「相手から望まれてるって、相手から好かれてるってことじゃん? それに嫌悪感とかなかった?」

「はい、少しも。驚きはしましたけど……」

心護が望んでくれたがために婚約だと知って、安心したのが本音だった。

「じゃあ……直球で訊くよ? 琴理ちゃんは、許嫁さんのこと好きなの?」

「すき、ですか……」

それは好意があるのかという意味だと、さすがの琴理も理解した。

そして考えて……

「あ、わかった。もう悩まなくていいよ」

平坦な顔をした仁香の方から考えることを止められてしまった。

「え、わたし何も答えてませんけど……」

「いやいや、その顔見ればわかるよ。そんな可愛い顔で許嫁さんのこと考えちゃうとかさ」

「可愛いのはわたしの妹です」

「シスコン発揮するとこじゃないから、ここ。でも琴理ちゃんの許嫁排除してなくてよかったわー」

「みんな、わたしの婚約話つぶそうとしてたことありましたね」

ふふ、と琴理は笑う。

「当たり前よ。つぶす話に琴理ちゃんが乗り気じゃなかったからみんな手を引いたけど、いつでもぶっ潰す気まんまんだったからね」

心護との婚約をつぶす話を琴理が止めたのは、宮旭日と花園の関係性を考えれば、花薗にとって悪い方向にしかいかないと思ったからだ。

家も背負っているのが、この学校に通う生徒たちだった。

「みんな、頼もしいです。みんなと友達になれてよかったです」

琴理が、花が咲いたみたいな笑顔を見せると、仁香は横からぎゅうと抱き着いてきた。