「順番に出していこう。まず、琴理の妹君の呪いの毒を解除する方法を探すこと」

「……心護様、協力していただけると聞いたときは嬉しがってしまいましたが――」

正直言って、琴理も問題がたくさんあることは承知している。

だから、自分の問題は少しでも避けておいて、ひとりで解決していきたいと考えていたところだった。

そう言おうとすると、心護が眉根にしわを寄せた。

不快感を表すそれに、琴理は一瞬口をつぐむ。

そして琴理より先に心護が口を開いた。

「琴理の妹君は、将来的には俺の妹になるんだ。他人事には出来ないから、俺も関わるつもりでいる。……迷惑か?」

(……その言い方はずるくないですか?)

心護が迷惑だなんてありえない。

自分が心護に嫌われているようだから、必要以上に迷惑をかけないようにしようと心がけていたけれど、心護が手を貸してくれると言ってくれたときは心底嬉しかった。

迷惑なのは、心護にとっての自分のはずなのに。

「迷惑だなんてとんでもありません。ですが……」

――自分が呼びこんだ災厄が多すぎる。

琴理はそう、自覚していた。

「……わたしばかりがご迷惑をおかけしております……」

愛理のことで、琴理が取ってはいけない選択をしてしまったから、クマという問題が増えてしまった。

琴理の食事をする手も止まると、心護も箸を置いた。

「琴理。俺の考えだけど、迷惑をかけないで生きている人間がいると思うか? 俺は思わない」

「………」

ふっと、琴理の顔があがって心護を見る。真っすぐ、真剣な瞳。

「迷惑かけて、かけられて、人間の付き合いってあると思うんだ。そうやって成長していくと言うか……誰にも迷惑をかけたくないって、独りで生きていくって言ってるようなものだと思う。でも、実際問題関わらずに生きていくことは不可能だろう? 生活に必要な、買い物やライフライン、すべて自分ひとりで賄(まかな)うなんて、ほかの島と全く繋がりのない無人島にでも行くしかない。俺たちは、ここで生きているんだ。顔も知らない誰かのおかげで、顔も知らない誰かの世話になって。そして、顔も知らない誰かの力に、きっと俺たちもなっている」