「あんた何言ってるか分かってんの?」
我慢しきれずラストがコルトンに詰め寄る。
挑むにはリスクが大きすぎる。
異常な試練であることはコルトンにも分かるはずだ。
やるならヴィッツやルフォンも入れてほしいぐらいで、むしろそれぐらいが最低ラインな難易度である。
「……そう言われましても私も仕事でやっているだけですので」
ムスッとした不機嫌そうな表情を崩さないコルトンは冷静に答えた。
元々怒っているかのような表情なのでラストの行動をどう感じているのかは顔から読み取ることができない。
「……はぁ」
一介の役人にしかすぎないコルトンに詰め寄っても勝手に大人の試練を変更する権限なんてものもない。
どうしようもないのはコルトンも同じなのである。
ラストはため息をついて項垂れた。
「試練おやめになられますか?」
「……やめないよ!」
コルトンにある権限としては試練を止めるかどうかか聞き受けることだけである。
だが何もしないでここで引くことはできない。
「まあやるだけやってみよう。ダンジョンと違って逃げることもできるし、正面からわざわざ挑むこともない。ダメそうなら策を考えればいいし、何回だって挑めばいいんだ」
やってみるだけやればいい。
ダンジョンだったらボス部屋は閉じてしまうので生きるか死ぬかしかないけれど、ダンジョン以外なら逃げることだってできる。
準備をし直すことも、罠や策を用意することだってできるのだ。
代わりに地形の問題や他の魔物の乱入などダンジョンでは考えられない問題もあるので一長一短なところはある。
とりあえず偵察だけでも行って考えてみればいい。
「うぅ〜、よくそんな余裕でいられるね?」
「余裕なわけじゃないさ。やるだけやってみるってだけ」
「それがよゆーなのー!」
「どうせやることになるんだから覚悟を決めてんだよ」
「こっちは覚悟なんてまだ決まってませーん!」
正直な話、リュードもミノタウロスを余裕な相手だなんて言えはしない。
戦ったこともないので正確な評価も下せないが少なくとも大変な相手であることは間違いない。
だがやるしかないのならやる方向で思考を持っていく。
どうやって倒すのかを考えた方がいいだろう。
「この村の北にいるそうなので後はご自分でお確かめください。ちなみにミノタウロスは下級らしいです」
さらっと大事なことを言ってのける。
ミノタウロス討伐と聞くと単に倒せばいいとだけ思いがちである。
しかし倒すことの前にまずはミノタウロスを探すことから始めなければいけないのである。
ここがまたダンジョンとは違う厄介なところである。
大まかな場所は教えてくれるけれど魔物もジッと一箇所にとどまっているものではなく動くので、情報集めや痕跡集めをして魔物を探さなきゃいけない。
とりあえずコルトンは村の北側にいるらしいと言うことを教えてくれたけれど北側だけでは探すことも難しい。
そして下級という情報もあった。
こちらは捜索には直接関係がなくミノタウロス本体に関わる情報だ。
同名の魔物であっても大きく個体差がある魔物もいる。
ハイトロールのように再生力特化かパワー特化なんて違いがあることもあるし、ミノタウロスの場合は大きさにバラツキがある。
ギルドが主観で分けるもので若干の曖昧さはあるけれど、ミノタウロスは上中下と3つに分けられている。
下級とはミノタウロスの中でも小さめの個体ということで、体の大きさが強さに直結してくるミノタウロスでは弱い個体であると同義でもある。
中級や上級に比べれば楽な相手。
あくまでミノタウロスの中で比較した場合ではあるが。
「下級か……なら少しは希望があるな」
まだ楽観視することのできないのには変わりないが少しは勝てる希望も見えてくる。
そしてミノタウロスに関してリュードには別の思惑も持っていた。
「それでは一度失礼します。大人の試練に挑まれる時はお呼びください」
深く礼をしてコルトンは家を出ていく。
「あーぁ……また面倒な相手だなぁ」
ラストがボヤく。
リュードも同じ感想だから何も言わない。
大人の試練も折り返しなのに一切手を抜いてこない。
ミノタウロスなんて大変な相手だけどギルドが依頼を出せばやりたがる冒険者は少なくない。
むしろ喜んでやる人もいるはずなのに、それを大人の試練としてやらせるとはなかなか性格の悪いことをする。
「まずは情報収集だな。旅の疲れもあるからちょっとのんびりと人に話でも聞いて情報を集めるとしようか」
ど田舎であるので道のりは遠く、魔物の襲撃もあった。
そんなに疲れるものでもないけれど野外に泊まることではあまり癒されないので疲れは溜まっていく。
ちゃんと体調を整える必要性もある。
それに北側にいるなんてコルトンの情報だけ信じて探し回っては時間や体力の無駄になる可能性もある。
村の人に聞いて情報を確かめる必要があった。
ある程度ミノタウロスのいる場所のあたりをつけられれば楽になるし、バッタリと遭遇してしまう危険も減らせる。
「ということで、俺とラストが話聞いてくるからルフォンはヴィッツと美味いものでも作ってくれよ」
外では焚き火しかなかった。
手間をかけた料理なんてものは作れない。
できて軽く炙って温めるぐらいなのでリュードは温かいちゃんとした料理に飢えていた。
我慢しきれずラストがコルトンに詰め寄る。
挑むにはリスクが大きすぎる。
異常な試練であることはコルトンにも分かるはずだ。
やるならヴィッツやルフォンも入れてほしいぐらいで、むしろそれぐらいが最低ラインな難易度である。
「……そう言われましても私も仕事でやっているだけですので」
ムスッとした不機嫌そうな表情を崩さないコルトンは冷静に答えた。
元々怒っているかのような表情なのでラストの行動をどう感じているのかは顔から読み取ることができない。
「……はぁ」
一介の役人にしかすぎないコルトンに詰め寄っても勝手に大人の試練を変更する権限なんてものもない。
どうしようもないのはコルトンも同じなのである。
ラストはため息をついて項垂れた。
「試練おやめになられますか?」
「……やめないよ!」
コルトンにある権限としては試練を止めるかどうかか聞き受けることだけである。
だが何もしないでここで引くことはできない。
「まあやるだけやってみよう。ダンジョンと違って逃げることもできるし、正面からわざわざ挑むこともない。ダメそうなら策を考えればいいし、何回だって挑めばいいんだ」
やってみるだけやればいい。
ダンジョンだったらボス部屋は閉じてしまうので生きるか死ぬかしかないけれど、ダンジョン以外なら逃げることだってできる。
準備をし直すことも、罠や策を用意することだってできるのだ。
代わりに地形の問題や他の魔物の乱入などダンジョンでは考えられない問題もあるので一長一短なところはある。
とりあえず偵察だけでも行って考えてみればいい。
「うぅ〜、よくそんな余裕でいられるね?」
「余裕なわけじゃないさ。やるだけやってみるってだけ」
「それがよゆーなのー!」
「どうせやることになるんだから覚悟を決めてんだよ」
「こっちは覚悟なんてまだ決まってませーん!」
正直な話、リュードもミノタウロスを余裕な相手だなんて言えはしない。
戦ったこともないので正確な評価も下せないが少なくとも大変な相手であることは間違いない。
だがやるしかないのならやる方向で思考を持っていく。
どうやって倒すのかを考えた方がいいだろう。
「この村の北にいるそうなので後はご自分でお確かめください。ちなみにミノタウロスは下級らしいです」
さらっと大事なことを言ってのける。
ミノタウロス討伐と聞くと単に倒せばいいとだけ思いがちである。
しかし倒すことの前にまずはミノタウロスを探すことから始めなければいけないのである。
ここがまたダンジョンとは違う厄介なところである。
大まかな場所は教えてくれるけれど魔物もジッと一箇所にとどまっているものではなく動くので、情報集めや痕跡集めをして魔物を探さなきゃいけない。
とりあえずコルトンは村の北側にいるらしいと言うことを教えてくれたけれど北側だけでは探すことも難しい。
そして下級という情報もあった。
こちらは捜索には直接関係がなくミノタウロス本体に関わる情報だ。
同名の魔物であっても大きく個体差がある魔物もいる。
ハイトロールのように再生力特化かパワー特化なんて違いがあることもあるし、ミノタウロスの場合は大きさにバラツキがある。
ギルドが主観で分けるもので若干の曖昧さはあるけれど、ミノタウロスは上中下と3つに分けられている。
下級とはミノタウロスの中でも小さめの個体ということで、体の大きさが強さに直結してくるミノタウロスでは弱い個体であると同義でもある。
中級や上級に比べれば楽な相手。
あくまでミノタウロスの中で比較した場合ではあるが。
「下級か……なら少しは希望があるな」
まだ楽観視することのできないのには変わりないが少しは勝てる希望も見えてくる。
そしてミノタウロスに関してリュードには別の思惑も持っていた。
「それでは一度失礼します。大人の試練に挑まれる時はお呼びください」
深く礼をしてコルトンは家を出ていく。
「あーぁ……また面倒な相手だなぁ」
ラストがボヤく。
リュードも同じ感想だから何も言わない。
大人の試練も折り返しなのに一切手を抜いてこない。
ミノタウロスなんて大変な相手だけどギルドが依頼を出せばやりたがる冒険者は少なくない。
むしろ喜んでやる人もいるはずなのに、それを大人の試練としてやらせるとはなかなか性格の悪いことをする。
「まずは情報収集だな。旅の疲れもあるからちょっとのんびりと人に話でも聞いて情報を集めるとしようか」
ど田舎であるので道のりは遠く、魔物の襲撃もあった。
そんなに疲れるものでもないけれど野外に泊まることではあまり癒されないので疲れは溜まっていく。
ちゃんと体調を整える必要性もある。
それに北側にいるなんてコルトンの情報だけ信じて探し回っては時間や体力の無駄になる可能性もある。
村の人に聞いて情報を確かめる必要があった。
ある程度ミノタウロスのいる場所のあたりをつけられれば楽になるし、バッタリと遭遇してしまう危険も減らせる。
「ということで、俺とラストが話聞いてくるからルフォンはヴィッツと美味いものでも作ってくれよ」
外では焚き火しかなかった。
手間をかけた料理なんてものは作れない。
できて軽く炙って温めるぐらいなのでリュードは温かいちゃんとした料理に飢えていた。