「期待してるぞ、ルフォン」
「そー言われちゃ断れないね。期待してて!」
ちょっとだけリュードとラストを2人きりで行かせることに抵抗を覚える。
けれど料理を期待していると言われては断れない。
『あれよ、胃袋掴んどきゃ大体の男は捕まえておけるわよ』
なんて自分の母親が言っていたことを思い出すルフォン。
実はルーミオラは料理が得意でなく、料理を何パターンかしか作らなくてそれをぐるぐるとループさせていた。
ウォーケックはそれで満足だったけれどルフォンはそうもいかない。
飽きがくるし、たまには別の料理も食べたくなる。
そんなわけで自分で作り始めたのが料理を始めた1つのきっかけでもある。
始めたきっかけはそんなではあるが続けている理由はリュードが美味しいと言ってくれるからである。
ついでにヴィッツにまだ聞けていない香辛料のことでも聞いてみようと前向きに考えた。
「それじゃあまず村長だな」
リュードとラストは家を出てまず村長のところに向かった。
話を聞くなら村の偉い人がいいだろうと思ったからである。
そうしてとりあえず目につく人に声をかけてミノタウロスについての情報を集めていく。
村の人はみんな協力的で出来る限りのことを教えてくれる。
村であるので規模は大きくなく人は多くないために情報収集もそれほど時間のかかることではなかった。
集まった情報は多少のズレはあってもまとめると1つの場所を指し示していた。
この村の北にある大きな湖付近にミノタウロスが出るというのであった。
魚が取れる大きな湖で村の人も漁をするので困っている。
小型の小動物系の魔物しかほとんど出てこない平和な村であったのに少し前からどこからか迷い込んできた。
まだ村まで来たことはないのだけどやはり不安でたまらないと話す村人もいた。
「確かにこんなところに現れたら不安だよね」
「そうだろうな」
ミノタウロスは牛型の魔物が突然変異的な進化を遂げてなることも稀にある。
かなり希少な例ではあるがいきなり現れたならそんなことが起きた可能性も否定できない。
後はどこかのナワバリ争いに負けて逃げてきたことも考えられる。
むしろこっちの方が現実的。
少なくとも追い払ってほしいという村人の期待がのしかかってくる。
料理ができるまではまだ時間があるだろうとミノタウロスをどう倒すか考えながらゆっくりと村を歩く。
「ねえ、旅って楽しい?」
「なんだいきなり。旅か、楽しいよ。ラストは楽しくないのか?」
急に口を開いたラストの質問にリュードはサラリと答える。
「あ、そっか、これも旅っちゃ旅か……そうだね……楽しい、かな」
リュードは楽しいと答えた。
そして今やっていることもある種の旅だろうという言葉にラストは一瞬面を食らった。
ほんのわずかに楽しいと口に出すことに迷いがあった。
楽しくないことは決してない。
楽しいのだけどクゼナのとことか大人の試練のこととか大事なことを抱えているのに、それでも楽しいと思ってしまっていて、それを口に出していいのか迷ったのだ。
それでも楽しい。
そう思える、そう言える。
自分が旅を楽しいと思っていることにラストは気づいた。
「楽しいんだ……」
思えばこんな風に旅に出て外を自由に歩くなんてことあまり経験がない。
まだ比較的平和だった子供の頃も王族なので護衛はついていた。
他の領地にラストが赴くことも少なく、大領主になってからは王の直轄地以外に行った記憶なんてほとんどない。
直轄地に行くのも馬車に乗って護衛に囲まれていた。
自分で歩いて宿も探して、さらにその上自分で準備して野営するなんてことあり得ないことである。
色んなことが初めてで最初は文句も言っていた。
今は慣れてきて文句も言わないしむしろ積極的に自分から動いて準備すらしている。
そんなことを感じるような旅じゃないのに思い返してみればとても楽しんでいた。
「あるいは……」
ラストは隣を歩くリュードの横顔を見た。
ご飯は何かなと上機嫌なリュードはうっすらと笑顔を浮かべている。
他の人との旅だったらこんなに楽しかっただろうか。
楽しいと思えるには楽しいなりの理由がある。
きっとリュードが一緒だから。
「ううん、これは違うの……」
ラストは頭を振って自分の中に浮かんだ考えを振り払う。
リュードとラストは今はこうして並んで歩いているけれど本来立場も違う同士である。
大人の試練が終わってしまえばお別れで、関わりなんてなくなってしまう。
「友達……そう、友達だから……」
それでも友達ではある。
きっと友達だから旅していても楽しいのだ。
なんだか妙に頬が熱い。
なぜなのか、ミノタウロスもリュードと共にならば倒せる気がしてくるラストなのであった。
ーーーーー
翌日の昼までのんびりと休んだ。
リュードとラスト、それにルフォンとコルトンは村の北にある湖を目指して出発した。
ミノタウロスと戦う時にはルフォンは手を出しちゃいけないけれど、道中の魔物と戦う時にルフォンが戦ってはいないルールはない。
そこに問題がないこともコルトンには確認済みである。
なので魔物に遭遇したらルフォンをメインにして戦っていく。
ヴィッツは荷物番として家でお留守番ということになっている。
別に盗みを働く不逞の輩がいるなんて思っちゃいない。
やってもらうことがヴィッツにはあったのである。
「そー言われちゃ断れないね。期待してて!」
ちょっとだけリュードとラストを2人きりで行かせることに抵抗を覚える。
けれど料理を期待していると言われては断れない。
『あれよ、胃袋掴んどきゃ大体の男は捕まえておけるわよ』
なんて自分の母親が言っていたことを思い出すルフォン。
実はルーミオラは料理が得意でなく、料理を何パターンかしか作らなくてそれをぐるぐるとループさせていた。
ウォーケックはそれで満足だったけれどルフォンはそうもいかない。
飽きがくるし、たまには別の料理も食べたくなる。
そんなわけで自分で作り始めたのが料理を始めた1つのきっかけでもある。
始めたきっかけはそんなではあるが続けている理由はリュードが美味しいと言ってくれるからである。
ついでにヴィッツにまだ聞けていない香辛料のことでも聞いてみようと前向きに考えた。
「それじゃあまず村長だな」
リュードとラストは家を出てまず村長のところに向かった。
話を聞くなら村の偉い人がいいだろうと思ったからである。
そうしてとりあえず目につく人に声をかけてミノタウロスについての情報を集めていく。
村の人はみんな協力的で出来る限りのことを教えてくれる。
村であるので規模は大きくなく人は多くないために情報収集もそれほど時間のかかることではなかった。
集まった情報は多少のズレはあってもまとめると1つの場所を指し示していた。
この村の北にある大きな湖付近にミノタウロスが出るというのであった。
魚が取れる大きな湖で村の人も漁をするので困っている。
小型の小動物系の魔物しかほとんど出てこない平和な村であったのに少し前からどこからか迷い込んできた。
まだ村まで来たことはないのだけどやはり不安でたまらないと話す村人もいた。
「確かにこんなところに現れたら不安だよね」
「そうだろうな」
ミノタウロスは牛型の魔物が突然変異的な進化を遂げてなることも稀にある。
かなり希少な例ではあるがいきなり現れたならそんなことが起きた可能性も否定できない。
後はどこかのナワバリ争いに負けて逃げてきたことも考えられる。
むしろこっちの方が現実的。
少なくとも追い払ってほしいという村人の期待がのしかかってくる。
料理ができるまではまだ時間があるだろうとミノタウロスをどう倒すか考えながらゆっくりと村を歩く。
「ねえ、旅って楽しい?」
「なんだいきなり。旅か、楽しいよ。ラストは楽しくないのか?」
急に口を開いたラストの質問にリュードはサラリと答える。
「あ、そっか、これも旅っちゃ旅か……そうだね……楽しい、かな」
リュードは楽しいと答えた。
そして今やっていることもある種の旅だろうという言葉にラストは一瞬面を食らった。
ほんのわずかに楽しいと口に出すことに迷いがあった。
楽しくないことは決してない。
楽しいのだけどクゼナのとことか大人の試練のこととか大事なことを抱えているのに、それでも楽しいと思ってしまっていて、それを口に出していいのか迷ったのだ。
それでも楽しい。
そう思える、そう言える。
自分が旅を楽しいと思っていることにラストは気づいた。
「楽しいんだ……」
思えばこんな風に旅に出て外を自由に歩くなんてことあまり経験がない。
まだ比較的平和だった子供の頃も王族なので護衛はついていた。
他の領地にラストが赴くことも少なく、大領主になってからは王の直轄地以外に行った記憶なんてほとんどない。
直轄地に行くのも馬車に乗って護衛に囲まれていた。
自分で歩いて宿も探して、さらにその上自分で準備して野営するなんてことあり得ないことである。
色んなことが初めてで最初は文句も言っていた。
今は慣れてきて文句も言わないしむしろ積極的に自分から動いて準備すらしている。
そんなことを感じるような旅じゃないのに思い返してみればとても楽しんでいた。
「あるいは……」
ラストは隣を歩くリュードの横顔を見た。
ご飯は何かなと上機嫌なリュードはうっすらと笑顔を浮かべている。
他の人との旅だったらこんなに楽しかっただろうか。
楽しいと思えるには楽しいなりの理由がある。
きっとリュードが一緒だから。
「ううん、これは違うの……」
ラストは頭を振って自分の中に浮かんだ考えを振り払う。
リュードとラストは今はこうして並んで歩いているけれど本来立場も違う同士である。
大人の試練が終わってしまえばお別れで、関わりなんてなくなってしまう。
「友達……そう、友達だから……」
それでも友達ではある。
きっと友達だから旅していても楽しいのだ。
なんだか妙に頬が熱い。
なぜなのか、ミノタウロスもリュードと共にならば倒せる気がしてくるラストなのであった。
ーーーーー
翌日の昼までのんびりと休んだ。
リュードとラスト、それにルフォンとコルトンは村の北にある湖を目指して出発した。
ミノタウロスと戦う時にはルフォンは手を出しちゃいけないけれど、道中の魔物と戦う時にルフォンが戦ってはいないルールはない。
そこに問題がないこともコルトンには確認済みである。
なので魔物に遭遇したらルフォンをメインにして戦っていく。
ヴィッツは荷物番として家でお留守番ということになっている。
別に盗みを働く不逞の輩がいるなんて思っちゃいない。
やってもらうことがヴィッツにはあったのである。