可愛くて、可憐で、優しい。
(……ああ! だめです、愛理が恋しくなってきました……推しに会いたい……)
「……り、琴理、どうした? 頭痛いのか?」
琴理が物思いのあまり頭を抱えていると、心護が心配そうに顔をのぞきこんできた。
「はっ、も、申し訳ありません……」
「いや、俺が軽く言ってしまったが、今日のショックは大きいだろう……部屋に戻って休んだ方がいい」
「………」
(気遣ってくださる心護様には申し訳ありませんが……)
今日のこと、ショックなことはショックだったが、愛理のことを考えるとどうしても会いたくなってしまうので、出来るだけ考えないようにしていた反動がきただけだ。愛理(推し)不足なだけだった。
「あの、琴理様大丈夫……じゃないですよね? あんなに頭を抱えていらして……」
「ええとあれは……う~ん……」
年の功と聞いている情報でなんとなく察しがついている詩は、涙子の声に言葉を濁した。
まさか琴理が妹激ラブだとは簡単に言えない。
「琴理様、そろそろお部屋へ戻りましょう」
愛想笑いを繕って、そう言うのが今の詩の精一杯だった。
「あ……はい……」
心護が琴理の苦悩をどこまで理解しているかはわからなかったけれど、心護にとって琴理が愛してやまない存在なんて地雷過ぎる。
琴理を促し、心配する心護に「くれぐれも頼む」と言われて、詩と涙子は琴理を伴って心護の部屋を出た。
「……琴理様、本気の体調不良などはございませんか?」
琴理の部屋に戻って、琴理をソファに座らせる。
「はい……取り乱して申し訳ありません……」
顔色の悪い琴理に、詩は意を決して尋ねた。
「大丈夫ですよ。その……花園様のお邸に帰りたいとお思いですか?」