「心配、したよ」
口ではああ言っていたけどいざ無事なリュードを見て安心した。
胸に顔を押し当てるルフォンの尻尾は振られていて、怒ってはいないと分かる。
「私もいなくて心配していたんだぞ!」
これぐらいならいいだろうと最大級の勇気を出してラストはリュードの袖を掴んでいた。
腕に抱きつくことも、手を握ることもできず、出来た最大の行為が袖に手を伸ばすことだった。
「私も心配しておりましたぞ!」
ヴィッツのはただの悪ふざけである。
リュードの左手を両手で包み込むように取ってニッコリ笑う。
心配していないわけじゃないけど思わず手を取るほどに心配してはいないだろうとリュードは目を細めた。
「心配かけてごめん。みんなありがとう」
とりあえずヴィッツの手を振り払いたいのにがっしり掴まれている。
1名の悪ふざけは置いといてルフォンとラストは本気で心配してくれていた。
まずは二人を優先することにして、ヴィッツの方は気にしない。
ヴィッツ完全無視で二人に笑顔を向ける。
「でもまだ終わりじゃない。みんなで無事にこれを乗り切るんだ。ダンジョンブレイクを終わらせて、平和を取り戻して、それでようやく終わりだ」
「そうだね。でももう1人で無茶しちゃダメだよ?」
「ごめんごめん。だって俺がいなくなってからこんなことになるなんて思わなかったんだよ」
まさかリュードが少し離れている間に門から撤退しているだなんて思いもしない。
確かに戦場を離れたリュードも悪いけど戦況が大きく変わってしまったのでリュードが全て悪いとは言い切れない。
「ラストの言葉でモノランのことを思い出してな。助けを借りるためにモノランを呼んだんだ」
「さっすがリューちゃん!」
「私の言葉のおかげってこと?」
「ま、そうだな」
「さっすが私!」
ラストのふとした嘆きがリュードに閃きをもたらした。
およそ賭けに近いものであったけれどモノランを呼ぶことができたし、協力を取り付けることもできた。
ラストのボヤきがなかったらモノランのことを思い出すことはなかっただろう。
「そうだな、ラストのおかげだな」
「ふへへっ」
褒められてラストも嬉しそうに笑う。
「んで、いつまで手を握ってるんですか?」
「放せと言われておりませんので」
「放してください」
「かしこまりました」
ヴィッツの茶目っ気はなかなかリュードには理解し難い。
どのような意図があるのか不明だけど時折ぶっ飛んだ冗談を言う。
雰囲気を和ませようとしているのだと好意的に考えておくことにした。
「シューナリュードさんですね?」
「あっ、はい。何でしょうか?」
声をかけられてルフォンとラストもリュードから離れる。
振り返るとリュードに声をかけたのはジグーズだった。
一瞬こんな時にイチャイチャしていたことを怒られるのかと思った。
「私たちがどうすればいいのか指示をくださいませんか?」
「俺が……ですか?」
なぜいきなりそんな話をしてくるのか、理解ができない。
「はい。あの神獣様をお連れになられたのはシューナリュードさんですから。私たちが神獣様にご命令をしてよいものかも分かりません。ですのでシューナリュードさんが神獣様と私たちがうまく立ち回れるように指示くださればと思いました」
外の様子を確認していたジグーズはリュードがモノランの背中に乗ってきたのをしっかりと見ていた。
モノランに助けられてきたような様子ではなく対等な関係に見えて何かしらの関係があるとジグーズは考えた。
雷を操る神獣の周りでうろちょろと戦えば神獣も冒険者も互いに力を出し切ることができない可能性がある。
どちらの側にも理解がありそうなリュードが指示を出すことが1番良いと判断を下した。
少なくとも神獣の邪魔にならないようにどうしたらいいのか相談ぐらいはしたかった。
それに北門での出来事について報告も受けていた。
1人正しい判断をして、咄嗟にデュラハンの剣も防いだ。
こんな緊急事態だからこそ正しく動けて実力もある人物を年齢や立場でなく考えて事態に当たるべきなのだ。
ジグーズは自分の判断のために主要な者をさっと説得してリュードの指示を仰ぐことにした。
「……そうですね、この状況を終わらせるためには結局ダンジョンブレイクを終わらせる必要があると思います。そしてそのためにデュラハンを倒すことが必要です」
偉そうに指示なんて出すことはできない。
あくまでも対等な立場での意見だと思ってリュードは口を開いた。
ダンジョンブレイクは自然に終わるものじゃない。
放っておいたとしても延々と魔物が中から出てくるだけである。
ダンジョンブレイクを終わらせるにはダンジョンのボスを倒すことが必要である。
今回ならデュラハンで、もうダンジョンの外に出てきていることも確認済みだ。
「まずはみんなで協力して周りにいる魔物から減らしましょう。そしたら俺たちがモノランとデュラハンのところまで行って倒してきます」
ダンジョンブレイクを終わらせて町を救うために、最終的には打って出るしかない。
「しかし、それでは……」
「やるしか生き延びる道はないんです。モノランは多分他の人じゃ言うこと聞いてくれないと思うので俺が行かなきゃいけないんです」
「うぅむ……」
モノランのことを考えると他の人を連れて行くことはできてもリュードが同行することは必須になる。
乗せて運んでいってと言ってもモノランは拒否するだろう。
ジグーズはリュードの提案に難色を示す。
リュードの実力は分からないし任せるには不安が大きい。
けれどだからといって今ここでデュラハンを相手できる冒険者もいない。
神獣と繋がりがあるということは、神様とも何かしらの繋がりがあるのかもしれない。
グルグルと頭の中で迷ったジグーズは最後は自分の勘を信じることにした。
「……分かった、君たちに任せたいと思います」
口ではああ言っていたけどいざ無事なリュードを見て安心した。
胸に顔を押し当てるルフォンの尻尾は振られていて、怒ってはいないと分かる。
「私もいなくて心配していたんだぞ!」
これぐらいならいいだろうと最大級の勇気を出してラストはリュードの袖を掴んでいた。
腕に抱きつくことも、手を握ることもできず、出来た最大の行為が袖に手を伸ばすことだった。
「私も心配しておりましたぞ!」
ヴィッツのはただの悪ふざけである。
リュードの左手を両手で包み込むように取ってニッコリ笑う。
心配していないわけじゃないけど思わず手を取るほどに心配してはいないだろうとリュードは目を細めた。
「心配かけてごめん。みんなありがとう」
とりあえずヴィッツの手を振り払いたいのにがっしり掴まれている。
1名の悪ふざけは置いといてルフォンとラストは本気で心配してくれていた。
まずは二人を優先することにして、ヴィッツの方は気にしない。
ヴィッツ完全無視で二人に笑顔を向ける。
「でもまだ終わりじゃない。みんなで無事にこれを乗り切るんだ。ダンジョンブレイクを終わらせて、平和を取り戻して、それでようやく終わりだ」
「そうだね。でももう1人で無茶しちゃダメだよ?」
「ごめんごめん。だって俺がいなくなってからこんなことになるなんて思わなかったんだよ」
まさかリュードが少し離れている間に門から撤退しているだなんて思いもしない。
確かに戦場を離れたリュードも悪いけど戦況が大きく変わってしまったのでリュードが全て悪いとは言い切れない。
「ラストの言葉でモノランのことを思い出してな。助けを借りるためにモノランを呼んだんだ」
「さっすがリューちゃん!」
「私の言葉のおかげってこと?」
「ま、そうだな」
「さっすが私!」
ラストのふとした嘆きがリュードに閃きをもたらした。
およそ賭けに近いものであったけれどモノランを呼ぶことができたし、協力を取り付けることもできた。
ラストのボヤきがなかったらモノランのことを思い出すことはなかっただろう。
「そうだな、ラストのおかげだな」
「ふへへっ」
褒められてラストも嬉しそうに笑う。
「んで、いつまで手を握ってるんですか?」
「放せと言われておりませんので」
「放してください」
「かしこまりました」
ヴィッツの茶目っ気はなかなかリュードには理解し難い。
どのような意図があるのか不明だけど時折ぶっ飛んだ冗談を言う。
雰囲気を和ませようとしているのだと好意的に考えておくことにした。
「シューナリュードさんですね?」
「あっ、はい。何でしょうか?」
声をかけられてルフォンとラストもリュードから離れる。
振り返るとリュードに声をかけたのはジグーズだった。
一瞬こんな時にイチャイチャしていたことを怒られるのかと思った。
「私たちがどうすればいいのか指示をくださいませんか?」
「俺が……ですか?」
なぜいきなりそんな話をしてくるのか、理解ができない。
「はい。あの神獣様をお連れになられたのはシューナリュードさんですから。私たちが神獣様にご命令をしてよいものかも分かりません。ですのでシューナリュードさんが神獣様と私たちがうまく立ち回れるように指示くださればと思いました」
外の様子を確認していたジグーズはリュードがモノランの背中に乗ってきたのをしっかりと見ていた。
モノランに助けられてきたような様子ではなく対等な関係に見えて何かしらの関係があるとジグーズは考えた。
雷を操る神獣の周りでうろちょろと戦えば神獣も冒険者も互いに力を出し切ることができない可能性がある。
どちらの側にも理解がありそうなリュードが指示を出すことが1番良いと判断を下した。
少なくとも神獣の邪魔にならないようにどうしたらいいのか相談ぐらいはしたかった。
それに北門での出来事について報告も受けていた。
1人正しい判断をして、咄嗟にデュラハンの剣も防いだ。
こんな緊急事態だからこそ正しく動けて実力もある人物を年齢や立場でなく考えて事態に当たるべきなのだ。
ジグーズは自分の判断のために主要な者をさっと説得してリュードの指示を仰ぐことにした。
「……そうですね、この状況を終わらせるためには結局ダンジョンブレイクを終わらせる必要があると思います。そしてそのためにデュラハンを倒すことが必要です」
偉そうに指示なんて出すことはできない。
あくまでも対等な立場での意見だと思ってリュードは口を開いた。
ダンジョンブレイクは自然に終わるものじゃない。
放っておいたとしても延々と魔物が中から出てくるだけである。
ダンジョンブレイクを終わらせるにはダンジョンのボスを倒すことが必要である。
今回ならデュラハンで、もうダンジョンの外に出てきていることも確認済みだ。
「まずはみんなで協力して周りにいる魔物から減らしましょう。そしたら俺たちがモノランとデュラハンのところまで行って倒してきます」
ダンジョンブレイクを終わらせて町を救うために、最終的には打って出るしかない。
「しかし、それでは……」
「やるしか生き延びる道はないんです。モノランは多分他の人じゃ言うこと聞いてくれないと思うので俺が行かなきゃいけないんです」
「うぅむ……」
モノランのことを考えると他の人を連れて行くことはできてもリュードが同行することは必須になる。
乗せて運んでいってと言ってもモノランは拒否するだろう。
ジグーズはリュードの提案に難色を示す。
リュードの実力は分からないし任せるには不安が大きい。
けれどだからといって今ここでデュラハンを相手できる冒険者もいない。
神獣と繋がりがあるということは、神様とも何かしらの繋がりがあるのかもしれない。
グルグルと頭の中で迷ったジグーズは最後は自分の勘を信じることにした。
「……分かった、君たちに任せたいと思います」