奇襲は失敗した。
てっきり逃げていくものだと思ったら刺客たちは襲いかかってきた。
「リュード、右だよ!」
ラストの武器は弓である。
なので前に出て戦うのではなく夜目の効かないリュードのサポートをすることにした。
ラストの言葉に従って敵がいる方向を警戒する。
焚き火の光にわずかに照らされて黒い影が見える。
わざわざ闇の中に飛び込んで戦う理由などなく、リュードは手を出さずに相手を根気強く待つ。
相手が痺れを切らしてリュードに接近してくると焚き火によってその姿が分かるようになる。
だがリュードは防御に徹し、相手を深追いはしない。
「うっ……」
「ふふん、ちゃんと見えてるんだな!」
そうするとラストがしっかりと矢を相手にお見舞いしてくれる。
闇に飛び込んで逃げようとした刺客の腕に矢が刺さり大きく怯む。
その隙をついてリュードが刺客を切り捨てる。
ダンジョンでも共に戦ったし、ラストが信頼のおける射手であることは分かっていた。
「よくやった、ラスト」
「ふふ、これぐらい任せて!」
リュードとラストは男が動かなくなったことを確認するとルフォンたちの援護に向かう。
苦戦しているようにはとても見えなかったけれど戦いにおいて大丈夫だろうなんて軽く見ている暇なんてない。
「はっ!」
刺客は横から切り付けてきたリュードにも対応して防いでみせた。
かなり良い反応、優秀である。
ただしリュードに反応してみせていたのは刺客だけではなかった。
ルフォンもまたリュードが来ていることをわかっていて、さらに一手先の攻撃を仕掛けていた。
そこまでは対応しきれなかった。
胸にナイフが突き刺さった刺客は目を大きく見開いて力なく倒れた。
まさかこんなに若くみえるルフォンがためらいもなく人を倒してしまうことに驚きながら。
「ヴィッツさんは……心配いらなかったようだな」
刺客の確認をルフォンに任せてヴィッツの方を向くとすでにヴィッツは1人で刺客を片付けていた。
剣の血を拭き、涼しい顔をしている。
暗闇から飛んできたナイフへの反応といい、やはり相当な実力者でただの執事ではない。
サキュルディオーネの言葉を疑っていたのではないが行動の端々に優秀さが滲み出ている。
「思っていたよりも直接的な行動を取ってきましたな」
死体を引きずってきて一か所に集める。
他に野営できそうな場所があるとは思えないので夜が明けるまではこの野営地に留まるしかない。
仕方ないので死体を少し離れたところに運んで処理することにした。
魔物の気配が周りにないので寄ってくることはないと思うのであるが、ペラフィランなる魔物が血の臭いを嗅ぎつけてくるかもしれない。
魔力はもったいないけど魔法で一気に燃やしてしまう。
「しかし、こいつ何を背負っているんだ?」
奇襲してきた刺客の1人は背中に大きな荷物を背負っていた。
動くにも邪魔そうだし中身も入っていて重そうであった。
わざわざ野営道具を持って奇襲に来たとは考えにくいし、中身がなんとなく気になった。
「それになんだかこいつじゃなくて、この袋からも血が出ているような……」
「貴様らァァァ!」
不思議な声が響いてきた。
男でもなく女でもないような、それでいて腹の奥底に響くような、そんな声。
山の上から降りてきたそれはリュードたちの前に降り立った。
「デカい、イタチ……」
遠からずも、そのまんまイタチでもなかった。
どこかゲームに出てくるモンスターのようなイタチを大きくデフォルメしたような出立ちをしたモンスターがリュードたちの前に現れた。
これがペラフィランなのだとその場にいたみんなが察した。
こんなに巨大で力強さを感じさせる魔物が他にいるはずがない。
「全員殺してやる!」
「な、避けろ!」
リュードだから分かった。
全身の毛が引き寄せられるような感覚に襲われ、雷属性の魔法の兆候だと瞬時に察した。
ヴィッツとルフォンはリュードの声に反応して飛び退いた。
けれどラストはペラフィランの雰囲気に飲まれてしまった。
経験の差がここで表れたのだ。
「リューちゃん!」
「ぐああっ!」
リュードは逃げ遅れたラストの体を強く押した。
その瞬間にリュードはラストを狙って落ちてきた雷に打たれてしまった。
「リュ、リュード!」
「……なぜこんなことをなさるのですか!」
ヴィッツはペラフィランと対話を試みる。
言葉が通じる以上試してみる価値はある。
ペラフィランがヴィッツの方を向き、その間にルフォンがリュードに駆け寄る。
「なぜだと? 貴様らがやったことを見てみろ! 貴様ら……いや、この国の連中全員殺してやる!」
ペラフィランは完全に頭に血が上っている。
会話に要領を得ず今にも襲いかかってきそうな勢いである。
なぜ怒っているのか理由を予想することもできない。
なぜペラフィランが怒っているのかヒントすらなくヴィッツも剣を構えたまま冷や汗を流す。
リュードたちにペラフィランを怒らせるような原因は思いつかないので、襲撃してきた刺客が何かをしたことは間違いない。
何かをしたのだろうけど何をしたのか全く分からない。
てっきり逃げていくものだと思ったら刺客たちは襲いかかってきた。
「リュード、右だよ!」
ラストの武器は弓である。
なので前に出て戦うのではなく夜目の効かないリュードのサポートをすることにした。
ラストの言葉に従って敵がいる方向を警戒する。
焚き火の光にわずかに照らされて黒い影が見える。
わざわざ闇の中に飛び込んで戦う理由などなく、リュードは手を出さずに相手を根気強く待つ。
相手が痺れを切らしてリュードに接近してくると焚き火によってその姿が分かるようになる。
だがリュードは防御に徹し、相手を深追いはしない。
「うっ……」
「ふふん、ちゃんと見えてるんだな!」
そうするとラストがしっかりと矢を相手にお見舞いしてくれる。
闇に飛び込んで逃げようとした刺客の腕に矢が刺さり大きく怯む。
その隙をついてリュードが刺客を切り捨てる。
ダンジョンでも共に戦ったし、ラストが信頼のおける射手であることは分かっていた。
「よくやった、ラスト」
「ふふ、これぐらい任せて!」
リュードとラストは男が動かなくなったことを確認するとルフォンたちの援護に向かう。
苦戦しているようにはとても見えなかったけれど戦いにおいて大丈夫だろうなんて軽く見ている暇なんてない。
「はっ!」
刺客は横から切り付けてきたリュードにも対応して防いでみせた。
かなり良い反応、優秀である。
ただしリュードに反応してみせていたのは刺客だけではなかった。
ルフォンもまたリュードが来ていることをわかっていて、さらに一手先の攻撃を仕掛けていた。
そこまでは対応しきれなかった。
胸にナイフが突き刺さった刺客は目を大きく見開いて力なく倒れた。
まさかこんなに若くみえるルフォンがためらいもなく人を倒してしまうことに驚きながら。
「ヴィッツさんは……心配いらなかったようだな」
刺客の確認をルフォンに任せてヴィッツの方を向くとすでにヴィッツは1人で刺客を片付けていた。
剣の血を拭き、涼しい顔をしている。
暗闇から飛んできたナイフへの反応といい、やはり相当な実力者でただの執事ではない。
サキュルディオーネの言葉を疑っていたのではないが行動の端々に優秀さが滲み出ている。
「思っていたよりも直接的な行動を取ってきましたな」
死体を引きずってきて一か所に集める。
他に野営できそうな場所があるとは思えないので夜が明けるまではこの野営地に留まるしかない。
仕方ないので死体を少し離れたところに運んで処理することにした。
魔物の気配が周りにないので寄ってくることはないと思うのであるが、ペラフィランなる魔物が血の臭いを嗅ぎつけてくるかもしれない。
魔力はもったいないけど魔法で一気に燃やしてしまう。
「しかし、こいつ何を背負っているんだ?」
奇襲してきた刺客の1人は背中に大きな荷物を背負っていた。
動くにも邪魔そうだし中身も入っていて重そうであった。
わざわざ野営道具を持って奇襲に来たとは考えにくいし、中身がなんとなく気になった。
「それになんだかこいつじゃなくて、この袋からも血が出ているような……」
「貴様らァァァ!」
不思議な声が響いてきた。
男でもなく女でもないような、それでいて腹の奥底に響くような、そんな声。
山の上から降りてきたそれはリュードたちの前に降り立った。
「デカい、イタチ……」
遠からずも、そのまんまイタチでもなかった。
どこかゲームに出てくるモンスターのようなイタチを大きくデフォルメしたような出立ちをしたモンスターがリュードたちの前に現れた。
これがペラフィランなのだとその場にいたみんなが察した。
こんなに巨大で力強さを感じさせる魔物が他にいるはずがない。
「全員殺してやる!」
「な、避けろ!」
リュードだから分かった。
全身の毛が引き寄せられるような感覚に襲われ、雷属性の魔法の兆候だと瞬時に察した。
ヴィッツとルフォンはリュードの声に反応して飛び退いた。
けれどラストはペラフィランの雰囲気に飲まれてしまった。
経験の差がここで表れたのだ。
「リューちゃん!」
「ぐああっ!」
リュードは逃げ遅れたラストの体を強く押した。
その瞬間にリュードはラストを狙って落ちてきた雷に打たれてしまった。
「リュ、リュード!」
「……なぜこんなことをなさるのですか!」
ヴィッツはペラフィランと対話を試みる。
言葉が通じる以上試してみる価値はある。
ペラフィランがヴィッツの方を向き、その間にルフォンがリュードに駆け寄る。
「なぜだと? 貴様らがやったことを見てみろ! 貴様ら……いや、この国の連中全員殺してやる!」
ペラフィランは完全に頭に血が上っている。
会話に要領を得ず今にも襲いかかってきそうな勢いである。
なぜ怒っているのか理由を予想することもできない。
なぜペラフィランが怒っているのかヒントすらなくヴィッツも剣を構えたまま冷や汗を流す。
リュードたちにペラフィランを怒らせるような原因は思いつかないので、襲撃してきた刺客が何かをしたことは間違いない。
何かをしたのだろうけど何をしたのか全く分からない。