「クマ……わたしの味方をしてくれるのですか?」

琴理が眉根を寄せて問えば、クマは吐き捨てる。

「はっ。それはねーな。娘が呪いにかかると俺にもかかっちまうから、不用意に呪いなんぞ受けんなよって言いに来ただけだ」

「それにしては先ほど……淋里様と話しているとき、黙っていてくれましたよね?」

「クマ実は優しい説ですか!?」

琴理の言葉に、涙子はびっくり声を出した。

クマが優しいかどうかはわからないが、今のところ琴理を害そうとはしてこないことが不思議ではあった。

「そうそう、おれ、優しいの。実はね?」

にこにこと、白々しい笑い方をするクマ。

しかし人間たちが反応する前に、その表情は醜悪なものに一変する。

「妄想もいいとこだ。愚物め。悪魔に優しさを要求すると、色んなモンが倍返しになるぜ、使用人」

けけけ、と笑ってクマは影に沈んでいった。

……妙な空気になってしまった。

琴理は額に手を当てる。

「……わたし、未だにクマの性格がつかめません……」

「つかむべきではありません、琴理様。我々が祓魔(ふつま)の性分(しょうぶん)であるないに関わらず、線引きは必要です」

詩の声はいつになく固かったが、それからこくりとうなずいた。

「ですが琴理様、録画していたのはよい判断でした。すべてではありませんが、画面に収められています」

「そうですよ琴理様! よくお思い付きになられましたね!」

重い空気を払拭するように、涙子が言った。

だが琴理はちょっと困った顔になる。

「ありがとうございます。……実は以前にもこういうことがありまして……あのとき、撮っておけばよかったなって思っていたことなんです」

「それは、具体的に訊いてもよろしいことですか?」

涙子の言葉に、琴理は眉を下げた。

「はい……わたししか見ていないので、確実にありました、という証拠はないのですが……、半年ほど前に、花園の家に宅配便がありまして、その荷物が、わたしが目を離した隙に消えてしまったのです」