「ルフォン、気をつけろ。砂の上を走るのはいつもの感覚と違うし、あの2人はそれに慣れてる。気を引き締めて走るんだ!」

 負けは負け。
 それを受け入れて次を考えなければ同じ轍を踏んでしまう。

「うん、分かった!」

 例えお遊びのイベントでも勝敗が関わってくると本気になってきてしまう。
 慢心して手を抜いてしまったくせに負けてしまって無茶苦茶悔しいリュードだが勝負事が故に次は負けないとやる気を燃やす。

 なんだかんだで争い事に負けたくないのが魔人的な性格の一面だ。

「ここで勝って私たちの優勝を確実にさせてもらうよ」

「負けないよ!」

 ルフォンとエリザの間に火花が散るのが見える。
 ルフォンも魔人族であり、負けず嫌いなところがある。

 さっきは息止め対決で負けてしまった。
 今度こそ負けられない。

 幸か不幸かルフォンとエリザも別の組で予選となった。
 注目株の2人は周りの大きな声援を受けながら走りどちらも見事に予選を勝ち抜いた。

「それでは旗取り女性部門の決勝戦、よーい、ドーン!」

「なっ、速い!」

 リュードの戦いを見ていたし砂の上での戦い方は何かが違うのはルフォンにも分かった。
 けれど何が違うのか正確には分からないし今から見つけて修正している暇もない。

 ならやれることは1つだけ。
 ルフォンは最初からトップスピードで走った。

 砂に足を取られて思うようにスピードが出ないけどひたすら旗だけを見て足を動かした。
 最初のダッシュではリュードもバーナードより速かった。
 
 しかしその後追いつかれてしまった。
 追いつかれなきゃいい。
 
 相手の走り方がうまくて加速できるとしてもその前に速さに乗って、距離を作ってしまえばいい。

「おーっと、ルフォン速い! スタートダッシュを決めて2位以下の参加者を突き放す!」

 純粋にスピードを比べると実はリュードよりもルフォンの方が速い。
 それなのにやはり砂場での走行は難しいのかエリザが少しずつ距離を詰める。

「はあぁぁぁぁ!」

 けれども最初に作った差は大きかった。
 エリザは差を詰め切ることができずに旗はルフォンが飛びついてゲットした。

「なんとなんと、旗取りは前回大会覇者であるエリザを下して息止め対決のリベンジとばかりにルフォンが勝利したー! これでバーナード・エリザペアとシューナリュード・ルフォンペアが一勝ずつとなりました。次の男女ペアで勝者が決まるのかー!」

 展開的には勝ったり負けたりでいい感じで司会のウェッツォの声にも熱が入る。

「やったよリューちゃん!」

「やったなルフォン!」

 これで勝負はイーブンとなった。

「……どうした?」

「んっ、なんでもない」

 リュードに駆け寄ってきたルフォンはいつものように頭を差し出してくるでもなくリュードの顔をじっと見つめた。
 てっきり撫でるものだと思っていたリュードは不思議そうな顔をする。

 照れ臭そうにリュードから顔を背けるルフォン。
 何か別のことでもしてほしかったのだろうかと首を傾げる。

 旗取りの第3回戦、とでも言えばいいのか。
 男性部門、女性部門ときて、次は男女で走るペア部門である。

 男女で走るとはなんだろうと思っていた。
 説明を聞くとペア部門での旗取りとはなんと足を結んで二人三脚で行うものだった。

 慣れない砂の上、やったこともない二人三脚。
 バーナード・エリザペアは前回大会でもやったことがあるだろうしこれはかなり不利だと言わざるを得ない。

「大丈夫だよ」

 足を縛られているのでルフォンとは自然と密着するような距離になる。

「私たちならどんな相手でも勝てるよ」

 リュードを見上げるルフォンの瞳には確かな自信があふれている。
 さっきは不慣れな足場に慣れず一敗を喫してしまったが、リュードが敵わない相手ではない。

 もう少し近づけば唇が触れ合ってしまいなぐらいの距離でルフォンの目を見つめているとなんだかリュードも自身が湧いてくる。
 バーナードの自信満々な態度のせいで変に弱気になっていたかもしれない。

「……そうだな。よし、スタートダッシュでルフォンみたいに逃げ切ってやろうか。走り出しは結んである足から、それでオッケーか?」

「うん! 目にもの見せてあげようね」

 まずは予選を勝ち抜くことからだ。
 例によってバーナード・エリザペアとは別の組になった。

 男女ペアでの難しさは単に二人三脚なだけなことではない。
 ビーチフラッグよろしく、スタートの体勢は旗とは逆を向いてうつ伏せに砂浜に寝転んだ状態から始まる。

 1人なら体を反転させることに問題はない。
 しかし足を縛られた2人では反対を向くことも意外と難しいのだ。

 様々なペアがワタワタと方向転換する中、リュードはかなり力技で反転してみせた。
 立ち上がった瞬間に縛っていない足を軸にしてグルリと回転して前を向く。

 ルフォンは前に飛び上がるようにして、リュードはそんなルフォンを引き寄せて勢いをつけて一気に反転した。

 おかけでスタートダッシュが決まり、余裕で予選は勝ち残った。

「さすがだな、息もピッタリじゃないか」

 足を縛られているのにいつも通りのように歩くバーナード・エリザペア。
 バーナードがエリザの腰に手を回して歩く姿は普段からそうしているように見える。

「その距離感、初々しいな」

 リュードとルフォンはお互いの肌が触れ合わないようにしている。
 足は縛られているのでしょうがないけど上半身はちょっとだけ距離を空けている。

 ある意味で互いを思い合っていると取れる距離感にバーナードは甘酸っぱい初々しさを感じていた。