「は、針を刺すってそんな治療あるんですか?」
動揺した様子でラストがリュードに聞く。
「そういう治療法もあるよ、少ないけどね」
モノランの予想通りに一応知っていたのでリュードも答える。
針治療は単純に針を体に刺すものだけでなく薬を塗ったり時には魔力を針に込めて打ち込むことで体に良い効果をもたらす治療法である。
主に細い針を使ってやっていくのだけれどメジャーな方法とはいえずラストが知らないのも無理はない。
どうしてリュードはそんなことを知っているかというと、リュードも針治療が出来るからである。
リュードがいた村にはなんと針治療が出来る爺さんがいたのである。
その爺さんはたまたま縁があって針治療を教えてもらったらしく、村では体がほぐれていいと評判であった。
魔物の毒に侵されて危険な状態にあった若者を針に薬を塗って打ち込んで助けたことも過去にはあったのだ。
「へぇ、そんなのがあるんだ」
リュードは普通の子供じゃなかった。
前世の記憶があるからそれも当然なのだけど針治療にも興味を持って爺さんに色々と質問したりした。
他の子供が興味を持つはずもないことに興味を持って聞いてくるので爺さんはリュードのことをいたく気に入った。
特別な日に針で父親でも治療してやると喜ぶぞなんて誘い文句もあってリュードは時々爺さんのところで針治療のことを学んでいた。
爺さんは何歳だったか誕生日の時にはリュードのために治療用の針まで作ってプレゼントしてくれるなんて嬉しいこともあったものだと思い出す。
何かの役に立つかとリュードはその針も持ってきている。
「そうなんですか……」
ラストは律儀に知らぬ針での治療もメモを取る。
ただメモだけで針治療は難しいだろうなとリュードは少し苦い顔をした。
「これで石化病については大丈夫だろう。私の約束は果たした。ついでに少し待ってやるからそのクゼナとかいう娘を連れて早く逃げるといい。そしたら私はプジャンとかいうやつとしっかりと話し合いをすることにしよう」
「……分かりました。ありがとうございます。ただ、すぐに神殿も建てられるものではありませんし、私にもやることがあるので少しお時間はいただいてもいいですか?」
「すぐに神殿が建つものではないことは私も分かっている。これまで長い時間を過ごしてきたのだ、もう少しぐらい待つこともできる。ただ早く作ってはほしいがな」
ラストは大人の試練をやらなきゃいけない。
もし大人の試練をクリアすることができなきゃ神殿を建てるという約束も果たすことは不可能になってしまう。
「最後に1つ頼みがあるのですがいいですか?」
「なんでしょうか?」
「お前ではなくリュードに言っている」
別に一緒に聞いているのだからいいじゃないかとも思うがモノランは徹底してリュード以外に心を開かない。
雷の神獣であるモノランは雷の神様の加護があるリュードに対してとても敬意を払っている。
それ以外の人に対してはモノランの態度が悪く、当たりが強い。
「俺も聞いてるから。頼みって何?」
「頼みとはその子を頂上まで運んでやってほしいのです」
態度悪いし断ってやろうかなんて考えていた。
そんな考えも一瞬で吹き飛ぶ頼みだった。
声のトーンを落としてうなだれるようにして言われた頼みを断れるわけもない。
リュードは血で汚れることも厭わず自分のマントで亡くなった神獣の子を包む。
暗殺者が背負っていた薄汚れた袋に入れられないし、他にも子がいるらしく姿を見せられないので何かで隠してほしいと言われたためだ。
布に血が滲み気分が良くない感触が腕に伝わるけれどリュードはしっかりと優しく神獣の子を持ち上げて運び始めた。
モノランが電気の玉を出して周りを照らし、リュードたちはさっさと後片付けをしてモノランの後ろをついていく。
少し前までは行くとは思いもしなかった山頂への道を登っていく。
「モノお姉ちゃん!」
「お姉ちゃーん!」
空がうっすらと赤くなり始めてきた。
そのぐらいの時間登ってきてようやく傾斜が緩やかになって山頂に辿り着いた。
山の上は水平に切り取られたように平地になっていて、山肌と違って背の低い草が生えていた。
登ってきたモノランを見て、ミニモノランのような神獣の子が2匹、モノランに寄ってくる。
「メノランお姉ちゃんは?」
「……ごめんね」
無邪気な質問。
無事だと信じて投げかけた質問にモノランはゆっくりと首を振る。
「……ウソだ! ウソだよね、ウソって言うよね!」
「ねぇ、冗談って言ってよ、メノランお姉ちゃんはどこにいるの!」
グッと胸が締め付けられる。
どうしてこんな時に出会うのが人の言葉が話せる魔物なのだと思う。
悲痛な叫びの全てが分かってしまう。
これが人の言葉でなかったのなら、意味が理解できなかったならどれだけよかっただろうか。
見ていられなくて視線を落とすとリュードの手の中には神獣の子の遺体が包まれている。
これが話にあるメノランなのだろう。
なぜこんなことをしたのか。
やりようはいくらでもあったはずなのにこんな方法を選んだ意味を知りたい。
会ったこともないプジャンに怒りが湧いてくる。
動揺した様子でラストがリュードに聞く。
「そういう治療法もあるよ、少ないけどね」
モノランの予想通りに一応知っていたのでリュードも答える。
針治療は単純に針を体に刺すものだけでなく薬を塗ったり時には魔力を針に込めて打ち込むことで体に良い効果をもたらす治療法である。
主に細い針を使ってやっていくのだけれどメジャーな方法とはいえずラストが知らないのも無理はない。
どうしてリュードはそんなことを知っているかというと、リュードも針治療が出来るからである。
リュードがいた村にはなんと針治療が出来る爺さんがいたのである。
その爺さんはたまたま縁があって針治療を教えてもらったらしく、村では体がほぐれていいと評判であった。
魔物の毒に侵されて危険な状態にあった若者を針に薬を塗って打ち込んで助けたことも過去にはあったのだ。
「へぇ、そんなのがあるんだ」
リュードは普通の子供じゃなかった。
前世の記憶があるからそれも当然なのだけど針治療にも興味を持って爺さんに色々と質問したりした。
他の子供が興味を持つはずもないことに興味を持って聞いてくるので爺さんはリュードのことをいたく気に入った。
特別な日に針で父親でも治療してやると喜ぶぞなんて誘い文句もあってリュードは時々爺さんのところで針治療のことを学んでいた。
爺さんは何歳だったか誕生日の時にはリュードのために治療用の針まで作ってプレゼントしてくれるなんて嬉しいこともあったものだと思い出す。
何かの役に立つかとリュードはその針も持ってきている。
「そうなんですか……」
ラストは律儀に知らぬ針での治療もメモを取る。
ただメモだけで針治療は難しいだろうなとリュードは少し苦い顔をした。
「これで石化病については大丈夫だろう。私の約束は果たした。ついでに少し待ってやるからそのクゼナとかいう娘を連れて早く逃げるといい。そしたら私はプジャンとかいうやつとしっかりと話し合いをすることにしよう」
「……分かりました。ありがとうございます。ただ、すぐに神殿も建てられるものではありませんし、私にもやることがあるので少しお時間はいただいてもいいですか?」
「すぐに神殿が建つものではないことは私も分かっている。これまで長い時間を過ごしてきたのだ、もう少しぐらい待つこともできる。ただ早く作ってはほしいがな」
ラストは大人の試練をやらなきゃいけない。
もし大人の試練をクリアすることができなきゃ神殿を建てるという約束も果たすことは不可能になってしまう。
「最後に1つ頼みがあるのですがいいですか?」
「なんでしょうか?」
「お前ではなくリュードに言っている」
別に一緒に聞いているのだからいいじゃないかとも思うがモノランは徹底してリュード以外に心を開かない。
雷の神獣であるモノランは雷の神様の加護があるリュードに対してとても敬意を払っている。
それ以外の人に対してはモノランの態度が悪く、当たりが強い。
「俺も聞いてるから。頼みって何?」
「頼みとはその子を頂上まで運んでやってほしいのです」
態度悪いし断ってやろうかなんて考えていた。
そんな考えも一瞬で吹き飛ぶ頼みだった。
声のトーンを落としてうなだれるようにして言われた頼みを断れるわけもない。
リュードは血で汚れることも厭わず自分のマントで亡くなった神獣の子を包む。
暗殺者が背負っていた薄汚れた袋に入れられないし、他にも子がいるらしく姿を見せられないので何かで隠してほしいと言われたためだ。
布に血が滲み気分が良くない感触が腕に伝わるけれどリュードはしっかりと優しく神獣の子を持ち上げて運び始めた。
モノランが電気の玉を出して周りを照らし、リュードたちはさっさと後片付けをしてモノランの後ろをついていく。
少し前までは行くとは思いもしなかった山頂への道を登っていく。
「モノお姉ちゃん!」
「お姉ちゃーん!」
空がうっすらと赤くなり始めてきた。
そのぐらいの時間登ってきてようやく傾斜が緩やかになって山頂に辿り着いた。
山の上は水平に切り取られたように平地になっていて、山肌と違って背の低い草が生えていた。
登ってきたモノランを見て、ミニモノランのような神獣の子が2匹、モノランに寄ってくる。
「メノランお姉ちゃんは?」
「……ごめんね」
無邪気な質問。
無事だと信じて投げかけた質問にモノランはゆっくりと首を振る。
「……ウソだ! ウソだよね、ウソって言うよね!」
「ねぇ、冗談って言ってよ、メノランお姉ちゃんはどこにいるの!」
グッと胸が締め付けられる。
どうしてこんな時に出会うのが人の言葉が話せる魔物なのだと思う。
悲痛な叫びの全てが分かってしまう。
これが人の言葉でなかったのなら、意味が理解できなかったならどれだけよかっただろうか。
見ていられなくて視線を落とすとリュードの手の中には神獣の子の遺体が包まれている。
これが話にあるメノランなのだろう。
なぜこんなことをしたのか。
やりようはいくらでもあったはずなのにこんな方法を選んだ意味を知りたい。
会ったこともないプジャンに怒りが湧いてくる。