心護が文句をつけると、公一と詩が怖いほどの視線を寄越してきた。

「やっっっっっと琴理様をお迎え出来たというのに、なんたるザマですか!」

「琴理様をこれ以上思い悩ます存在など滅しましょう!」

「だから……」

心護がため息をつき、ふたりのヒートアップについていけない琴理はただ目をぱちぱちさせている。

琴理が心護にとって大きな存在であるらしいことはわかってきたが、本当に何故ここまで味方になってくれるのだろう。

そのときふと、心護が琴理に向かって口を開いた。

「琴理、この悪魔の名前を聞いたか?」

「? いえ……」

「では名前をつけよう。琴理が決めたものがいい」

「え、わたしが……?」

「ちょ、ちょっと待て跡取り――」

悪魔が少し焦ったように口を挟んできたが、言い終わる前に琴理が言った。

「じゃあ……悪魔なので……クマ?」

「「「「…………」」」」

琴理が少しだけ悩んで出した答えに、心護たち三人と小鳥姿の悪魔まで黙ってしまった。

あまり時間をかけて悩むのも……と思って安易な回答をしたが、いい評価ではない雰囲気だ。

やはり、というように悪魔が吠えた。

「ど……どこを見たらおれがクマになるんじゃあああああ! おれは野生の熊より強―わ!」

「よし、完了」

「! しまったあああ!」

悪魔――クマが叫ぶと、心護はよしっとこぶしを握った。

どういうことだろう、と思った琴理だが、今までに習ってきたことを思い出して「あ」と声をあげた。

「そういうことですか」

「そういうことだ。琴理がこいつに名前をつけて、こいつがその名前を口にしたことで、琴理によって召喚された『こいつ』の名前はそれになった。完全な契約をしていない状況では、こいつは召喚された側、琴理は『召喚主』になる。契約が完全なものになっていたら危なかったが、こいつの様子を見ると違うようだ。だから名前によってこいつは琴理に縛られることになったわけだ。主従関係とは違うが、琴理が一方的に危ない目に遭うことはないよ」