この時がキンミッコの人生で1番能力を発揮していた時だっただろう。
裏切って邪魔なものを片付けて国に嘘をつき、戻れない道を突き進んだ。
正直者や良心を持つものを陥れ、卑怯で金で動くもので周りを固めた。
状況を知る人も証拠も全て燃えてしまったので唯一キンミッコの証言だけが事件の証拠となった。
この事件のせいでトキュネスとカシタコウの関係は悪化して地域の紛争ではなく、国同士の本格的な戦争に発展しそうにもなった。
仕方なくキンミッコの証言を認める他に状況が許さなかったのである。
時間が経ちキンミッコの実質的な支配が半ば黙認されつつあったのだが状況がさらに一変した。
新たなる戦争の火種やそれに続く作物の不良がトキュネスで発生した。
両国はそれぞれの理由で再び和平に向けて動き出した。
その時に明るみに出てきたのがカシタコウで囚われていたトキュネス側の捕虜の話である。
長い間囚われていた男は忘れられていた捕虜であった。
起きた事件の大きさと戦争の機運が高まったことで男の存在は忘れられていた。
もう1つ忘れられていた理由として男は何も言わなかった。
名前も所属も目的も、何も言わなかった。
口を割らせようとしたこともあったのだが、頑なに何も言わない男にカシタコウも諦めて男をただ長いこと牢獄に幽閉した。
ただパノンの部下であるということは分かっていたので解放もされなかったのだ。
和平の話が出たことでカシタコウは幽閉していた男のことを思い出した。
和平を結ぶなら捕虜となっている男を返してはどうかという話も出たのだ。
王の前に連れてこられた男はすっかりとやつれて別人のようになっていた。
その時、男は1つの質問をした。
カシタコウに捕らえられてから初めて言葉を発した。
王はすぐさま質問の内容について調べさせ、男に結果を伝えた。
男はその答えに涙を流すと全てを話し始めた。
名前も所属も、どうしてカシタコウにいたのかも全て。
「それがコツマという男だ」
コツマが言った。
パノンとミエバシオがした和平交渉は終わっていたのだと。
そしてコツマにはカシタコウに恋人がいた。
パノンはそのことを知っていてコツマに命じた。
『自分は紛争地帯から離れるわけにはいかない。だからこの和平についての書類を王城まで届けてほしい。早く届けることが望ましいが、途中寄り道をしても私には分からないだろうな』
笑いながら書類を渡したパノンは笑っていた。
要するに恋人にでも会ってから届けても良いと気を回してくれたのである。
交渉が終わってすぐに出発したコツマは舞い上がった気分で恋人の元に行った。
そしてその直後にキンミッコがパノンとミエバシオを討ち取った。
部隊が丸々全滅して噂にならないはずもない。
戦いの話に敏感になっているヒダルダの土地の人々の中を噂はあっという間に駆け巡った。
当然カシタコウの男の恋人のところにも噂は届き、コツマの元にも噂はたどり着いた。
しかしその噂を聞いて次の行動を考える間も無くカシタコウの兵士がコツマのところにやってきて男は捕らえられてしまった。
コツマの恋人よりも早くに噂を聞いた恋人の両親が通報したのであった。
もし話が本当なら和平の書類は相手を騙した卑劣な手段の証拠にもなり得る。
そしてこうなると再びトキュネスとカシタコウは敵対することになる。
敵国の兵士と付き合っているなんてバレてしまえば恋人はどうなる。
非常にマズイ立場に追いやられるかもしれない。
正しい選択肢がわからない。
コツマはどうしようもなくてただただ口を閉ざすことにしたのであった。
和平の書類はコツマの恋人に託されていた。
コツマの恋人が昔と変わらぬ気持ちを持っていたのであれば和平の書類はまだどこかにある。
コツマの言葉を受けて王は書類を探させた。
予想通りに書類は隠されていて、見つけ出すことができた。
長年抱いてきた違和感。
和平の書類には最終的な印が押してあった。
どうにも裏切ってミエバシオを討ったという行為には疑問が残っていた。
裏切るなら和平に調印する必要などない。
最後まで話を進めることなんてする必要がないのである。
和平交渉を最後まで進めたのなら裏切るつもりはなかったとそのようにしか見えない。
改めて調べてみるとトキュネス側ではカシタコウ側と異なる認識でいることが分かった。
なのでカシタコウの王は和平が白紙になることも覚悟の上でトキュネスの王にタブーであるヒダルダの地でのことを問いただすことにした。
両者で交わされた情報交換は驚くほどの早さと冷静さを持って行われた。
淡々と話は進んでいき、両国はそれぞれで情報を集めてすり合わせを行った。
両国がそれぞれ情報を元にして1つの結論に至った。
トキュネスとカシタコウの両方を騙して裏切り、全てを手にした者がいると。
そしてさらにそんな状況の中で1人の男が捕まった。
禿げ上がり、歯が何本もない、やたらと下品な笑みを浮かべる男。
通行人を剣で脅して金品を巻き上げようとして捕まったのであった。
よく居る小悪党の1人でその小悪党の男は捕まるとベラベラと喋り出した。
自分が助かるためなら、と頼まれてもいないのにキンミッコの情報を売ると言って。
ちょうど両国が至った結論に沿うような話を小悪党の男がしたのだ。
逃してもらおうとするための作り話にしてはあまりにも出来過ぎていた。
裏切って邪魔なものを片付けて国に嘘をつき、戻れない道を突き進んだ。
正直者や良心を持つものを陥れ、卑怯で金で動くもので周りを固めた。
状況を知る人も証拠も全て燃えてしまったので唯一キンミッコの証言だけが事件の証拠となった。
この事件のせいでトキュネスとカシタコウの関係は悪化して地域の紛争ではなく、国同士の本格的な戦争に発展しそうにもなった。
仕方なくキンミッコの証言を認める他に状況が許さなかったのである。
時間が経ちキンミッコの実質的な支配が半ば黙認されつつあったのだが状況がさらに一変した。
新たなる戦争の火種やそれに続く作物の不良がトキュネスで発生した。
両国はそれぞれの理由で再び和平に向けて動き出した。
その時に明るみに出てきたのがカシタコウで囚われていたトキュネス側の捕虜の話である。
長い間囚われていた男は忘れられていた捕虜であった。
起きた事件の大きさと戦争の機運が高まったことで男の存在は忘れられていた。
もう1つ忘れられていた理由として男は何も言わなかった。
名前も所属も目的も、何も言わなかった。
口を割らせようとしたこともあったのだが、頑なに何も言わない男にカシタコウも諦めて男をただ長いこと牢獄に幽閉した。
ただパノンの部下であるということは分かっていたので解放もされなかったのだ。
和平の話が出たことでカシタコウは幽閉していた男のことを思い出した。
和平を結ぶなら捕虜となっている男を返してはどうかという話も出たのだ。
王の前に連れてこられた男はすっかりとやつれて別人のようになっていた。
その時、男は1つの質問をした。
カシタコウに捕らえられてから初めて言葉を発した。
王はすぐさま質問の内容について調べさせ、男に結果を伝えた。
男はその答えに涙を流すと全てを話し始めた。
名前も所属も、どうしてカシタコウにいたのかも全て。
「それがコツマという男だ」
コツマが言った。
パノンとミエバシオがした和平交渉は終わっていたのだと。
そしてコツマにはカシタコウに恋人がいた。
パノンはそのことを知っていてコツマに命じた。
『自分は紛争地帯から離れるわけにはいかない。だからこの和平についての書類を王城まで届けてほしい。早く届けることが望ましいが、途中寄り道をしても私には分からないだろうな』
笑いながら書類を渡したパノンは笑っていた。
要するに恋人にでも会ってから届けても良いと気を回してくれたのである。
交渉が終わってすぐに出発したコツマは舞い上がった気分で恋人の元に行った。
そしてその直後にキンミッコがパノンとミエバシオを討ち取った。
部隊が丸々全滅して噂にならないはずもない。
戦いの話に敏感になっているヒダルダの土地の人々の中を噂はあっという間に駆け巡った。
当然カシタコウの男の恋人のところにも噂は届き、コツマの元にも噂はたどり着いた。
しかしその噂を聞いて次の行動を考える間も無くカシタコウの兵士がコツマのところにやってきて男は捕らえられてしまった。
コツマの恋人よりも早くに噂を聞いた恋人の両親が通報したのであった。
もし話が本当なら和平の書類は相手を騙した卑劣な手段の証拠にもなり得る。
そしてこうなると再びトキュネスとカシタコウは敵対することになる。
敵国の兵士と付き合っているなんてバレてしまえば恋人はどうなる。
非常にマズイ立場に追いやられるかもしれない。
正しい選択肢がわからない。
コツマはどうしようもなくてただただ口を閉ざすことにしたのであった。
和平の書類はコツマの恋人に託されていた。
コツマの恋人が昔と変わらぬ気持ちを持っていたのであれば和平の書類はまだどこかにある。
コツマの言葉を受けて王は書類を探させた。
予想通りに書類は隠されていて、見つけ出すことができた。
長年抱いてきた違和感。
和平の書類には最終的な印が押してあった。
どうにも裏切ってミエバシオを討ったという行為には疑問が残っていた。
裏切るなら和平に調印する必要などない。
最後まで話を進めることなんてする必要がないのである。
和平交渉を最後まで進めたのなら裏切るつもりはなかったとそのようにしか見えない。
改めて調べてみるとトキュネス側ではカシタコウ側と異なる認識でいることが分かった。
なのでカシタコウの王は和平が白紙になることも覚悟の上でトキュネスの王にタブーであるヒダルダの地でのことを問いただすことにした。
両者で交わされた情報交換は驚くほどの早さと冷静さを持って行われた。
淡々と話は進んでいき、両国はそれぞれで情報を集めてすり合わせを行った。
両国がそれぞれ情報を元にして1つの結論に至った。
トキュネスとカシタコウの両方を騙して裏切り、全てを手にした者がいると。
そしてさらにそんな状況の中で1人の男が捕まった。
禿げ上がり、歯が何本もない、やたらと下品な笑みを浮かべる男。
通行人を剣で脅して金品を巻き上げようとして捕まったのであった。
よく居る小悪党の1人でその小悪党の男は捕まるとベラベラと喋り出した。
自分が助かるためなら、と頼まれてもいないのにキンミッコの情報を売ると言って。
ちょうど両国が至った結論に沿うような話を小悪党の男がしたのだ。
逃してもらおうとするための作り話にしてはあまりにも出来過ぎていた。