「はい」
琴理の言葉に、うなずきが返ってくる。
琴理は詩、涙子、主彦の顔を順番に見た。
「皆さんも、心護様に隠す必要はありません。訊かれたことには、見たものを正直に答えてください」
「はい」
「ご当主夫妻様へのご報告は、心護様の考えも聞いてから決めます。お二人のお考えになることは、わたしより心護様の方が深くご存知のはず。ですが今現在のわたしの考えとしては、解決してからご報告申しあげた方がよいと考えています」
「はい」
反論がなかったことに、琴理は気づかれないように安堵した。少しだけ肩が軽くなった気がする。
「……以上です。皆さんから、何かありますか?」
「肝心なことをお忘れです、琴理様」
主彦が挙手とともに言った。
反論ではなかったが、見落としがあった?
「え?」
だが琴理はすぐに思いつかず、瞬きを返す。
「琴理様の護衛をどうするか、です」
「………え?」
重ねて言われても、琴理にはすぐに考えが至らなかった。
主彦は難しい顔になって続ける。
「消えた箱から考えて、琴理様に害をなそうとしている者がいることは、捨て置けない可能性です。今までは花園様の護衛がありましたが、これからは宮旭日から護衛をつけるのが筋になります。それについて、どのくらいの人数を、どのくらいの距離・立場からつけるか……重要なことです」
そこまで聞いて、琴理は理解した。
そうですね、と答える。
「でも、花園の護衛といっても、年齢の近い方が学内にいるくらいでしたし――」
「それが、宮旭日には出来ないのです」
遮った主彦の声は固いものだった。
詩と涙子の空気も重く感じる。