サキュルラストからは抑えていても分かる強い魔力をリュードは感じていた。
才能があると単に思っていたがそれは先祖返りの影響もあって強い魔力を持って生まれてきたのだろう。
ただ、先祖返りで強者であるというなら余計に何を助けるのか。
先祖返りを秘密にしていることと関係があるとリュードは予想した。
「私の父はこの国の王なんです」
そこに関してリュードにも予想はついていた。
全くこの国に関して調べずに来たわけでもない。
大領主だと言われていた時からそのような立場にある人であることはリュードにもなんとなく察することはできる。
「血人族でもやはり強い子、特に先祖返りにまでなると貴重ですから私は父上に可愛がられました。そのために私は腹違いの兄弟姉妹に疎まれて育ちました。私が今大領主なんて任されているのも先祖返りのためで、本来ならお姉ちゃんが大領主になるはずでした」
「そんなのラストが努力したおかげよ」
「ううん、私がしてきた努力なんてお姉ちゃんがしてきたものに比べたらまだまだお姉ちゃんに敵わないよ。それで、ええと……大領主に誰がなるとかは今はどうでもよくて。血人族には昔からある風習があるんです」
先祖返りではなそうだけどデコピンの威力といいレストもそれなりに強そうではある。
「その風習っていうのが大人になるためには試練を乗り越えなきゃいけないってものなんです。血人族は試練を乗り越えなきゃ大人として認めてもらうことができないんです」
「ふーん……」
大人になるために何かしらの試練を課されてそれを乗り越えなきゃいけない。
竜人族や人狼族にはないような風習である。
全く関係のない話をするはずがないということはこの大人の試練が何か関わりがある。
リュードはうっすらと話のこの先の展開が読めてきた。
「その大人の試練なんですけど何も1人だけで挑まなきゃいけないってわけでもないんです。血縁以外の同行者を1人だけを連れて大人の試練に挑むことができるというルールがあるんです」
もちろん1人で挑むこともできますが、とサキュルラストは付け足した。
「……正直な話、この大人の試練を私1人で乗り越えられる自信がないんです。その理由は私の兄姉が原因です」
グッとサキュルラストの顔が暗くなる。
「大人の試練には私のことを疎ましくおもっている兄姉が関わってきます。試練の内容によっては命すら落とすこともあるのですがきっと兄姉たちは事故を装って私の命を狙ってきます……なので……」
サキュルラストとレストが悲しそうな顔をする。
言葉が出てこなくなってサキュルラストが唇を一文字に結ぶ。
目に涙が込み上げてくる。
自分が情けないとサキュルラストは思う。
昔は神童とも呼ばれて王である父親に可愛がられ、姉であるレストの地位を奪うように大領主の座まで任された。
なのに自分1人でできることはあまりにも小さくて他人を頼るしかない。
自分の境遇を自分で説明しておいて胸がいっぱいになってしまった。
まだ話は終わってないのに泣いてしまいそうで、言葉を出すと涙も出てしまいそうで少しだけ沈黙する。
リュードも急かすマネはしない。
ゆっくりと次の言葉を待ってやる。
「……なので、誰か一緒に行ってくれる人を探していたんです」
込み上がってきた涙は引っ込んでくれなかった。
堪え切れなかった涙が一筋目から流れ落ちる。
「……なんで俺に声をかけた? 別にこの国がそんなに人材不足じゃなさそうだと思うけど」
一緒に大人の試練を行ってくれる人を探していることは分かった。
けれどリュードに声をかけてきた理由は分からない。
もっと知り合いとか信頼のおける人の方がいい。
それこそ別にリュードじゃなくてレヴィアンでも良さそうな話だ。
涙を見せてしまったサキュルラストをレストが抱きしめる。
非難するような視線を向けられるリュードだが悪いことは何もしていない。
これじゃあ単なる八つ当たりである。
「そりゃあいっぱいいるわよ、立候補者も。でもねぇ、大体の人の目的がラストの体か地位かなの。その上多くの人が兄さんたちの息がかかっている人物なの」
サキュルラストを引き継いでレストが答える。
なんの見返りもなく命の危険まである大人の試練を手助けするものは少ない。
サキュルラストはこれからもっと美人になっていくし、大領主である。
大人の試練を手伝うことでその恩恵にあずかることを代わりに要求する連中もいる。
それだけではない。
大人の試練は血人族にとって長い歴史を持っていて、ある特定のことに意味を持ってしまう可能性があるからだった。
「特定の意味?」
「それはね……」
昔大きな身分の差がある男女がいた。
その男女は愛し合っていて恋人であった。
しかし身分に大きな隔たりがあるために恋人であることは周知の事実でありながらも公言はしていない公然の秘密であった。
ある時、女性が大人の試練に挑む時に同行者として恋人の男性を連れて行くことにした。
父親が選んだ優秀な護衛ではなく、勝手に男性を同行者としたのであった。
父親は怒りを露わにし、大人の試練の難易度を故意に上げた。
ヘタをすると自分の娘が死にかねない蛮行なのだが、父親の頭が冷静になる時にはすでに2人は試練に挑んでいた。
とんでもないことをしてしまったと父親は娘の無事を祈るしかなかった。
才能があると単に思っていたがそれは先祖返りの影響もあって強い魔力を持って生まれてきたのだろう。
ただ、先祖返りで強者であるというなら余計に何を助けるのか。
先祖返りを秘密にしていることと関係があるとリュードは予想した。
「私の父はこの国の王なんです」
そこに関してリュードにも予想はついていた。
全くこの国に関して調べずに来たわけでもない。
大領主だと言われていた時からそのような立場にある人であることはリュードにもなんとなく察することはできる。
「血人族でもやはり強い子、特に先祖返りにまでなると貴重ですから私は父上に可愛がられました。そのために私は腹違いの兄弟姉妹に疎まれて育ちました。私が今大領主なんて任されているのも先祖返りのためで、本来ならお姉ちゃんが大領主になるはずでした」
「そんなのラストが努力したおかげよ」
「ううん、私がしてきた努力なんてお姉ちゃんがしてきたものに比べたらまだまだお姉ちゃんに敵わないよ。それで、ええと……大領主に誰がなるとかは今はどうでもよくて。血人族には昔からある風習があるんです」
先祖返りではなそうだけどデコピンの威力といいレストもそれなりに強そうではある。
「その風習っていうのが大人になるためには試練を乗り越えなきゃいけないってものなんです。血人族は試練を乗り越えなきゃ大人として認めてもらうことができないんです」
「ふーん……」
大人になるために何かしらの試練を課されてそれを乗り越えなきゃいけない。
竜人族や人狼族にはないような風習である。
全く関係のない話をするはずがないということはこの大人の試練が何か関わりがある。
リュードはうっすらと話のこの先の展開が読めてきた。
「その大人の試練なんですけど何も1人だけで挑まなきゃいけないってわけでもないんです。血縁以外の同行者を1人だけを連れて大人の試練に挑むことができるというルールがあるんです」
もちろん1人で挑むこともできますが、とサキュルラストは付け足した。
「……正直な話、この大人の試練を私1人で乗り越えられる自信がないんです。その理由は私の兄姉が原因です」
グッとサキュルラストの顔が暗くなる。
「大人の試練には私のことを疎ましくおもっている兄姉が関わってきます。試練の内容によっては命すら落とすこともあるのですがきっと兄姉たちは事故を装って私の命を狙ってきます……なので……」
サキュルラストとレストが悲しそうな顔をする。
言葉が出てこなくなってサキュルラストが唇を一文字に結ぶ。
目に涙が込み上げてくる。
自分が情けないとサキュルラストは思う。
昔は神童とも呼ばれて王である父親に可愛がられ、姉であるレストの地位を奪うように大領主の座まで任された。
なのに自分1人でできることはあまりにも小さくて他人を頼るしかない。
自分の境遇を自分で説明しておいて胸がいっぱいになってしまった。
まだ話は終わってないのに泣いてしまいそうで、言葉を出すと涙も出てしまいそうで少しだけ沈黙する。
リュードも急かすマネはしない。
ゆっくりと次の言葉を待ってやる。
「……なので、誰か一緒に行ってくれる人を探していたんです」
込み上がってきた涙は引っ込んでくれなかった。
堪え切れなかった涙が一筋目から流れ落ちる。
「……なんで俺に声をかけた? 別にこの国がそんなに人材不足じゃなさそうだと思うけど」
一緒に大人の試練を行ってくれる人を探していることは分かった。
けれどリュードに声をかけてきた理由は分からない。
もっと知り合いとか信頼のおける人の方がいい。
それこそ別にリュードじゃなくてレヴィアンでも良さそうな話だ。
涙を見せてしまったサキュルラストをレストが抱きしめる。
非難するような視線を向けられるリュードだが悪いことは何もしていない。
これじゃあ単なる八つ当たりである。
「そりゃあいっぱいいるわよ、立候補者も。でもねぇ、大体の人の目的がラストの体か地位かなの。その上多くの人が兄さんたちの息がかかっている人物なの」
サキュルラストを引き継いでレストが答える。
なんの見返りもなく命の危険まである大人の試練を手助けするものは少ない。
サキュルラストはこれからもっと美人になっていくし、大領主である。
大人の試練を手伝うことでその恩恵にあずかることを代わりに要求する連中もいる。
それだけではない。
大人の試練は血人族にとって長い歴史を持っていて、ある特定のことに意味を持ってしまう可能性があるからだった。
「特定の意味?」
「それはね……」
昔大きな身分の差がある男女がいた。
その男女は愛し合っていて恋人であった。
しかし身分に大きな隔たりがあるために恋人であることは周知の事実でありながらも公言はしていない公然の秘密であった。
ある時、女性が大人の試練に挑む時に同行者として恋人の男性を連れて行くことにした。
父親が選んだ優秀な護衛ではなく、勝手に男性を同行者としたのであった。
父親は怒りを露わにし、大人の試練の難易度を故意に上げた。
ヘタをすると自分の娘が死にかねない蛮行なのだが、父親の頭が冷静になる時にはすでに2人は試練に挑んでいた。
とんでもないことをしてしまったと父親は娘の無事を祈るしかなかった。