「ごめん…ごめんね…」
何度も何度も呟く。


「知っ…てた…よ…」
はっとした。
「晴!聞こえてるの?晴っ!!!」
人差し指を口もとに当て静かにと息だけで伝える彼女とは確かに目があっていた。
生きていたのだ。
目からは大粒の涙がこぼれる。次から次に止まることを知らない程に。
「よかった、よかったよぉ…」
「泣きすぎだって」
「だって…だってぇ…」
よしよしと頭を撫でる。その手は暖かくその温もりも涙腺を刺激してくる。
「ごめんねぇ…う、嘘ついてて、ごめんねぇ…」
彼女はきょとんとした表情を浮かべると
「嘘ついてないよ」
まっすぐ僕の目を見て言う。
「だって、私は今君と話せてるよ。だからね、君はきっといい死神なんだ。
あっ!でもそれだと死神失格かぁ…」
天使のように微笑む君。
「いいよ…
死神失格でもいい僕はこれからも晴といたい。もう、自分に嘘吐きたくないから。」
「とつぜんだねぇ」
驚きつつも少し恥ずかしそうな彼女。
「ダメ?」
「いいに決まってんじゃん!!」
彼女はちょいちょいっと手で自分を呼び寄せるような動きをした後
「ふぁっ…!?」
天使の羽で包まれているような安心感と暖かさに包まれる。
ふと見えた空は朝日が輝く。
朝は嫌いなはずだった。
何もない時間も嫌いなはずだった。

でも今は違う。
晴と過ごせる何気ない日の特別さを強く感じた。
「ねー」
と篭った声。
「ん?なぁに?」
「この前、晴は何気ない日が好きって言ってたじゃん」
「んーそんなこと言ったっけ?」
「言ったよ!まぁ、覚えてないならいいけど、今、確かにそうだなって思った。」
「そーぉー?嬉しいなぁ!それなら、私も思ったことがある。私夜が好きじゃなかったの怖いし寂しくなったりなーんにもいいことないなって思ってたんだ。実は。」
「そーだったの?知らなかった」
「でしょ?分かんないようにしてたもん。でも、君が、(名前)が何時も来てくれてて夜が楽しみになった。たぶんそれが日常に溶け込んでいったのかな?って思う。だから、私も好きだよ!」
「えっ!」
「毎日がっ!」
「なーんだ。そっちかぁ…」
「嘘っ!、どっちも好きっ!」

永遠のこの身をかけてでもこの小さな天使との日常を守りたい。強く思った。
ふとポケットをさわると入っていたはずの瓶が消えてしまっていた。それが何を意味するか今の僕には理解が難しかったが、よい方向に向かっていると信じたい。


窓辺に置かれた虹色の靴が光を含んで輝きを増す。
僕らの未来を写し出すように。
だって、虹色の未来が僕らを待っているはずだから。