大切な彼氏が出来たら学校の友人同士で遊ぶと言ってこっそりデートに送り出したり、嫌な見合いを断る手段を一緒に考えて実行したり、友人というよりは同志という関係性だった。

仁香たちが、琴理の醜聞になりかねないことの火消を買って出るのは、琴理もまた友人たちのために動いた過去があるから。

家に縛られることは否定しようがない。

将来も、夢も、家に押しつぶされそうになることも。

それでも近い立場の友人がいて、助けてくれて、手を差し出すことが出来る。

入学したのがこの学園でよかった、とは琴理も友人たちも思うことだった。

「琴理ちゃん、許嫁様とはどう? 息抜きとかしたかったら、私たちと遊ぶってことにして休んでね?」

琴理が許嫁との仲が思わしくないことは話の端々からわかってしまっているので、心配した仁香にそう言われた。

「悪くはなってないので大丈夫ですよ。むしろ……」

「むしろ?」

仁香が興味津々と訊いてきた。

琴理は少し恥ずかしく思いながらも、これ以上仁香たちに誤解させているのも申し訳ないと話した。

「……わたしとの婚約は、相手が望まれたことだったとつい最近知りました……」

「え。でも琴理ちゃん、顔も合わせてくれないって……あ。あれか。許嫁さん、恋愛は小学生か」

一人で解決してズバッと言った仁香に、琴理は苦笑を返す。

「とりあえず、嫌われていないようで安心しました」

ぽろっとこぼれた琴理の本音に、仁香は驚いた顔になった。

「安心? したの?」

「? はい」

なぜか確認してきた仁香に、何かおかしなことを言っただろうかと琴理が首を傾げると、ずいっと顔を寄せてきた。