額を押さえて苦笑する琴理。
その通りだ。もし心護に想う人がいるなら、こんな婚約は解消するべきかもしれない。
何の力も権限もない琴理からは難しいが、心護側から破棄したいと言われれば、格下の花園家は応じるしかないだろう。
(……今までわたしがやってきたことは無意味になってしまうけど、嫌いな人と結婚させられるよりは、宮旭日様もいいでしょう……)
今度逢うことがあったら、それとなく訊いてみようか。
「姉様……わたくし、姉様には好きな方と幸せになってほしいです……」
愛理がぽつりとこぼした言葉に、琴理は驚いた。だが、そんな気持ちは面に出してはいけない。
「ありがとう愛理。愛理はわたしの自慢の妹です」
「姉様はわたくしの自慢の姉ですわ」
二人が微笑み合うこの時間も――あと少しということを、琴理は知っていた。