハンの魔力をまとった一撃はとんでもなく重たく、受け流した剣を持つ手が痺れていた。
圧倒的なパワーを完全に受け流すだけでもかなり難しいことだったのである。
魔人化しているのにも関わらずパワーで押されるのだから反省や焦りがリュードの頭の中に浮かんで剣の腕を鈍らせかける。
もっと力があれば、もっと技術があって完璧に受け流せたらと思わずにいられない。
デュラハンの剣をかわし切れなくて頬の鱗が弾け飛んで血が滲んでくる。
痛みに怯んでいる暇もない。
事前に聞いていたデュラハンよりもずっと強く、ダンジョンブレイクのためにこうなった異常な個体である可能性が頭をよぎった。
「う……」
受け流し切れなくて剣先が腕を掠めた。
効くかわからないけど雷属性の魔法を試してみようかとも考えた。
「やっと見えた!」
けれどもリュードが魔法を試す前にラストが土埃の向こうにうっすらと姿の見えたデュラハンに向かって矢を放った。
リュードに集中し、視界の悪い土埃の中でデュラハンは飛んでくる矢に気づくことが遅れた。
間に合わないので回避ではなく防御しようと剣の腹でラストの矢を叩き落とそうとした瞬間に矢は爆発した。
何か触れた瞬間に爆発してしまうので切ろうが叩き落とそうが関係ない。
「離れろ!」
またデュラハンにほんのわずかな隙ができる。
リュードは素早くデュラハンの懐に入り、デュラハンの脇腹を力いっぱい殴り飛ばした。
デュラハンが吹っ飛び、土埃の中から飛び出してきて地面を転がる。
ちょうど舞い上がった土埃も落ち着いてリュードの姿も見えるようになった。
リュードの体には防ぎきれなくて何箇所かに傷があった。
これぐらいで済んだのなら運良くて軽い方なのだけど、竜人化した姿でケガをしたことなんてルフォンでも見たことがなかった。
「リュード、大丈夫?」
「もちろんだ。むしろ……」
むしろ楽しいとすら思ってしまっている。
こんな風に実力の拮抗した相手と戦うことは滅多にない。
自分の未熟さに気づき、全力で防御させてもらえることでより改善点も見えてくる。
不謹慎だという輩もいるかもしれないけれど戦い1つ1つが自分を伸ばす糧となるのだ。
戦いの中に喜びを見出す。
転生前までの自分ならあり得ないことだけど今の竜人族のリュードはもう骨の髄まで魔人族である。
戦いに生きる一族の考えがリュードの中にも染み付いていた。
あれだけ激しく動いたけれど、動いたことで体を魔力が巡り疲労感もそんなにない。
今なら反撃まで及ばなくてもデュラハンの攻撃を受ける気はしないとすら思えるほどに気分が高揚している。
リュードは戦闘中にも関わらずまた1つ成長をしていっているのである。
「いいぜ、まだ戦おうか」
ベッコリと脇腹の鎧を凹ませたデュラハンが立ち上がる。
黒い魔力は相変わらずデュラハンを覆っていて、見ているだけで威圧感がある。
リュードとデュラハンが同時に駆け出して剣が交わる。
正直まだ反撃まで手は回らないけれど防御に徹すれば負ける気はしない。
手にかかっていた衝撃がだいぶ小さくなった。
デュラハンが弱くなったのではない。
リュードがより効率的にデュラハンの攻撃を受け流して防いでいるのである。
「チャージショット!」
射線がリュードに被らないように回り込んだラストが弓を射る。
「おっと……」
なんだ、とリュードは疑問に思った。
これまでリュードを殺す気でしっかりと狙ってきたのに今の一撃はなんというか、狙いがちょっと外れていたように感じられた。
リュードが迷いなく回避することを選ぶような位置に剣を振り下ろされて違和感を覚えた。
まさか疲れてきたなんてことあり得るはずがない。
意図があると思ったのだけど戦いの最中思考にふけるわけにはいかず気づくのが遅れた。
「なっ!」
「危ない!」
ラストが矢を放っていたことはわかっていたデュラハンも3度目の射撃となると馬鹿でもないので対策を練ってきた。
爆発する矢は防御してはならなくてかわさなくてはいけないと学習している。
リュードは力ではデュラハンに敵わないので受け流すか回避を防御行動として取っている。
かわせそうならかわした方がいいのは当然のこと。
デュラハンはリュードがかわすだろうことを予想して少しズレた軌道で剣を振り下ろした。
これまであまり体をうごしてこなかったデュラハンがサッと横に動いた。
デュラハンの後ろからはラストの矢が飛んできていた。
なんとデュラハンは巧みにリュードのことをラストの矢の前に誘導してみせたのだ。
むやみに手を出すとやられてしまうので反撃は諦めて完全に防御に徹することにした。
受け流しを主体に回避しながら視界が晴れるまで必死に耐える。
デュラハンの姿がぼんやりとしか見えないために直前に来た剣に対応するしかない。
むしろリュードの集中力は最大限に高まって攻撃を防ぎ続けていた。
「うぐっ……!」
上手く防御できていたもののリュードの方も全くの無傷ではなかった。
デュラハンの魔力をまとった一撃はとんでもなく重たく、受け流した剣を持つ手が痺れていた。
圧倒的なパワーを完全に受け流すだけでもかなり難しいことだったのである。
魔人化しているのにも関わらずパワーで押されるのだから反省や焦りがリュードの頭の中に浮かんで剣の腕を鈍らせかける。
もっと力があれば、もっと技術があって完璧に受け流せたらと思わずにいられない。
デュラハンの剣をかわし切れなくて頬の鱗が弾け飛んで血が滲んでくる。
痛みに怯んでいる暇もない。
事前に聞いていたデュラハンよりもずっと強く、ダンジョンブレイクのためにこうなった異常な個体である可能性が頭をよぎった。
「う……」
受け流し切れなくて剣先が腕を掠めた。
効くかわからないけど雷属性の魔法を試してみようかとも考えた。
「やっと見えた!」
けれどもリュードが魔法を試す前にラストが土埃の向こうにうっすらと姿の見えたデュラハンに向かって矢を放った。
リュードに集中し、視界の悪い土埃の中でデュラハンは飛んでくる矢に気づくことが遅れた。
間に合わないので回避ではなく防御しようと剣の腹でラストの矢を叩き落とそうとした瞬間に矢は爆発した。
何か触れた瞬間に爆発してしまうので切ろうが叩き落とそうが関係ない。
「離れろ!」
またデュラハンにほんのわずかな隙ができる。
リュードは素早くデュラハンの懐に入り、デュラハンの脇腹を力いっぱい殴り飛ばした。
デュラハンが吹っ飛び、土埃の中から飛び出してきて地面を転がる。
ちょうど舞い上がった土埃も落ち着いてリュードの姿も見えるようになった。
リュードの体には防ぎきれなくて何箇所かに傷があった。
これぐらいで済んだのなら運良くて軽い方なのだけど、竜人化した姿でケガをしたことなんてルフォンでも見たことがなかった。
「リュード、大丈夫?」
「もちろんだ。むしろ……」
むしろ楽しいとすら思ってしまっている。
こんな風に実力の拮抗した相手と戦うことは滅多にない。
自分の未熟さに気づき、全力で防御させてもらえることでより改善点も見えてくる。
不謹慎だという輩もいるかもしれないけれど戦い1つ1つが自分を伸ばす糧となるのだ。
戦いの中に喜びを見出す。
転生前までの自分ならあり得ないことだけど今の竜人族のリュードはもう骨の髄まで魔人族である。
戦いに生きる一族の考えがリュードの中にも染み付いていた。
あれだけ激しく動いたけれど、動いたことで体を魔力が巡り疲労感もそんなにない。
今なら反撃まで及ばなくてもデュラハンの攻撃を受ける気はしないとすら思えるほどに気分が高揚している。
リュードは戦闘中にも関わらずまた1つ成長をしていっているのである。
「いいぜ、まだ戦おうか」
ベッコリと脇腹の鎧を凹ませたデュラハンが立ち上がる。
黒い魔力は相変わらずデュラハンを覆っていて、見ているだけで威圧感がある。
リュードとデュラハンが同時に駆け出して剣が交わる。
正直まだ反撃まで手は回らないけれど防御に徹すれば負ける気はしない。
手にかかっていた衝撃がだいぶ小さくなった。
デュラハンが弱くなったのではない。
リュードがより効率的にデュラハンの攻撃を受け流して防いでいるのである。
「チャージショット!」
射線がリュードに被らないように回り込んだラストが弓を射る。
「おっと……」
なんだ、とリュードは疑問に思った。
これまでリュードを殺す気でしっかりと狙ってきたのに今の一撃はなんというか、狙いがちょっと外れていたように感じられた。
リュードが迷いなく回避することを選ぶような位置に剣を振り下ろされて違和感を覚えた。
まさか疲れてきたなんてことあり得るはずがない。
意図があると思ったのだけど戦いの最中思考にふけるわけにはいかず気づくのが遅れた。
「なっ!」
「危ない!」
ラストが矢を放っていたことはわかっていたデュラハンも3度目の射撃となると馬鹿でもないので対策を練ってきた。
爆発する矢は防御してはならなくてかわさなくてはいけないと学習している。
リュードは力ではデュラハンに敵わないので受け流すか回避を防御行動として取っている。
かわせそうならかわした方がいいのは当然のこと。
デュラハンはリュードがかわすだろうことを予想して少しズレた軌道で剣を振り下ろした。
これまであまり体をうごしてこなかったデュラハンがサッと横に動いた。
デュラハンの後ろからはラストの矢が飛んできていた。
なんとデュラハンは巧みにリュードのことをラストの矢の前に誘導してみせたのだ。