「なんで私がこんなことを……」
依頼を遂行するにあたってヘランド王国から案内人が1人付けられた。
未だに祖父の話に納得がいっておらず、この案内人の仕事にも納得がいっていないアリアセンが案内人だった。
ブツブツと文句を言うアリアセンの先導について、リュードたちは遺品をマジックボックスの袋に詰め込んで南にある港湾都市のデタルトスを目指していた。
ザダーからデタルトスはそれほど遠くはない。
楽勝な依頼だと考えていたのにそう甘くもなかった。
「やあっ!」
アリアセンが魔物を切り捨てる。
それが最後の1体。
「ふう、これで終わりですね」
アリアセンが大きく息を吐き出して戦闘が終了した。
これまでの旅では人工的に整備された道を通っている限りは魔物に襲われる可能性は低かった。
道沿いに魔物はほとんど出てこないのであった。
しかしへランド王国においては道を通っていても関係なく魔物が襲ってくる。
1日1回、多いと2回3回と魔物と遭遇することもある。
なのでデタルトスに向かうペースはゆっくりとしていた。
道中現れる魔物は強くない。
積極的に襲いかかってきても危険度が低いので後回しにされがちで大規模に討伐されることがあまりない。
それでも連日のように襲われて戦うことは初めてで、常に気の抜けない緊張感にエミナたちは段々と疲労がたまってきていた。
動きに精彩をかいてきているのでリュードやルフォン、アリアセンが主に戦っていた。
「あなたたち、よく平気ね」
魔物の血で汚れた盾を拭きながらアリアセンがリュードに目を向ける。
リュードもリュードで剣の血を拭い、手入れをしている。
魔物の対応をしている間に日も落ちてきてしまったので進むのはやめて、魔物から離れたところで野営することになった。
アリアセンはこの国の出身でこうした魔物の活発さに慣れているので魔物の襲撃に慣れていて、精神的な疲労もない。
リュードやルフォンは若く、エミナたちと歳も離れていないようにアリアセンからは見えるのに今の状況にケロッとしている。
魔物の襲撃が多いと大概の人は精神的に疲労してくる。
相手が弱くてもいつ襲われるか分からない環境は精神的に消耗するのだ。
現にエミナたちはぐったりとしていて元気がない。
先ほどの襲撃も数も多くないし魔物も強くなかった。
エミナたち3人でも対処出来るレベルの魔物だったけれど度重なる襲撃に疲れてしまった。
神経の図太さは経験で太くしていくしかない。
「俺たちは慣れているからな」
アリアセンが首を傾げる。
自慢にもならない魔物の活発さは他の国ではまず見られない。
魔物の巣窟に住んでるのでもない限りなかなか毎日魔物に襲撃されることになれるはずもない。
そんな過酷な環境他の国には滅多に無いのだが、リュードたちの村にはあった。
周りの森は魔物だらけだし、森でなにかするには常に魔物の危険がつきまとう。
極めつきは15歳の時にあった地獄の訓練である。
何も昼だけくるとは限らない化け物のような強さのおっさんたち。
ずっと警戒し通しなので精神力も鍛えられるものだった。
「……おじいちゃんは本当に最後まで人の心を持ったまま死んでいったの?」
もう数日アリアセンと一緒にいる。
最初リュードと距離をとっていたアリアセンだったのだが、上手く周りをフォローしながら戦うリュードとは自然と連携を取り始めた。
そうしていると普通の状況でも距離は少し近づいた。
けれどまだわだかまりはある。
祖父についてウソはついていないと思う心と認めたくない心があって複雑な気分がアリアセンにはあった。
そんな思いとはよそにリュードは柔らかい態度でアリアセンに接していたので1人ツンケンしてもいられなかった。
戦いにおいても優秀。
周りをよく見ているし、自分が指示を出すよりもリュードに従った方が効率がいいのでリュードを認め始めていた。
時間が距離を溶かし、アリアセンはポツリと呟く。
リュードがアリアセンの方を見るとアリアセンは盾を磨き続けている。
赤い夕焼けを反射する盾には細かい傷が多く見受けられる。
アリアセンがいかにこの相棒と努力を重ねてきたかが分かる。
「本当の話だよ。ほとんどの人がスケルトンになって自分をみうしなってしまっていた中で君のおじいさんは強い意志を持って自我を保ち続けていた」
「そうなんだ。……私、おじいちゃんには会ったことがないんだ」
アリアセンの若さなら当然のこと。
暗い閉鎖空間では時間経過が分からないのでどれぐらいの時間が経ったのかリュードもゼムトたちから聞けなかった。
こうして遺品を渡しに来たのだが失踪から何年経ちましたかなんて聞けるタイミングもなかった。
ただ長い時間が経っていることは分かる。
若い口調で話すゼムトを兄と慕うドランダラスの大体の年齢から想像できる。
何十年と時間が流れている。
アリアセンが産まれたのはガイデンが失踪してからなので会うことがなくて当然である。
「もうこんなに時間経ってるしさ、会えるとは思ってないけどさ。私たちは遅い時にできた子だからお父さんがもうおじいちゃんみたいな見た目になってきてるし」
まさか尊敬する祖父がそんなことになっているとは思いもしなかった。
「なんか……当たっちゃってごめんね?」
受け入れられないにしてもそれをリュードに当たるべきではなかったとアリアセンは反省した。
依頼を遂行するにあたってヘランド王国から案内人が1人付けられた。
未だに祖父の話に納得がいっておらず、この案内人の仕事にも納得がいっていないアリアセンが案内人だった。
ブツブツと文句を言うアリアセンの先導について、リュードたちは遺品をマジックボックスの袋に詰め込んで南にある港湾都市のデタルトスを目指していた。
ザダーからデタルトスはそれほど遠くはない。
楽勝な依頼だと考えていたのにそう甘くもなかった。
「やあっ!」
アリアセンが魔物を切り捨てる。
それが最後の1体。
「ふう、これで終わりですね」
アリアセンが大きく息を吐き出して戦闘が終了した。
これまでの旅では人工的に整備された道を通っている限りは魔物に襲われる可能性は低かった。
道沿いに魔物はほとんど出てこないのであった。
しかしへランド王国においては道を通っていても関係なく魔物が襲ってくる。
1日1回、多いと2回3回と魔物と遭遇することもある。
なのでデタルトスに向かうペースはゆっくりとしていた。
道中現れる魔物は強くない。
積極的に襲いかかってきても危険度が低いので後回しにされがちで大規模に討伐されることがあまりない。
それでも連日のように襲われて戦うことは初めてで、常に気の抜けない緊張感にエミナたちは段々と疲労がたまってきていた。
動きに精彩をかいてきているのでリュードやルフォン、アリアセンが主に戦っていた。
「あなたたち、よく平気ね」
魔物の血で汚れた盾を拭きながらアリアセンがリュードに目を向ける。
リュードもリュードで剣の血を拭い、手入れをしている。
魔物の対応をしている間に日も落ちてきてしまったので進むのはやめて、魔物から離れたところで野営することになった。
アリアセンはこの国の出身でこうした魔物の活発さに慣れているので魔物の襲撃に慣れていて、精神的な疲労もない。
リュードやルフォンは若く、エミナたちと歳も離れていないようにアリアセンからは見えるのに今の状況にケロッとしている。
魔物の襲撃が多いと大概の人は精神的に疲労してくる。
相手が弱くてもいつ襲われるか分からない環境は精神的に消耗するのだ。
現にエミナたちはぐったりとしていて元気がない。
先ほどの襲撃も数も多くないし魔物も強くなかった。
エミナたち3人でも対処出来るレベルの魔物だったけれど度重なる襲撃に疲れてしまった。
神経の図太さは経験で太くしていくしかない。
「俺たちは慣れているからな」
アリアセンが首を傾げる。
自慢にもならない魔物の活発さは他の国ではまず見られない。
魔物の巣窟に住んでるのでもない限りなかなか毎日魔物に襲撃されることになれるはずもない。
そんな過酷な環境他の国には滅多に無いのだが、リュードたちの村にはあった。
周りの森は魔物だらけだし、森でなにかするには常に魔物の危険がつきまとう。
極めつきは15歳の時にあった地獄の訓練である。
何も昼だけくるとは限らない化け物のような強さのおっさんたち。
ずっと警戒し通しなので精神力も鍛えられるものだった。
「……おじいちゃんは本当に最後まで人の心を持ったまま死んでいったの?」
もう数日アリアセンと一緒にいる。
最初リュードと距離をとっていたアリアセンだったのだが、上手く周りをフォローしながら戦うリュードとは自然と連携を取り始めた。
そうしていると普通の状況でも距離は少し近づいた。
けれどまだわだかまりはある。
祖父についてウソはついていないと思う心と認めたくない心があって複雑な気分がアリアセンにはあった。
そんな思いとはよそにリュードは柔らかい態度でアリアセンに接していたので1人ツンケンしてもいられなかった。
戦いにおいても優秀。
周りをよく見ているし、自分が指示を出すよりもリュードに従った方が効率がいいのでリュードを認め始めていた。
時間が距離を溶かし、アリアセンはポツリと呟く。
リュードがアリアセンの方を見るとアリアセンは盾を磨き続けている。
赤い夕焼けを反射する盾には細かい傷が多く見受けられる。
アリアセンがいかにこの相棒と努力を重ねてきたかが分かる。
「本当の話だよ。ほとんどの人がスケルトンになって自分をみうしなってしまっていた中で君のおじいさんは強い意志を持って自我を保ち続けていた」
「そうなんだ。……私、おじいちゃんには会ったことがないんだ」
アリアセンの若さなら当然のこと。
暗い閉鎖空間では時間経過が分からないのでどれぐらいの時間が経ったのかリュードもゼムトたちから聞けなかった。
こうして遺品を渡しに来たのだが失踪から何年経ちましたかなんて聞けるタイミングもなかった。
ただ長い時間が経っていることは分かる。
若い口調で話すゼムトを兄と慕うドランダラスの大体の年齢から想像できる。
何十年と時間が流れている。
アリアセンが産まれたのはガイデンが失踪してからなので会うことがなくて当然である。
「もうこんなに時間経ってるしさ、会えるとは思ってないけどさ。私たちは遅い時にできた子だからお父さんがもうおじいちゃんみたいな見た目になってきてるし」
まさか尊敬する祖父がそんなことになっているとは思いもしなかった。
「なんか……当たっちゃってごめんね?」
受け入れられないにしてもそれをリュードに当たるべきではなかったとアリアセンは反省した。