「柚燈…っ!ねぇ…、柚燈なんでしょ……っ?」
逃がすものか。
これだけ忘れられず、待ち続けた彼を見つけたんだから。
やっとやっと。
私は逃げた柚燈を捕まえた。
「……ねぇ、柚燈なんでしょう?……何で、逃げるの?」
私は柚燈の腕を後ろから掴んで、はっきり問いかけた。
同時に、2つの違和感を感じて、再び鼓動が速くなる。
……どうして…、さっき柚燈は私を"声"で判断した……?
普通に、私の姿を見れば分かるはずだ。
本当に私なんて、存在忘れていたなら別だけれど。
それでも大人が数年で見た目が変わるはずない。
そして……、
決定的な違和感と確信。
私がさっき胸が焦ったようになったのは、このせいなんだろう。
「………、ね、ぇ……柚燈……。」
震える声でなんとか言葉を紡ぐ。
「……。」
腕を掴まれた柚燈はピタリ止まって、一言も口を開かない。
「……、その杖…。柚燈は……、目が……見えない、の……?」


