リュードが走り出すとサキュルラストが矢から手を離す。
空気を切り裂き、リュードの横を通り過ぎていった矢はほぼ真っ直ぐに飛んでいき、トロルの目に深く突き刺さった。
いきなり視界を奪われ、鋭い痛みが走ってトロルが悲鳴をあげる。
矢を抜こうとするが潰された目の側からすでにリュードは接近していた。
「くらえ!」
トロルがリュードに気づいた時にはもうリュードは剣を振り切っていた。
背の高めなトロルが座っていたことも味方して切ることは難しくなく、一撃でトロルの首を切り落とすことができた。
いかに再生力に優れていようとも首を切り落とされては再生もできない。
何が起きたのかも分からないままトロルはダンジョンに還っていったのであった。
「やるじゃん、シューナリュード!」
トロルは初心者向けの魔物ではない。
けれどリュードも初心者ではないのだ。
トロルの相手するのは初めてなので緊張はしたものの、問題はなさそうだと思った。
サキュルラストの正確な射撃もあって簡単に倒すことができた。
「サキュルラストもな」
「あっ」
「ん?」
「あ、いや、なんでもない……」
何か言いたげな顔をしてサキュルラストが言葉を濁して顔を逸らす。
何なんだとリュードも気になる。
でもせっかくまた打ち解けてきたのに変に距離を置かれたくない。
特に今言う必要のない用事なら無理に聞き出すことはしないでおいた。
サキュルラストは落ちた矢を広い、誤魔化すように先を急ぐ。
「えいっ!」
トロルにも深々と刺さる威力の矢をサキュルラストは簡単に連続で放ってみせる。
狙いは正確で戦いの中で放つタイミングも的確なのでリュードに当たる様子もなく安心して前に出ることができる。
このトロルのダンジョンはある意味不思議な作りをしている。
見た目こそ洞窟状のダンジョンでいくつか分岐があるようには見えるのだけど、実はどの道を選んでも同じ部屋にたどり着くただの一本道になっているのだ。
道と広い部屋を何回か繰り返す形になっていて部屋を進むたびにトロルの数が増えていく。
リュードはトロルに慣れさせてくれるような変なダンジョンだと感じた。
「えーと次で……」
「5部屋目だな」
トロルを倒してきて5つめの部屋まで進んできた。
5つ目の部屋にいるトロルは5体だった。
「やるぞ!」
「うん!」
特別作戦もない。
リュードが勢いよくトロルに切りかかっていく。
数は多いけどトロル同士に連携はなく、動きも早くはないのでそれほど苦労することもない。
トロルに苦労するのはトロルを一撃で倒せる威力や技量のない人でリュードにはちゃんとトロルを仕留められる力があった。
ルフォンだったら武器がナイフなこともあってちょっとだけ大変だったかもしれない。
5体のトロルを倒したリュードとサキュルラストは少し休憩をとった後さらに先に進む。
一本道ダンジョンなので適当な道を選んでただ進んでいく。
5つ目の部屋の先にあったのは大きな扉であった。
「これがボス部屋だな」
思いの外早かったなと思うけど他でもないリュードと意外と優秀なサキュルラストだからこその早さだった。
「それでは私はボス部屋の前で待っています」
ボス部屋は多くの場合入ると扉が閉まってしまう。
扉もないボスや閉まらないものもあるけど、基本はボス部屋は倒すか倒されるかしないと開かないのである。
一緒に入ってボスの討伐に失敗してしまったらコルトンも巻き添えを食らうことになる。
そんな間抜けなことはしない。
コルトンは扉の外で待つ。
扉が再び開いてリュードたちが出て来れば成功で、出てこなければ失敗。
基準としても分かりやすい。
これまでもコルトンは手を出してこなかったけどここからは正真正銘に2人きりになる。
「行ける?」
「いつでも大丈夫だ」
「…………」
「そっちこそ大丈夫か?」
「あっ、うん」
サキュルラストは真っ直ぐに扉を見据えるリュードの横顔を思わずボーっと見つめてしまった。
意識しないようにと思うほどに意識してしまう。
大領主になってしまったから同年代の女の子の友達がいないサキュルラストはこんな時にどうしたらいいか分からない。
旅の最中では相談する相手もいない。
旅をしてなかったとしても相談できる相手はレストぐらいなのだけど今は当然いないし、ヴィッツにはこんなこと相談できない。
1人で答えの出ない思いを抱えていた。
(これは単なる憧れ……)
何度も心の中で繰り返す。
ルフォンというパートナーと仲良くしていることに対して、自分もそのようなパートナーが欲しくて憧れているだけ。
それに加えて助けてくれていることに感謝している気持ちが混ざってきっとこんな気持ちになっている。
そんな風に言い聞かせる。
別にそうした行為に憧れがあるだけでリュードじゃなくてもいい。
そう思うとチクリとする胸の痛みは無視をした。
リュードたちが入るとボス部屋の扉が1人でに閉まる。
中には2体のトロルと真ん中に皮膚の赤黒い一回り大きなトロルがいた。
「ハイトロルか……」
トロルの進化種であるハイトロルは大体の場合が再生力かパワーのどちらか一方に寄って強化されたトロルである。
再生力の方じゃなければなとリュードはハイトロルを見ながら思った。
まず周りから片付けるのは定石なのでトロルの方から片付けようと思った。
空気を切り裂き、リュードの横を通り過ぎていった矢はほぼ真っ直ぐに飛んでいき、トロルの目に深く突き刺さった。
いきなり視界を奪われ、鋭い痛みが走ってトロルが悲鳴をあげる。
矢を抜こうとするが潰された目の側からすでにリュードは接近していた。
「くらえ!」
トロルがリュードに気づいた時にはもうリュードは剣を振り切っていた。
背の高めなトロルが座っていたことも味方して切ることは難しくなく、一撃でトロルの首を切り落とすことができた。
いかに再生力に優れていようとも首を切り落とされては再生もできない。
何が起きたのかも分からないままトロルはダンジョンに還っていったのであった。
「やるじゃん、シューナリュード!」
トロルは初心者向けの魔物ではない。
けれどリュードも初心者ではないのだ。
トロルの相手するのは初めてなので緊張はしたものの、問題はなさそうだと思った。
サキュルラストの正確な射撃もあって簡単に倒すことができた。
「サキュルラストもな」
「あっ」
「ん?」
「あ、いや、なんでもない……」
何か言いたげな顔をしてサキュルラストが言葉を濁して顔を逸らす。
何なんだとリュードも気になる。
でもせっかくまた打ち解けてきたのに変に距離を置かれたくない。
特に今言う必要のない用事なら無理に聞き出すことはしないでおいた。
サキュルラストは落ちた矢を広い、誤魔化すように先を急ぐ。
「えいっ!」
トロルにも深々と刺さる威力の矢をサキュルラストは簡単に連続で放ってみせる。
狙いは正確で戦いの中で放つタイミングも的確なのでリュードに当たる様子もなく安心して前に出ることができる。
このトロルのダンジョンはある意味不思議な作りをしている。
見た目こそ洞窟状のダンジョンでいくつか分岐があるようには見えるのだけど、実はどの道を選んでも同じ部屋にたどり着くただの一本道になっているのだ。
道と広い部屋を何回か繰り返す形になっていて部屋を進むたびにトロルの数が増えていく。
リュードはトロルに慣れさせてくれるような変なダンジョンだと感じた。
「えーと次で……」
「5部屋目だな」
トロルを倒してきて5つめの部屋まで進んできた。
5つ目の部屋にいるトロルは5体だった。
「やるぞ!」
「うん!」
特別作戦もない。
リュードが勢いよくトロルに切りかかっていく。
数は多いけどトロル同士に連携はなく、動きも早くはないのでそれほど苦労することもない。
トロルに苦労するのはトロルを一撃で倒せる威力や技量のない人でリュードにはちゃんとトロルを仕留められる力があった。
ルフォンだったら武器がナイフなこともあってちょっとだけ大変だったかもしれない。
5体のトロルを倒したリュードとサキュルラストは少し休憩をとった後さらに先に進む。
一本道ダンジョンなので適当な道を選んでただ進んでいく。
5つ目の部屋の先にあったのは大きな扉であった。
「これがボス部屋だな」
思いの外早かったなと思うけど他でもないリュードと意外と優秀なサキュルラストだからこその早さだった。
「それでは私はボス部屋の前で待っています」
ボス部屋は多くの場合入ると扉が閉まってしまう。
扉もないボスや閉まらないものもあるけど、基本はボス部屋は倒すか倒されるかしないと開かないのである。
一緒に入ってボスの討伐に失敗してしまったらコルトンも巻き添えを食らうことになる。
そんな間抜けなことはしない。
コルトンは扉の外で待つ。
扉が再び開いてリュードたちが出て来れば成功で、出てこなければ失敗。
基準としても分かりやすい。
これまでもコルトンは手を出してこなかったけどここからは正真正銘に2人きりになる。
「行ける?」
「いつでも大丈夫だ」
「…………」
「そっちこそ大丈夫か?」
「あっ、うん」
サキュルラストは真っ直ぐに扉を見据えるリュードの横顔を思わずボーっと見つめてしまった。
意識しないようにと思うほどに意識してしまう。
大領主になってしまったから同年代の女の子の友達がいないサキュルラストはこんな時にどうしたらいいか分からない。
旅の最中では相談する相手もいない。
旅をしてなかったとしても相談できる相手はレストぐらいなのだけど今は当然いないし、ヴィッツにはこんなこと相談できない。
1人で答えの出ない思いを抱えていた。
(これは単なる憧れ……)
何度も心の中で繰り返す。
ルフォンというパートナーと仲良くしていることに対して、自分もそのようなパートナーが欲しくて憧れているだけ。
それに加えて助けてくれていることに感謝している気持ちが混ざってきっとこんな気持ちになっている。
そんな風に言い聞かせる。
別にそうした行為に憧れがあるだけでリュードじゃなくてもいい。
そう思うとチクリとする胸の痛みは無視をした。
リュードたちが入るとボス部屋の扉が1人でに閉まる。
中には2体のトロルと真ん中に皮膚の赤黒い一回り大きなトロルがいた。
「ハイトロルか……」
トロルの進化種であるハイトロルは大体の場合が再生力かパワーのどちらか一方に寄って強化されたトロルである。
再生力の方じゃなければなとリュードはハイトロルを見ながら思った。
まず周りから片付けるのは定石なのでトロルの方から片付けようと思った。