――琴理より先に離れに戻ったらしい詩に呼ばれて応接間に入ると、そこには東二も主彦もいた。

怖いくらいピリピリした雰囲気が漂っている。

「琴理様、衝撃的なものであることをお覚悟の上、ご覧ください」

「? はい」

そして主彦が開いた段ボールから出てきたのは――琴理の写真だった。すべて盗撮の。

「え……なんですかこれ……怖……」

500ミリペットボトルの箱くらいの大きさの中に、ぎっしりと詰まっていたそれ。

琴理から取り繕わない、素直な感想が出てしまうくらい衝撃だった。

(さすがにこれは想定していませんでした……)

さーっと血の気が引くのを感じた。

「受け取ったのは私です。一般的な宅配業者からで、詩さんがいなかったので中を確認するために、涙子を呼び戻しました」

堅い声で言うのは、離れの執事である鳴上東二だ。

それに主彦が続く。

「涙子が玄関で開けたとき僕もそばにいましたが、そのまま箱をこの部屋に運んで中身には一切触れていません。今まで、涙子が再び出てから僕が部屋についていましたが、入れ替わりで入った者はいなく、みな集まってそのまま今に至ります。……琴理様をご不安にしてしまうだけだと、心護様に判断を仰いでおりました……」

――その結果が今なら、心護は琴理に伝えていいと判断したのだろう。

涙子が、琴理を淋里から助けてくれたあとも少し歩いたのは、その時間稼ぎだったようだ。

(涙子さんのあの笑顔の裏で、こんなことを抱えさせていたのは申し訳ないです……)

隙間なく綺麗に箱詰めされた写真。

一番上にある数枚は、学校に通う制服姿の琴理の横顔や、小学校低学年くらいの幼い写真もある。

正直言って、今琴理にあるのは恐怖だけだ。

ストーカー、嫌がらせ、脅迫……怖い言葉ばかりが頭をめぐる。

(――ですがわたしは、心護様の許嫁です。その立場で動きなさい、わたし)

己を叱咤して、無理矢理思考を切り換え後ろに控える使用人たちを振り返った。