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「心護様、本日のお仕事は終わりですが……なんぞお悩みでも?」

「……いや」

高校二年生にして退鬼師である宮旭日心護は、都内にある宮旭日の屋敷の自室にいた。

黙り込んでいたのを家人が不審に思って尋ねると、心護からは心ここにあらずな様子で返事があった。

「……次、花園の令嬢と逢うのはいつだ?」

「琴理様ですね? ……しばらくありませんね。あちらも忙しくしているのでしょう。お話になりたいことなどありましたら、こちらから調整しますが?」

「……………いや、いい」

「そうですか? まあ、お二人ともお若いですから、今は自分の時間を十分に持つのも大事だと思いますよ」
 
そう言って、家人は心護の部屋を出た。

残された心護は、机に頬杖をついて――不満げな顔で、窓から見える月を睨んでいた。