「ほら、こっちだよ。」

「…!!……ねぇ…、光杞。ここって……、」

あれから電車を2、3回乗り継いで連れてこられた自然に囲まれたこの場所。


見えるのは、

洋風のお城の造りに近い建物。
金属製の黒い扉のようなゲート。
その先に広がる、数々の色鮮やかな花。


……ここは、

「そう。ラビッツ・バーチャルパークだよ。」


そう、優しく撫でるような声に、今までの思い出が溢れてくる。


柚燈と初めてデートしたとき。
柚燈の写真を撮るのを手伝ったとき。
……柚燈がいなくなる前最後に出かけたのもここだった気がする。

そんな柚燈だけとの思い出が溢れている場所。


……柚燈がいなくなってからこんな場所に来たことも、存在したことも忘れていた。



「……っ、はぁ…懐かしいなぁ……、」

感嘆のため息が出た。



「…。早く中入ろっか!」

「うん。」

思い出に溢れて、温かい気持ちで中にはいった。

……何も疑わずに。