「ルフォン、おいって」
ルフォンの体を揺すってみるけれどみじろぎしただけで、これまたルフォンは起きなかった。
リュードはその原因についてすぐにピンときた。
「まさか……」
「お姉ちゃんです」
「う、裏切り者ー! ぎゃー!」
1回目よりも強く、しかも場所をずらしてレストのオデコにデコピンを決める。
どうりで見慣れない魔力の気配があると思った。
ルフォンが不自然に熟睡していたのはレストの魔法のせいだった。
人を深い眠りに誘う精神系の魔法というものがある。
あまり使える魔法じゃないし現代ではわざわざ使う人も少ない。
精神に作用させる魔法は高等で大きな魔力を必要とするのでこんなことに使うような簡単な魔法ではないのだ。
痛みでベッドにうずくまるレストに魔法を解かせるとルフォンはゆっくりと目を開ける。
「ルフォン……起きたか?」
「リューちゃん? ……ジュル、み、見ないで!」
魔法によって完全に深い眠りに落ちていたルフォン。
口元は緩んでよだれを垂らしながら寝ていてしまっていた。
よりによってリュードが寝顔を見ている時に何でだらしない姿を晒してしまったのかとルフォンは慌てる。
普段はリュードよりも早く起きるし、遅くてもこんな姿を見せたことがない。
ルフォンは恥ずかしさで枕に押し付けて赤くなった顔を隠す。
チラリと見える首筋まで赤くなっていて耳がペタリとしてしまっている。
珍しいものが見れたとリュードはちょっとだけ嬉しかったけどそれを口に出さないのが紳士というものだ。
「失礼いたします。お顔を洗うお水をお持ちいたしました」
そのタイミングで昨日リュードの後ろに気配を消して立っていた執事が入ってきた。
手には水の入ったタライと新品のタオルを持っている。
部屋にあったテーブルにそれを置くと執事はリュードにペコリと頭を上げた。
「すぐに朝食をお持ちいたしますのでもう少々お待ちください」
すぐさま執事は部屋を出て行ってしまう。
自然な振る舞いにリュードも何も突っ込めずにいた。
「ほら……ルフォン、顔でも洗って」
「うん……」
せっかく持ってきてくれたしサッパリもしたい。
気分転換にもなるし恥ずかしさで尻尾もしょんぼりしてしまっているルフォンに顔でも洗うように促す。
まだ少しだけ口元によだれの跡もついているので早く綺麗にしたいだろう。
ルフォンがそっと水に手をつけるとただの冷水ではなくてほんのりと温かい。
冷たすぎず、熱すぎず。
けれど気持ちが良いぐらいの温度に水は温められていた。
パシャパシャと恥ずかしさを洗い流すように顔を洗うルフォンは水を持ってきた人が宿の人だと思い込んでいた。
「はい、タオル」
「ありがとう……んっ?」
差し出されたタオルを受け取り、顔を拭きながらルフォンは気づいた。
今の声、リュードではなく女性のものだった気がすると思った。
ルフォンはゆっくりと古くて動きの悪くなったおもちゃの人形のように振り返る。
そこにはニッコリと笑ってタオルを渡したサキュルラストが立っていた。
「なんでいるのかな?」
よほどよだれを垂らしながら寝ていたことに動揺していたんだなとリュードは遠い目をしている。
2人がいることにやっとルフォンは気づいたのであった。
ドランダラスといいサキュルラストといいお偉いさんというのは仕事もあるし腰が重いイメージがあったけど、どいつもこいつもフットワークが軽い。
悪いことじゃないんだけどリュード達に対しては別にフットワークの軽さを発揮しなくてもいいのにと思わざるを得ない。
比較的嫌な顔を見せることが少ないルフォンが珍しく嫌そうな顔をしている。
リュードから見るとなかなか新鮮な顔だ。
だらしない寝顔もそうだし今日はサキュルラストのせいで希少なルフォンの表情が見れはした。
「朝食でございます」
ルフォンが2人を警戒するようにすすすとリュードの横にくっついて牽制していると執事が朝食を運んできた。
手のひらだけでなく腕にまで皿を乗せる巧みなバランスで素早く料理を運んでくる。
サキュルラストたちはもう食事は済ませているのか運ばれてきたのはリュードとルフォンの分である2人分の量。
執事が素早く何往復もして部屋にあるテーブルの上に朝食が並べられていく。
「どうぞお召し上がりくださいませ」
「私は食べ……るけど」
迷いが生じたルフォン。
敵の提供してきたもの食べるわけにはという思いと長めに寝たために空腹なことが頭の中でぶつかり合う。
見た目にもニオイにも良い。
思わずお腹が鳴るほど執事が持ってきた朝食は魅力的に見えた。
普段から料理をするルフォンにとって料理にはなんの罪もないことは分かっている。
せっかく作ってくれた料理を食べないで残すことはとても失礼だし料理が可哀想である。
鳴ったお腹の音を誤魔化すようにルフォンは席についた。
リュードも席に着くととりあえずサキュルラストとレストも席につく。
「んっ! 美味しい!」
ルフォンが一口料理を口に運ぶ。
ニオイの時点では相当期待度が高かった料理は味にうるさいルフォンをも唸らせた。
リュードも料理を食べると口に入れてすぐに美味い。
比較的なんでも美味いと言うリュードだけどこれは本当に美味い。
ルフォンの体を揺すってみるけれどみじろぎしただけで、これまたルフォンは起きなかった。
リュードはその原因についてすぐにピンときた。
「まさか……」
「お姉ちゃんです」
「う、裏切り者ー! ぎゃー!」
1回目よりも強く、しかも場所をずらしてレストのオデコにデコピンを決める。
どうりで見慣れない魔力の気配があると思った。
ルフォンが不自然に熟睡していたのはレストの魔法のせいだった。
人を深い眠りに誘う精神系の魔法というものがある。
あまり使える魔法じゃないし現代ではわざわざ使う人も少ない。
精神に作用させる魔法は高等で大きな魔力を必要とするのでこんなことに使うような簡単な魔法ではないのだ。
痛みでベッドにうずくまるレストに魔法を解かせるとルフォンはゆっくりと目を開ける。
「ルフォン……起きたか?」
「リューちゃん? ……ジュル、み、見ないで!」
魔法によって完全に深い眠りに落ちていたルフォン。
口元は緩んでよだれを垂らしながら寝ていてしまっていた。
よりによってリュードが寝顔を見ている時に何でだらしない姿を晒してしまったのかとルフォンは慌てる。
普段はリュードよりも早く起きるし、遅くてもこんな姿を見せたことがない。
ルフォンは恥ずかしさで枕に押し付けて赤くなった顔を隠す。
チラリと見える首筋まで赤くなっていて耳がペタリとしてしまっている。
珍しいものが見れたとリュードはちょっとだけ嬉しかったけどそれを口に出さないのが紳士というものだ。
「失礼いたします。お顔を洗うお水をお持ちいたしました」
そのタイミングで昨日リュードの後ろに気配を消して立っていた執事が入ってきた。
手には水の入ったタライと新品のタオルを持っている。
部屋にあったテーブルにそれを置くと執事はリュードにペコリと頭を上げた。
「すぐに朝食をお持ちいたしますのでもう少々お待ちください」
すぐさま執事は部屋を出て行ってしまう。
自然な振る舞いにリュードも何も突っ込めずにいた。
「ほら……ルフォン、顔でも洗って」
「うん……」
せっかく持ってきてくれたしサッパリもしたい。
気分転換にもなるし恥ずかしさで尻尾もしょんぼりしてしまっているルフォンに顔でも洗うように促す。
まだ少しだけ口元によだれの跡もついているので早く綺麗にしたいだろう。
ルフォンがそっと水に手をつけるとただの冷水ではなくてほんのりと温かい。
冷たすぎず、熱すぎず。
けれど気持ちが良いぐらいの温度に水は温められていた。
パシャパシャと恥ずかしさを洗い流すように顔を洗うルフォンは水を持ってきた人が宿の人だと思い込んでいた。
「はい、タオル」
「ありがとう……んっ?」
差し出されたタオルを受け取り、顔を拭きながらルフォンは気づいた。
今の声、リュードではなく女性のものだった気がすると思った。
ルフォンはゆっくりと古くて動きの悪くなったおもちゃの人形のように振り返る。
そこにはニッコリと笑ってタオルを渡したサキュルラストが立っていた。
「なんでいるのかな?」
よほどよだれを垂らしながら寝ていたことに動揺していたんだなとリュードは遠い目をしている。
2人がいることにやっとルフォンは気づいたのであった。
ドランダラスといいサキュルラストといいお偉いさんというのは仕事もあるし腰が重いイメージがあったけど、どいつもこいつもフットワークが軽い。
悪いことじゃないんだけどリュード達に対しては別にフットワークの軽さを発揮しなくてもいいのにと思わざるを得ない。
比較的嫌な顔を見せることが少ないルフォンが珍しく嫌そうな顔をしている。
リュードから見るとなかなか新鮮な顔だ。
だらしない寝顔もそうだし今日はサキュルラストのせいで希少なルフォンの表情が見れはした。
「朝食でございます」
ルフォンが2人を警戒するようにすすすとリュードの横にくっついて牽制していると執事が朝食を運んできた。
手のひらだけでなく腕にまで皿を乗せる巧みなバランスで素早く料理を運んでくる。
サキュルラストたちはもう食事は済ませているのか運ばれてきたのはリュードとルフォンの分である2人分の量。
執事が素早く何往復もして部屋にあるテーブルの上に朝食が並べられていく。
「どうぞお召し上がりくださいませ」
「私は食べ……るけど」
迷いが生じたルフォン。
敵の提供してきたもの食べるわけにはという思いと長めに寝たために空腹なことが頭の中でぶつかり合う。
見た目にもニオイにも良い。
思わずお腹が鳴るほど執事が持ってきた朝食は魅力的に見えた。
普段から料理をするルフォンにとって料理にはなんの罪もないことは分かっている。
せっかく作ってくれた料理を食べないで残すことはとても失礼だし料理が可哀想である。
鳴ったお腹の音を誤魔化すようにルフォンは席についた。
リュードも席に着くととりあえずサキュルラストとレストも席につく。
「んっ! 美味しい!」
ルフォンが一口料理を口に運ぶ。
ニオイの時点では相当期待度が高かった料理は味にうるさいルフォンをも唸らせた。
リュードも料理を食べると口に入れてすぐに美味い。
比較的なんでも美味いと言うリュードだけどこれは本当に美味い。