大体襲いかかっている方が悪者であるのだが、決めつけはダメなので離れたところから様子をうかがう。
両方悪人なんてことだってあり得ないことじゃない。
幸いどちら側もリュードたちには気づいていないので割と近くまで近づけた。
もう1人既にやられている。
服装的なまとまりを見るに襲いかかっている方の人のようだ。
「くっ……お前ら目的はなんだ!」
「俺たちの目的は中にいる女だ。分かってるだろ?」
「誰の命令でこんなことをしている!」
「そんなこと言うわけないだろ? 大人しく女を渡せばお前の命までは取らないでおいてやるぞ?」
「ふざけるな! お嬢様は私の命も同然だ! 死んでも貴様らに渡すものか!」
「そうか、じゃあ死ねばいい」
1人倒れているとはいえ状況は周りを囲んでいる方が圧倒的有利だった。
囲んでいる方は倒れている男を除いても8人で、囲まれている方は馬車の出入り口を守るのに1人、その反対側に1人の計2人。
漏れ聞こえた会話から中にあと1人はいるようだが戦えるのは外にいる2人だけなのだろう。
8対2だとかなりの差があって相当手練れでも厳しい戦いである。
だが会話の内容も良いところが聞き取れたのでそれぞれの狙いが分かった。
「さて、どっちの手助けする?」
聞くまでもない質問。
答えはわかっているけど一応聞いてみる。
「襲われてる方」
「馬車の方です」
2人の声が重なる。
言い方は違っても助ける方は同じ。
「だよな」
改めて戦うために状況を確認する。
馬車の前には木が倒れて行く手を阻んでいる。
馬車の両サイドを守るように男たちが1人ずつ剣を構えていて、それを囲むようにドア側に5人、反対側に3人。
リュードたちは馬車から見て後方にいる。
つまりリュードたちから見て左に5人、右に3人となる。
まず倒すならリーダーからがいいのでリーダーを狙いたい。
おそらく馬車の男と話していたのがリーダーだろうと目星をつける。
これが後方から命令ばかり下すリーダーだったら後ろから回り込んでサクッと倒すのだけど前に出るタイプのリーダーで部下の4人の前に立って剣を突きつけている。
4人を掻い潜ってリーダーを先に討つのは現実的でない。
「ルフォンとエミナで右側の3人をやるんだ。俺は先に左の方に加勢するから倒したらこっち来てくれ」
「分かった」
「分かりました」
「俺とルフォンで左右に分かれて接近、エミナの魔法を合図に攻撃を始めるぞ」
リュードは5人の側に、ルフォンとエミナは3人側に分かれて回り込む。
幸か不幸か道は森の中なので静かに動けば敵に気づかれることはなかった。
相手もこうして森に隠れて馬車を襲撃したのだろうが、そこからさらに襲撃してくる者がいるとは思わず警戒していない。
リュードが男たちにすぐ襲い掛かれるような配置についたのでエミナに合図を送る。
ルフォンからも合図を受け取り、エミナが魔法発動のために集中を高める。
「ファイヤーランス!」
エミナが魔法を発動する。
炎の槍がエミナの上に発生して敵に向かって真っ直ぐに飛んでいく。
「な、なんだ!」
視界の端で馬車の向こうに赤いものが見えた男たち慌てるがもう遅い。
馬車の向こうでは炎の槍の1本が3人のうちの1人の背中に刺さる。
狙い澄ました炎の槍は背中から胸を貫き、男は声も上げることができずに息絶えた。
同時に背後からルフォンが飛び出してきて男の首にナイフを突き立てる。
正確に、無慈悲に、急所を狙ったナイフは深々と狙い通りに刺さった。
残りの1人も混乱から脱していない。
イケると判断したルフォンはナイフを引き抜いてそのまま残りの1人に向かう。
状況を把握してきれていないが敵襲に違いない。
なんとか体を反応させた男はルフォンのナイフを剣で防いだがやはり動きは固かった。
ルフォンの2本目のナイフがすぐさま襲いかかり、反応しきれずに腕を深く切り付けられる。
「あとは頼んだよ」
馬車の反対側を守っていたのは若い青年でリュードたちとそう変わらない年頃に見えた。
利き腕を傷つけられたら満足に戦えない。
若そうだけど怪我した相手なら大丈夫だろうとルフォンはトドメを刺すことなく馬車の上に飛び乗った。
「なんだテメェ!」
エミナの魔法が放たれたと同時にリュードも飛び出していた。
1番手前にいた男を切り付ける。
手加減も躊躇いもなく切り捨てる。
迷えばそれだけ危険度が増す。
自分が傷つくだけでなく周りの大切な人が迷ったせいで傷つけられるかもしれない。
ウォーケックが日頃からリュードに言っていた言葉。
命の取り合いで一瞬の迷いは最もいけないことだとよく言われていた。
だから倒すと決めたら剣を最後まで振り切る。
大きくもう1歩前に出てもう1人切り上げる。
馬車の向こうの状況はリュードには見えないが、こちら5対1の状況からリュードの参戦で3対2になった。
数的不利が大きく圧縮された。
向こうもルフォンとエミナが入れば3対3のイーブンになる。
奇襲は成功しているし、よほどの手練れでもいない限り負けはないとリュードは思った。
「俺はシューナリュードだ、助太刀する!」
簡潔に馬車を守る男に用件を伝える。
驚いた表情をしている男もすぐ状況を飲み込み、リュードにうなずき返した。
「邪魔すんな!」
リーダーの男がリュードに切り掛かる。
流石に部下2人よりも判断が早い。
リュードがリーダーの剣を防ぐが、リーダーは攻撃の手を緩めずリュードに反撃の隙を与えない。
馬車を守る男はリュードの方に加勢すべきか迷った。
しかしまだ目の前には2人敵がいるので動くにも動けない。
動くのが早いのは敵の方だった。
2人も殺してくれた相手なのでリーダーに加勢した方がいいと1人は馬車を守る男を牽制してもう1人がリュードの方に向かおうとした。
「ま、待て!」
いくらなんでも2人相手にするのは厳しいと馬車を守る男が声を出して止めようとしたが敵が止まるわけもない。
「ダメだよ」
馬車を守る男にはまるで空から舞い降りてきたようにも見えた。
馬車から飛び上がったルフォンがリュードのところに向かおうとしていた男に襲いかかった。
ナイフを振るとルフォンの着地と同時に男の首が地面に落ちた。
両方悪人なんてことだってあり得ないことじゃない。
幸いどちら側もリュードたちには気づいていないので割と近くまで近づけた。
もう1人既にやられている。
服装的なまとまりを見るに襲いかかっている方の人のようだ。
「くっ……お前ら目的はなんだ!」
「俺たちの目的は中にいる女だ。分かってるだろ?」
「誰の命令でこんなことをしている!」
「そんなこと言うわけないだろ? 大人しく女を渡せばお前の命までは取らないでおいてやるぞ?」
「ふざけるな! お嬢様は私の命も同然だ! 死んでも貴様らに渡すものか!」
「そうか、じゃあ死ねばいい」
1人倒れているとはいえ状況は周りを囲んでいる方が圧倒的有利だった。
囲んでいる方は倒れている男を除いても8人で、囲まれている方は馬車の出入り口を守るのに1人、その反対側に1人の計2人。
漏れ聞こえた会話から中にあと1人はいるようだが戦えるのは外にいる2人だけなのだろう。
8対2だとかなりの差があって相当手練れでも厳しい戦いである。
だが会話の内容も良いところが聞き取れたのでそれぞれの狙いが分かった。
「さて、どっちの手助けする?」
聞くまでもない質問。
答えはわかっているけど一応聞いてみる。
「襲われてる方」
「馬車の方です」
2人の声が重なる。
言い方は違っても助ける方は同じ。
「だよな」
改めて戦うために状況を確認する。
馬車の前には木が倒れて行く手を阻んでいる。
馬車の両サイドを守るように男たちが1人ずつ剣を構えていて、それを囲むようにドア側に5人、反対側に3人。
リュードたちは馬車から見て後方にいる。
つまりリュードたちから見て左に5人、右に3人となる。
まず倒すならリーダーからがいいのでリーダーを狙いたい。
おそらく馬車の男と話していたのがリーダーだろうと目星をつける。
これが後方から命令ばかり下すリーダーだったら後ろから回り込んでサクッと倒すのだけど前に出るタイプのリーダーで部下の4人の前に立って剣を突きつけている。
4人を掻い潜ってリーダーを先に討つのは現実的でない。
「ルフォンとエミナで右側の3人をやるんだ。俺は先に左の方に加勢するから倒したらこっち来てくれ」
「分かった」
「分かりました」
「俺とルフォンで左右に分かれて接近、エミナの魔法を合図に攻撃を始めるぞ」
リュードは5人の側に、ルフォンとエミナは3人側に分かれて回り込む。
幸か不幸か道は森の中なので静かに動けば敵に気づかれることはなかった。
相手もこうして森に隠れて馬車を襲撃したのだろうが、そこからさらに襲撃してくる者がいるとは思わず警戒していない。
リュードが男たちにすぐ襲い掛かれるような配置についたのでエミナに合図を送る。
ルフォンからも合図を受け取り、エミナが魔法発動のために集中を高める。
「ファイヤーランス!」
エミナが魔法を発動する。
炎の槍がエミナの上に発生して敵に向かって真っ直ぐに飛んでいく。
「な、なんだ!」
視界の端で馬車の向こうに赤いものが見えた男たち慌てるがもう遅い。
馬車の向こうでは炎の槍の1本が3人のうちの1人の背中に刺さる。
狙い澄ました炎の槍は背中から胸を貫き、男は声も上げることができずに息絶えた。
同時に背後からルフォンが飛び出してきて男の首にナイフを突き立てる。
正確に、無慈悲に、急所を狙ったナイフは深々と狙い通りに刺さった。
残りの1人も混乱から脱していない。
イケると判断したルフォンはナイフを引き抜いてそのまま残りの1人に向かう。
状況を把握してきれていないが敵襲に違いない。
なんとか体を反応させた男はルフォンのナイフを剣で防いだがやはり動きは固かった。
ルフォンの2本目のナイフがすぐさま襲いかかり、反応しきれずに腕を深く切り付けられる。
「あとは頼んだよ」
馬車の反対側を守っていたのは若い青年でリュードたちとそう変わらない年頃に見えた。
利き腕を傷つけられたら満足に戦えない。
若そうだけど怪我した相手なら大丈夫だろうとルフォンはトドメを刺すことなく馬車の上に飛び乗った。
「なんだテメェ!」
エミナの魔法が放たれたと同時にリュードも飛び出していた。
1番手前にいた男を切り付ける。
手加減も躊躇いもなく切り捨てる。
迷えばそれだけ危険度が増す。
自分が傷つくだけでなく周りの大切な人が迷ったせいで傷つけられるかもしれない。
ウォーケックが日頃からリュードに言っていた言葉。
命の取り合いで一瞬の迷いは最もいけないことだとよく言われていた。
だから倒すと決めたら剣を最後まで振り切る。
大きくもう1歩前に出てもう1人切り上げる。
馬車の向こうの状況はリュードには見えないが、こちら5対1の状況からリュードの参戦で3対2になった。
数的不利が大きく圧縮された。
向こうもルフォンとエミナが入れば3対3のイーブンになる。
奇襲は成功しているし、よほどの手練れでもいない限り負けはないとリュードは思った。
「俺はシューナリュードだ、助太刀する!」
簡潔に馬車を守る男に用件を伝える。
驚いた表情をしている男もすぐ状況を飲み込み、リュードにうなずき返した。
「邪魔すんな!」
リーダーの男がリュードに切り掛かる。
流石に部下2人よりも判断が早い。
リュードがリーダーの剣を防ぐが、リーダーは攻撃の手を緩めずリュードに反撃の隙を与えない。
馬車を守る男はリュードの方に加勢すべきか迷った。
しかしまだ目の前には2人敵がいるので動くにも動けない。
動くのが早いのは敵の方だった。
2人も殺してくれた相手なのでリーダーに加勢した方がいいと1人は馬車を守る男を牽制してもう1人がリュードの方に向かおうとした。
「ま、待て!」
いくらなんでも2人相手にするのは厳しいと馬車を守る男が声を出して止めようとしたが敵が止まるわけもない。
「ダメだよ」
馬車を守る男にはまるで空から舞い降りてきたようにも見えた。
馬車から飛び上がったルフォンがリュードのところに向かおうとしていた男に襲いかかった。
ナイフを振るとルフォンの着地と同時に男の首が地面に落ちた。