なんだか刺客が持つにしてはおかしい物だと確認しようとしたところだった。
嫌な予感がしてリュードの背中にゾワリとした冷たいものが走った。
ペラフィランの言葉から中に何が入っているのか分かってしまったのである。
魔人化を解いたリュードが刺客の死体に近づく。
剣で袋の紐を切って刺客から外す。
袋に手を伸ばすとずっしりとした重みがある。
袋の口を開けて中身を優しく外に出す。
「あぁ……」
泣きそうな声がペラフィランから漏れる。
分かっていてもそうであってほしくなかった。
ペラフィランをかなり小さくしたような魔物の死体が中から出てきてリュードは思わず目を逸らした。
黒いために分かりにくいが、血にまみれていて全身がひどく切り付けられている。
魔物相手でもこれはひどいとリュードは吐き気がする思いがしている。
見ていられなくて顔を背けたのはペラフィランだけでなくラストもだった。
魔物に同情をしないルフォンやヴィッツでさえもむごたらしく思える姿だった。
「どうしてこんなことを……」
「雷の加護を受けしものよ」
「……リュードでいいですよ」
「リュード、どうしてあなたたちがここにいるのか聞いてもいいですか」
「ああ、もちろん」
リュードはペラフィランにここに来ることになった経緯を話した。
ペラフィランはこの状況、子が殺されてさらわれて、リュードたちがその場にいたことが偶然ではないと思った。
リュードも話しながらこんなことになった原因が、直接的でないにしろ、自分たちにもいくらか関係があることに気づいて正直に話した。
ペラフィランは先ほどまでの態度がウソのように穏やかにリュードの話を聞いていた。
加護をかける必要もない。
リュードが嘘偽りなく話し、わざわざ原因の一端は自分たちにもあると言い切った。
「いいえ、これはあなたたちのせいではありません。長いこと人が来ることもなく警戒を怠りました。あの子たちにもっと警戒するように教えませんでした。
よく確認もせずにあなたたちを襲ってしまったのは私の早とちりでした」
怒りに我を忘れなきゃペラフィランはちゃんと会話が通じた。
「そのプジャンとかいう者としっかりと話す必要がありそうですね」
「ま、待ってください!」
殺気立つペラフィランの体からバチバチと電撃がほとばしる。
話すだけじゃどうにも留まらなそうな気配がしているペラフィランに待ったをかけたのはラストだった。
「何ですか? 私はリュード以外に会話を許した覚えはありませんよ」
ペラフィランの鋭い殺気が向けられてラストがたじろぐ。
けれどラストもグッと勇気を出して一歩前に出る。
「プジャン兄さんを殺さないでください!」
「何故ですか? 兄というからには兄妹愛ですか? 理解しなくもないですがそんなもので私は止められませんよ。邪魔をするならあなたも許しません……」
プジャンという兄のこと、ラストも良く思っていなかったのに一体どうしたのかとリュードは眉をひそめた。
「待ってください、ペラフィラン。せめて話だけでも聞いてください」
何かしらの事情がある。
それを察したリュードは双方の間に入る。
「……分かりました。リュードの頼みなら話だけは聞きましょう。それに私はペラフィランではありません。それは私の祖母の名前で、私はモノランです」
「あっ、はい」
ペラフィランじゃなかったのかと驚く。
ずいぶんと長命な魔物だと思っていたのだが誰も知らないうちに代替わりしていた。
祖母ということはモノランにはペラフィランという祖母がいて、モノランの母がいて、モノランがいる。
さらに子がいてもう4代目まできていることになる。
何百年も生きているような伝説級の魔物ではなかったのだ。
「聞いてやるから早く言いなさい」
「プジャン兄さんは殺してもいいというか、殺してほしいぐらいなんです。でもプジャン兄さんが死んでしまうとクゼナが死んでしまうんです!」
「クゼナ?」
「私の大切な友達で腹違いの姉です」
「だから?」
「えっ?」
「だからそのクゼナが私に何の関係があるというのですか?」
知らん友達を出されてもそれで説得するのは無理だろうとリュードも思う。
子を殺された恨みを止めるだけの理由が必要になる。
事情は分からないけれど自分の姉が死んでしまうから殺さないでくれというのは本人にとっては大事でもモノランにとっては他人事でしかない。
関係のない話でプジャンを殺すのをやめてくれと言われてもモノランには受け入れられない話であった。
「そ、それにクゼナが死んでしまうと今後ここで生活することは出来なくなってしまうと思いますよ!」
「ほう? 今度は言うに事欠いて私を脅すというのか?」
「あっ、いえ……そんなつもりじゃ……」
リュードの耳にも手を出せばただじゃおかないぞっていう脅し文句にも聞こえた。
だがラストは必死に説得を試みようとしていて結果的に脅しのようになっているだけなのだ。
「クゼナを助けてくれたら今後は静かに暮らせますよ……?」
言い方を変えただけじゃないかとため息が出そうになる。
「ま、待て待て待て! どうしてそのクゼナを殺してしまったらモノランが困ることになる。それにどうしてプジャンを殺すとそのクゼナって子まで殺すことになってしまうんだ?」
モノランが面倒だからコイツもやってしまおうかみたいな目でラストをみているので慌ててリュードが助け舟を出す。
このままでは説明も何も足りていない。
ラストがクゼナという子のためにモノランを止めようとしていることはとりあえず伝わったのでもう少し細かな説明をするように促す。
「えっと、それは、プジャン兄さんを倒すと……」
ラストが必死に説明する。
嫌な予感がしてリュードの背中にゾワリとした冷たいものが走った。
ペラフィランの言葉から中に何が入っているのか分かってしまったのである。
魔人化を解いたリュードが刺客の死体に近づく。
剣で袋の紐を切って刺客から外す。
袋に手を伸ばすとずっしりとした重みがある。
袋の口を開けて中身を優しく外に出す。
「あぁ……」
泣きそうな声がペラフィランから漏れる。
分かっていてもそうであってほしくなかった。
ペラフィランをかなり小さくしたような魔物の死体が中から出てきてリュードは思わず目を逸らした。
黒いために分かりにくいが、血にまみれていて全身がひどく切り付けられている。
魔物相手でもこれはひどいとリュードは吐き気がする思いがしている。
見ていられなくて顔を背けたのはペラフィランだけでなくラストもだった。
魔物に同情をしないルフォンやヴィッツでさえもむごたらしく思える姿だった。
「どうしてこんなことを……」
「雷の加護を受けしものよ」
「……リュードでいいですよ」
「リュード、どうしてあなたたちがここにいるのか聞いてもいいですか」
「ああ、もちろん」
リュードはペラフィランにここに来ることになった経緯を話した。
ペラフィランはこの状況、子が殺されてさらわれて、リュードたちがその場にいたことが偶然ではないと思った。
リュードも話しながらこんなことになった原因が、直接的でないにしろ、自分たちにもいくらか関係があることに気づいて正直に話した。
ペラフィランは先ほどまでの態度がウソのように穏やかにリュードの話を聞いていた。
加護をかける必要もない。
リュードが嘘偽りなく話し、わざわざ原因の一端は自分たちにもあると言い切った。
「いいえ、これはあなたたちのせいではありません。長いこと人が来ることもなく警戒を怠りました。あの子たちにもっと警戒するように教えませんでした。
よく確認もせずにあなたたちを襲ってしまったのは私の早とちりでした」
怒りに我を忘れなきゃペラフィランはちゃんと会話が通じた。
「そのプジャンとかいう者としっかりと話す必要がありそうですね」
「ま、待ってください!」
殺気立つペラフィランの体からバチバチと電撃がほとばしる。
話すだけじゃどうにも留まらなそうな気配がしているペラフィランに待ったをかけたのはラストだった。
「何ですか? 私はリュード以外に会話を許した覚えはありませんよ」
ペラフィランの鋭い殺気が向けられてラストがたじろぐ。
けれどラストもグッと勇気を出して一歩前に出る。
「プジャン兄さんを殺さないでください!」
「何故ですか? 兄というからには兄妹愛ですか? 理解しなくもないですがそんなもので私は止められませんよ。邪魔をするならあなたも許しません……」
プジャンという兄のこと、ラストも良く思っていなかったのに一体どうしたのかとリュードは眉をひそめた。
「待ってください、ペラフィラン。せめて話だけでも聞いてください」
何かしらの事情がある。
それを察したリュードは双方の間に入る。
「……分かりました。リュードの頼みなら話だけは聞きましょう。それに私はペラフィランではありません。それは私の祖母の名前で、私はモノランです」
「あっ、はい」
ペラフィランじゃなかったのかと驚く。
ずいぶんと長命な魔物だと思っていたのだが誰も知らないうちに代替わりしていた。
祖母ということはモノランにはペラフィランという祖母がいて、モノランの母がいて、モノランがいる。
さらに子がいてもう4代目まできていることになる。
何百年も生きているような伝説級の魔物ではなかったのだ。
「聞いてやるから早く言いなさい」
「プジャン兄さんは殺してもいいというか、殺してほしいぐらいなんです。でもプジャン兄さんが死んでしまうとクゼナが死んでしまうんです!」
「クゼナ?」
「私の大切な友達で腹違いの姉です」
「だから?」
「えっ?」
「だからそのクゼナが私に何の関係があるというのですか?」
知らん友達を出されてもそれで説得するのは無理だろうとリュードも思う。
子を殺された恨みを止めるだけの理由が必要になる。
事情は分からないけれど自分の姉が死んでしまうから殺さないでくれというのは本人にとっては大事でもモノランにとっては他人事でしかない。
関係のない話でプジャンを殺すのをやめてくれと言われてもモノランには受け入れられない話であった。
「そ、それにクゼナが死んでしまうと今後ここで生活することは出来なくなってしまうと思いますよ!」
「ほう? 今度は言うに事欠いて私を脅すというのか?」
「あっ、いえ……そんなつもりじゃ……」
リュードの耳にも手を出せばただじゃおかないぞっていう脅し文句にも聞こえた。
だがラストは必死に説得を試みようとしていて結果的に脅しのようになっているだけなのだ。
「クゼナを助けてくれたら今後は静かに暮らせますよ……?」
言い方を変えただけじゃないかとため息が出そうになる。
「ま、待て待て待て! どうしてそのクゼナを殺してしまったらモノランが困ることになる。それにどうしてプジャンを殺すとそのクゼナって子まで殺すことになってしまうんだ?」
モノランが面倒だからコイツもやってしまおうかみたいな目でラストをみているので慌ててリュードが助け舟を出す。
このままでは説明も何も足りていない。
ラストがクゼナという子のためにモノランを止めようとしていることはとりあえず伝わったのでもう少し細かな説明をするように促す。
「えっと、それは、プジャン兄さんを倒すと……」
ラストが必死に説明する。