前に荷馬車を持って来られて全部持って行かれた経験がある。
なのでバイオプラはさらに量を増やして絶対に持っていけないだろうという量とよく知りもしない香辛料まで取り揃えた。
訳の分からない方向性で努力してしまったバイオプラだが、作戦は上手くいってこの量を持って行った人は今のところいなかった。
「いや、馬車なんて持ってない」
馬車に乗ったのだってヤノチたちに同行させてもらった時に乗ったぐらいしか経験がない。
楽っちゃ楽だったので何かしらの機会があれば馬車を走らせる旅もいいかもしれない。
ただし今は馬車なんて持っていないし購入の予定もない。
「ではどうやって? このままここに置いておくことも出来かねますが……」
持っていけない量の香辛料を用意するなんて卑怯なマネが待ち受けているとはつゆほども思わなかったけれど、残念ながらリュードたちには通じない。
「1つお聞きしますがこれは一応取引ということでいいですかね? 優勝して賞品を受け取る、お金を払うのではなく優勝する事がその代わりだと」
「うう? うーむ……まあ取引といえば取引なのでしょうか……」
不思議なことを言うものだとパイオプラは思った。
優勝賞品の受け取りを取引だなんて考えたこともなかった。
優勝という代価と引き換えに優勝賞品を受け取る。
取引と言えないこともない。
「じゃああなたは商人ですから取引相手の秘密は守ってくださいますよね?」
「ええ、もちろんです」
信用が大事なのが商人だ。
相手の秘密をベラベラと話すような奴は相手から信用を得ることはできない。
「じゃあ秘密でお願いしますね」
ニヤリと笑ったリュードは袋を取り出した。
香辛料のパンパンに詰まった大袋1つどころか両手に掬って入れればそれで満杯になってしまいそうな小さな袋。
あんなものでどうするつもりだ。
バイオプラは鼻で笑いたくなる気分を抑えてリュードの動きをうかがっている。
手間をかけさせてくれた分安く引き取ってやると心で計算を始めていたら、袋が1つ消えた。
「えっ?」
次々と香辛料が入った大袋が消えていく。
何事かとよくみるとリュードの持った小さい袋の中に大袋が入っていくではないか。
「そ、それは!」
バイオプラの顔が青くなる。
商人なら誰もが憧れる魔道具。
手ぶらに見えて多くの商品を持ち運ぶことを可能にする夢のアイテム。
「これは古い友人から貰ったものです」
袋の出自を聞かれると面倒なのでそう言っておく。
これはゼムトから貰った国宝袋ではなくてリュード自作の方なのだけど。
香辛料の袋が減っていくごとに、青かったバイオプラの顔が血の気が引いて白くなっていく。
「は……はは…………すごいですね」
それほど時間もかからず応接室は元の広さを取り戻した。
小さな袋の中に大量の香辛料が全て収まってしまったのである。
「あとは……魔道具もいただけるんでしたっけ?」
パイオプラのズルい思惑には気づいていない。
そんな風な態度を装って純粋な青年のように笑顔を浮かべてリュードが尋ねる。
「は、はい……こちらでございます…………」
半ば諦めたような目をするバイオプラに付いていくとそこは広い倉庫のような場所。
取引する商品が保管してあり、パイオプラが抱えている魔道具類も置いてあった。
小さく持ち運びが簡単そうな安いものから家に設置するような大きなものまで様々あった。
リュードが軽く見てみるが今のところ必要なものはない。
火をつけたりする旅のお助け魔道具とか、今の時代で作れるものはあまり欲しいと思えなかった。
香辛料で大分損させてしまったしここは何も知らないフリをして安い魔道具でも選んであげようかなんて考えていた。
適当に手に取って見ていると魔道具を見回していたルフォンが見つけてしまった。
「リューちゃんあれがいい!」
ルフォンが指差す方を見る。
確かに魔道具といえば魔道具であった。
バイオプラがマズイという顔をしたその魔道具はコンロであった。
持ち運びの出来るお手軽コンロ、ではない。
家に設置する完全家庭用コンロである。
そのコンロは最先端の技術を用いて作られた最高級魔道具。
一般的な家庭では未だに薪なんかに火をつけて料理なんかをするのだけど、火を焚く手間を省いて料理ができるように開発された。
よく見てみると作りとしては面白い。
「ふーん、なるほどな」
コンロの真ん中に大きめの魔石がはめ込まれてあって、その魔石に接するように渦を巻いた金属が置かれている。
魔力を込めると魔石が熱を持って周りの金属を温めて、その熱で上に乗せた調理器具を加熱して料理する。
リュードの元いた世界における古いコンロみたいなものであった。
魔石に魔法を刻むという技術は昔からあった。
今も失われずにあるものもあるし、長い時間の中で失われたものもある。
熱を発生させる魔法を刻むことは失われてしまっていた。
しかし真人族の研究が長年研究してようやく復活させたのである。
そんな血の滲むような努力の成果を使ったコンロである。
おそらくヴェルデガーにお願いすればそんなに時間もかからず熱を発生させる魔法を自分で見つけて魔石に刻んではくれる気がする。
けれども真人族にとっては今ではあまり見ない技術であり、最先端のものなのだ。
なのでバイオプラはさらに量を増やして絶対に持っていけないだろうという量とよく知りもしない香辛料まで取り揃えた。
訳の分からない方向性で努力してしまったバイオプラだが、作戦は上手くいってこの量を持って行った人は今のところいなかった。
「いや、馬車なんて持ってない」
馬車に乗ったのだってヤノチたちに同行させてもらった時に乗ったぐらいしか経験がない。
楽っちゃ楽だったので何かしらの機会があれば馬車を走らせる旅もいいかもしれない。
ただし今は馬車なんて持っていないし購入の予定もない。
「ではどうやって? このままここに置いておくことも出来かねますが……」
持っていけない量の香辛料を用意するなんて卑怯なマネが待ち受けているとはつゆほども思わなかったけれど、残念ながらリュードたちには通じない。
「1つお聞きしますがこれは一応取引ということでいいですかね? 優勝して賞品を受け取る、お金を払うのではなく優勝する事がその代わりだと」
「うう? うーむ……まあ取引といえば取引なのでしょうか……」
不思議なことを言うものだとパイオプラは思った。
優勝賞品の受け取りを取引だなんて考えたこともなかった。
優勝という代価と引き換えに優勝賞品を受け取る。
取引と言えないこともない。
「じゃああなたは商人ですから取引相手の秘密は守ってくださいますよね?」
「ええ、もちろんです」
信用が大事なのが商人だ。
相手の秘密をベラベラと話すような奴は相手から信用を得ることはできない。
「じゃあ秘密でお願いしますね」
ニヤリと笑ったリュードは袋を取り出した。
香辛料のパンパンに詰まった大袋1つどころか両手に掬って入れればそれで満杯になってしまいそうな小さな袋。
あんなものでどうするつもりだ。
バイオプラは鼻で笑いたくなる気分を抑えてリュードの動きをうかがっている。
手間をかけさせてくれた分安く引き取ってやると心で計算を始めていたら、袋が1つ消えた。
「えっ?」
次々と香辛料が入った大袋が消えていく。
何事かとよくみるとリュードの持った小さい袋の中に大袋が入っていくではないか。
「そ、それは!」
バイオプラの顔が青くなる。
商人なら誰もが憧れる魔道具。
手ぶらに見えて多くの商品を持ち運ぶことを可能にする夢のアイテム。
「これは古い友人から貰ったものです」
袋の出自を聞かれると面倒なのでそう言っておく。
これはゼムトから貰った国宝袋ではなくてリュード自作の方なのだけど。
香辛料の袋が減っていくごとに、青かったバイオプラの顔が血の気が引いて白くなっていく。
「は……はは…………すごいですね」
それほど時間もかからず応接室は元の広さを取り戻した。
小さな袋の中に大量の香辛料が全て収まってしまったのである。
「あとは……魔道具もいただけるんでしたっけ?」
パイオプラのズルい思惑には気づいていない。
そんな風な態度を装って純粋な青年のように笑顔を浮かべてリュードが尋ねる。
「は、はい……こちらでございます…………」
半ば諦めたような目をするバイオプラに付いていくとそこは広い倉庫のような場所。
取引する商品が保管してあり、パイオプラが抱えている魔道具類も置いてあった。
小さく持ち運びが簡単そうな安いものから家に設置するような大きなものまで様々あった。
リュードが軽く見てみるが今のところ必要なものはない。
火をつけたりする旅のお助け魔道具とか、今の時代で作れるものはあまり欲しいと思えなかった。
香辛料で大分損させてしまったしここは何も知らないフリをして安い魔道具でも選んであげようかなんて考えていた。
適当に手に取って見ていると魔道具を見回していたルフォンが見つけてしまった。
「リューちゃんあれがいい!」
ルフォンが指差す方を見る。
確かに魔道具といえば魔道具であった。
バイオプラがマズイという顔をしたその魔道具はコンロであった。
持ち運びの出来るお手軽コンロ、ではない。
家に設置する完全家庭用コンロである。
そのコンロは最先端の技術を用いて作られた最高級魔道具。
一般的な家庭では未だに薪なんかに火をつけて料理なんかをするのだけど、火を焚く手間を省いて料理ができるように開発された。
よく見てみると作りとしては面白い。
「ふーん、なるほどな」
コンロの真ん中に大きめの魔石がはめ込まれてあって、その魔石に接するように渦を巻いた金属が置かれている。
魔力を込めると魔石が熱を持って周りの金属を温めて、その熱で上に乗せた調理器具を加熱して料理する。
リュードの元いた世界における古いコンロみたいなものであった。
魔石に魔法を刻むという技術は昔からあった。
今も失われずにあるものもあるし、長い時間の中で失われたものもある。
熱を発生させる魔法を刻むことは失われてしまっていた。
しかし真人族の研究が長年研究してようやく復活させたのである。
そんな血の滲むような努力の成果を使ったコンロである。
おそらくヴェルデガーにお願いすればそんなに時間もかからず熱を発生させる魔法を自分で見つけて魔石に刻んではくれる気がする。
けれども真人族にとっては今ではあまり見ない技術であり、最先端のものなのだ。