「申し訳ございません。以後、気を付けます」
「うん、出来たらそういうのも……まあいいか。とりあえず、これは二人で考えていこう。と言っても、俺たちの心配をしてくれる人は身近にいるから、頼らせてもらいながら」
「はい……っ」
心護と琴理が控えていた涙子と詩を見ると、詩は軽くうなずき、涙子は胸の高さで、両手でこぶしを握った。
頼れる人たちがいるというのは心強いと改めて感じる。
「父と母への報告は、ことが終わってからがいいと思う。いずれは俺たちだけで解決していかなければいけなくなるから」
「わたしもそう思います」
琴理が頭を上下させると、心護も「うん」とうなずく。
「あとは公一さんと詩さんがどこまで話すことを認めるかだな……」
「お二人から本邸へ……ということでしょうか?」
「そう。二人は俺についてくれているけど、本邸とこの離れを繋ぐ役目もあるんだ。隠し通すか、部分的に話すか……」
その言葉に、詩が静かな声をはさんできた。
「心護様と琴理様のご判断の通りに致します」
「――と、詩さんは言うし、その通りにするから、慎重に考えないといけないところだ」
「はい……」
(詩さんと公一さんに、どこまで話していいと言うか……本邸との連絡役として動いていても、完全に心護様側、ということですね……)
ここまで信頼を得ている心護をすごいと思うとともに、少しだけ恐ろしくなった。
息子が、現当主を跳ねのけた信頼を得ているとこいうことに。
そして、自分もここまでにならないといけないか……と。
(心護様はお優しいから、そんなことは口になさらないでしょう……。もっと、頑張らないと)
頑張って――心護に追いつかないと。
心護に相応しいと思われたい、なんて大層なことは言わないが、せめてあの婚約は失敗だった、と言われないようにしなければ。
(わたしは既に愛理より評価が低い……うん、自覚してます)
愛理に勝ちたいわけではないけれど、愛理に迷惑をかける事態にするわけにもいかない。
(……愛理)
脳裏に浮かぶ、愛らしい妹の姿。