――結局、離れの執事である東二が得てきた情報も収穫はなかった。
花薗邸への半年前の届け物同様、住所も名前もでたらめ。
戻るのが遅いと思っていた東二は荷物が出された場所まで捜索していて、しかしその甲斐むなしく差出人の情報はひとつも得られなかった。
出来過ぎているほどに。
「……これが琴理宛に……」
仕事から戻った心護の部屋にやってきた琴理と涙子から話を聞いていた心護は、詩が撮影した動画を見て、そうつぶやく。
「俺が見ていたら……っ」
顔に昏い影を落としてビデオカメラを壊さんばかりに握りしめて言うので、隣に座る琴理は慌てて心護の手からカメラを取り戻した。
「ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。この件に関しましては――」
「気にするな。……と言いたいところが、無理だよな」
「……え?」
「悪質だが、うちではよくあることだ」
「よくある……ですか」
珍しいとは思わないけれど、よくある、という段階までは考えていなかった琴理だ。
やはり宮旭日家は別格だ。
「母も、父との婚約段階から嫌がらせはされていたらしい。今では嫌がらせの品を、浄化の焔(ほのお)で燃やすようにしているそうだ」
「つ、強いですね……」
「琴理に母と同じようになってもらいたいわけじゃない。真似しろってことじゃないからな?」
「は、はい……」
やや強めに言われて、琴理は慌ててうなずいた。
心護はソファに座りなおす。
「東二さんも情報を得られなかったってことは、格としてはかなり上位……あやかしの類というよりは人間だろうな……」
心護が、聞いた情報を整理するようにつぶやいていた。
琴理も、考えていたことを頭の中で整理する。
「わたし個人への恨みという可能性も……」
琴理がぽつりと言うと、心護の目が琴理に向いた。