「それでこちらのお二方は?」

 皆が帰る中で一緒にこっそりと帰ってもよかったけれどどうするのかが気になってリュードはそのまま留まってみた。
 不思議な状況になったことと長々と歩かされたことでだいぶ落ち着いてきたとはいえ、まだ少し怒りも残っている。
 
 レヴィアンはどう言った関係なのか問われて慌てる。
 決闘を申し込みました都は口が裂けても言えない。
 
 ウソで誤魔化すしか方法はないと思った。

「え、えーと、友達……友達だ! 大切な友人でたまたま偶然ばったりと出会ってな。ちょっと積もる話もあって招待したんだ」

 なんともまあすぐにバレるウソをつくものだとリュードは呆れた。
 リュードが一言否定すれば簡単にバレてしまうてはないか。

「ご友人ですか? 私は長年王子様にお仕えしておりますがこちらの方々は見たことがございません」

 護衛のリーダーだろうか、中年の男性がチラリとリュードの顔を見る。
 こうして振り切られることはたまにあるが、護衛として近くにいることが多いのでレヴィアンの知り合いの顔ならほとんど知っている。

 護衛たちが知らないとレヴィアンが思っている友人も警備の必要性から調査済みである。
 なのにリュードとルフォンには全く見覚えが無かった。

 レヴィアンが隠している友人に関して調査が完璧ではないことも考えられるので一概に知らないからと疑うことはない。
 けれど明らかに冒険者風の格好をしている獣人族らしき男女のペアを調査する人が見逃すはずもない。

 容姿も2人とも目立つしこの友人を隠しおおせていたら今一度レヴィアンの周辺を洗い直す必要も出てくるぐらいだ。

「俺にだってお前の知らない友人ぐらいいるさ!」

「そうですか。はじめまして。私は王子の護衛を勤めさせていただいておりますバラーと申します」

 レヴィアンよりもバラーの方が貴族のように丁寧にリュードたちに頭を下げる。
 流れるようにお辞儀をするバラーにつられてリュードたちも頭を下げた。

「失礼ですが家名をお伺いしてもよろしいですか?」

 王族と友達になる機会はとても少ない。
 レヴィアンは活動が多く顔が広いので他に比べるとそのチャンスは多い方ではあるけれど、そう簡単に近づける人でもない。

 もし本当に友人なら王族に近づくことのできる何かしらの高名な家の者の可能性がある。
 知らない家名なら友人なことは疑わしいし知っている家名ならこのまま丁寧な態度を貫いておけば良い。

「俺はシューナリュード・イデアム。こっちはルフォン・ディガンだ」

「イデアム……ですか?」

「はい。それが何か?」

 リュードの家名を聞いてバラーがピクリと反応を示す。

「私、バラー・ディエライン。シューナリュード・イデアム様にご挨拶申し上げます」

 急に両膝をついて頭と両手を地面につけるバラー。
 いわゆる土下座のような体勢を取ったのだ。

 レヴィアンと他の護衛たちが目玉が飛び出さんばかりに驚いている。
 王族相手にも怖気付かず常に堂々としているバラーはレヴィアンのみならず他の王族の信頼も厚く、鉄の男なんて呼んでいる人までいる。

 そんなバラーがいきなり若造に平伏した。
 王族でもあのようにさせようとしたならバラーは仕えるのをやめてしまうかもしれない。

「えっと、えぇ?」

 リュードはわけも分からずいきなり土下座をされてドン引きしてしまっていた。