目が覚めた。時計は2時を指す。
まだいつもの時間には早い。
「そういえばお勧めの本教えてくれてたな…町に買いにいくか暇だし」
食べ物は木から少々拝借し娯楽は町を見ているだけで楽しめる。何より何度か町に出たことがある彼だが、毎度
「帰れ!この人殺し!」
「人の心がないのか!」
と暴言を浴びせられる。それが嫌で町には行かなくなっていた。
きっと見た目が怖いんだと思う彼は、黒の深いフードのついたローブをふわりとはおり、町に出る。

太陽が照りつけるせいか暑くてたまらない。何より眩しい。人が多い。どこかで「人がゴミのようだ」なんて言葉を聞いたことがあったが実際にそうだなとしみじみ思う。
だから昼は嫌いなんだ。
でも、回りをキョロキョロと見回してみるとアイス屋、パン屋、帽子屋…見ているだけでとても楽しいきもちになる。
本屋はもうすぐそこ…というところで一つの店に目がとまった。
ガラスケースの前に置かれる虹色の靴。どんな宝石より他の靴より輝いて見える。
「彼女にとても似合いそう。」
そう思った。


手元にはファンシーな紙袋を持っていた。
「…」
「明日プレゼントしよう」
そう思い本屋に向かう。
本屋に行ったのも勿論久しぶりだったでも、なぜか懐かしい。本の表紙をみればみるほど彼女の嬉しそうに話す顔が思い浮かぶ。
「これはね、この天使の女の子がねぇ……」
気づいてしまった。
彼女は天使が好きなのだと。
堕天したそれに近い僕と相反するものであることは僕でも分かる。それと同時にこの気持ちが実らせてはいけないものから実るはずのないものへと変わった。
「帰ろ…」
帰りの道は輝いていたはずの景色はまたモノクロの暗い暗い世界に変わってしまった。