「最初から本気で行くぞ!」
デュラハンを相手に余裕をかましている暇はない。
リュードはクロークを脱ぎ捨てて魔人化する。
こんなこともあろうかと魔人化することを見越した緩めの服を着てきていた。
中には戦闘衣も身につけているし、魔人化する準備も万端だった。
尻尾がある以上ズボンのお尻の部分だけはどうにもならないので破けてしまうけど必要な破損だからしょうがない。
(……美しい)
戦闘の最中だというのにラストはそう思ってしまった。
血人族は竜人族や人狼族のように完全に見た目が変わってしまう魔人化ではない。
なので竜人族や人狼族のように真人族の姿と魔人化した姿の両方でそれぞれ好みがしっかりあるとは言い難い。
真人族よりは理解があって見た目に多少の好みはあるけれど、基本は真人族の姿が見た目の好みを語る上で基準とされる。
けれども血人族の魔人化には翼がある。
そのために血人族には翼の美しさという好みの価値観が存在している。
個人の好みなのでどのような翼が好きなのかは個人の感覚でしかないがラストの好みは美しくて力強い翼だった。
リュードは竜人族であり、竜ではない。
なので背中に翼は生えていないのだけれど、ラストは確かに見たのだ。
リュードの背中に翼が生えていたらこのようなのではないかという翼が。
ドラゴンのような分厚く力強い大きな翼が背中に生えていたのだ。
もしもリュードに翼があったならという完全にラストの妄想なのだけれど、本当に翼があったら戦闘中にも関わらず完全に見惚れてしまっていたかもしれない。
「ラスト、行くぞ!」
「あっ、うん!」
かもしれないじゃなく、妄想ですら見惚れていた。
リュードが本気を出したからとラストも本気を出して魔人化をする。
体の中の力に集中して、一気に爆発させるように解放する。
背中がムズムズとする感覚があってラストの背中に生えていた翼が大きくなった。
コウモリのような黒っぽい大きな翼が服を突き破りラストの背中から伸びて、ラストの瞳がより赤く鮮やかになる。
牙が伸びてチラリと唇の隙間から見える。
見た目の変化としては竜人族のリュードに比べると遥かに小さいがこれも立派な魔人化である。
ヴィッツが魔人化しても背中の翼と牙が伸びるぐらいでラストのように瞳までより鮮紅に染まるのは先祖返りであるからである。
「思ってたよりいいじゃないか」
「そ、そう? ならよかったかな」
血人族という名前にふさわしい魔人化であるとリュードは思う。
見た目の変化以上にラストから感じられる魔力もしっかりと強くなっている。
「さて……」
対峙するデュラハンは剣を持っていた。
投げて門を破壊したはずの剣である。
スケルトンなどと違ってデュラハンに関しては野生であっても生まれ持った時から武器を所持している。
拾った物であったりダンジョンから与えられた物ではない。
デュラハンから生み出された剣であってデュラハンの体の一部と言ってもいい。
生み出したのはデュラハンであるので何度でも剣を蘇らせることができる。
なので門に投げた剣は消滅させて新たな剣を作り出していたのである。
「改めて対峙すると強そうだな……」
大きな門を破壊するだけはあって圧力のような魔力を感じる。
出し惜しみなんてしていられないとリュードは持ってきた最上級の聖水を惜しげもなく剣に振りかける。
聖水の神聖力を受けて黒い刃が白い光を放ち出す。
ラストはムチを巻いて腰につけ、使い慣れた弓を手に取る。
矢と弓に聖水をふりかけてラストも準備する。
敵がデュラハンだけとなったのでムチよりも弓矢の方がいいと判断したのだ。
「こいよ、この戦い終わらせようぜ!」
リュードの声に反応してなのかデュラハンが乗っている鎧の馬の腹を蹴って走らせる。
デュラハンは馬の勢いを乗せた切り上げ攻撃でリュードを狙った。
ほんの一瞬正面から受けてみようかと思ったけれど危険だと瞬時に判断してリュードはデュラハンの切り上げを受け流す。
受け流したはずなのに手が痺れるほどの衝撃にデュラハンの強さを思い知る。
「クッ、ラスト、まずは馬からやるぞ!」
リュードに一撃加えたデュラハンはあっという間にリュードから距離を空けている。
馬に騎乗しての攻撃なので攻撃と移動が一体で反撃に出る隙もない。
一撃離脱が強すぎる。
馬の勢いも剣に乗ってくるし反撃ができない。
将を射んと欲すればまず馬を射よなんて言葉もある。
本当にその通りにする言葉でなく例え話なのだけど実際の場面でもそうするのが良さそうである。
「ラスト避けろ!」
しかしデュラハンもバカではない。
再び駆け出したデュラハンが狙ったのはリュードではなくラストだった。
まずは厄介な弓の使い手から倒してしまおうとデュラハンも戦略を考えていた。
「やぁっ!」
デュラハンの攻撃をラストが横に転がって回避する。
剣は空を切るがデュラハンは馬の足を止めない。
グルリと回ってきて再びラストを狙う。
「させるか!」
馬が急に反転して走るわけにもいかない。
弧を描くように走っているデュラハンの馬の軌道をリュードは読んでデュラハンに切り掛かる。
デュラハンもリュードを忘れていたわけがない。
けれどリュードは初めての状況なのに適切に対応をしていて馬の前に先回りするように剣を振り下ろしていた。
馬の足が止まり、立ち上がった馬の前足がリュードの頬を掠める。
多少無理矢理だったけれど上手くいった。
デュラハンを相手に余裕をかましている暇はない。
リュードはクロークを脱ぎ捨てて魔人化する。
こんなこともあろうかと魔人化することを見越した緩めの服を着てきていた。
中には戦闘衣も身につけているし、魔人化する準備も万端だった。
尻尾がある以上ズボンのお尻の部分だけはどうにもならないので破けてしまうけど必要な破損だからしょうがない。
(……美しい)
戦闘の最中だというのにラストはそう思ってしまった。
血人族は竜人族や人狼族のように完全に見た目が変わってしまう魔人化ではない。
なので竜人族や人狼族のように真人族の姿と魔人化した姿の両方でそれぞれ好みがしっかりあるとは言い難い。
真人族よりは理解があって見た目に多少の好みはあるけれど、基本は真人族の姿が見た目の好みを語る上で基準とされる。
けれども血人族の魔人化には翼がある。
そのために血人族には翼の美しさという好みの価値観が存在している。
個人の好みなのでどのような翼が好きなのかは個人の感覚でしかないがラストの好みは美しくて力強い翼だった。
リュードは竜人族であり、竜ではない。
なので背中に翼は生えていないのだけれど、ラストは確かに見たのだ。
リュードの背中に翼が生えていたらこのようなのではないかという翼が。
ドラゴンのような分厚く力強い大きな翼が背中に生えていたのだ。
もしもリュードに翼があったならという完全にラストの妄想なのだけれど、本当に翼があったら戦闘中にも関わらず完全に見惚れてしまっていたかもしれない。
「ラスト、行くぞ!」
「あっ、うん!」
かもしれないじゃなく、妄想ですら見惚れていた。
リュードが本気を出したからとラストも本気を出して魔人化をする。
体の中の力に集中して、一気に爆発させるように解放する。
背中がムズムズとする感覚があってラストの背中に生えていた翼が大きくなった。
コウモリのような黒っぽい大きな翼が服を突き破りラストの背中から伸びて、ラストの瞳がより赤く鮮やかになる。
牙が伸びてチラリと唇の隙間から見える。
見た目の変化としては竜人族のリュードに比べると遥かに小さいがこれも立派な魔人化である。
ヴィッツが魔人化しても背中の翼と牙が伸びるぐらいでラストのように瞳までより鮮紅に染まるのは先祖返りであるからである。
「思ってたよりいいじゃないか」
「そ、そう? ならよかったかな」
血人族という名前にふさわしい魔人化であるとリュードは思う。
見た目の変化以上にラストから感じられる魔力もしっかりと強くなっている。
「さて……」
対峙するデュラハンは剣を持っていた。
投げて門を破壊したはずの剣である。
スケルトンなどと違ってデュラハンに関しては野生であっても生まれ持った時から武器を所持している。
拾った物であったりダンジョンから与えられた物ではない。
デュラハンから生み出された剣であってデュラハンの体の一部と言ってもいい。
生み出したのはデュラハンであるので何度でも剣を蘇らせることができる。
なので門に投げた剣は消滅させて新たな剣を作り出していたのである。
「改めて対峙すると強そうだな……」
大きな門を破壊するだけはあって圧力のような魔力を感じる。
出し惜しみなんてしていられないとリュードは持ってきた最上級の聖水を惜しげもなく剣に振りかける。
聖水の神聖力を受けて黒い刃が白い光を放ち出す。
ラストはムチを巻いて腰につけ、使い慣れた弓を手に取る。
矢と弓に聖水をふりかけてラストも準備する。
敵がデュラハンだけとなったのでムチよりも弓矢の方がいいと判断したのだ。
「こいよ、この戦い終わらせようぜ!」
リュードの声に反応してなのかデュラハンが乗っている鎧の馬の腹を蹴って走らせる。
デュラハンは馬の勢いを乗せた切り上げ攻撃でリュードを狙った。
ほんの一瞬正面から受けてみようかと思ったけれど危険だと瞬時に判断してリュードはデュラハンの切り上げを受け流す。
受け流したはずなのに手が痺れるほどの衝撃にデュラハンの強さを思い知る。
「クッ、ラスト、まずは馬からやるぞ!」
リュードに一撃加えたデュラハンはあっという間にリュードから距離を空けている。
馬に騎乗しての攻撃なので攻撃と移動が一体で反撃に出る隙もない。
一撃離脱が強すぎる。
馬の勢いも剣に乗ってくるし反撃ができない。
将を射んと欲すればまず馬を射よなんて言葉もある。
本当にその通りにする言葉でなく例え話なのだけど実際の場面でもそうするのが良さそうである。
「ラスト避けろ!」
しかしデュラハンもバカではない。
再び駆け出したデュラハンが狙ったのはリュードではなくラストだった。
まずは厄介な弓の使い手から倒してしまおうとデュラハンも戦略を考えていた。
「やぁっ!」
デュラハンの攻撃をラストが横に転がって回避する。
剣は空を切るがデュラハンは馬の足を止めない。
グルリと回ってきて再びラストを狙う。
「させるか!」
馬が急に反転して走るわけにもいかない。
弧を描くように走っているデュラハンの馬の軌道をリュードは読んでデュラハンに切り掛かる。
デュラハンもリュードを忘れていたわけがない。
けれどリュードは初めての状況なのに適切に対応をしていて馬の前に先回りするように剣を振り下ろしていた。
馬の足が止まり、立ち上がった馬の前足がリュードの頬を掠める。
多少無理矢理だったけれど上手くいった。